ビジネスも心理学がカギ!セブンイレブンから学ぶ3つの数学的経営思考
「顧客目線」というキーワードを最近よく耳にします。お客様の立場になって考える、それはたしかにそうです。今の時代、売り手市場ではなく買い手市場、ぼくもすごく意識しています。
でも漠然と考えても、独りよがりになりがちです。またお客様の悩みをひたすら書き出してみても、どれが重要なのかわからなくなってしまうこともあります。だからシンプルな思考法ってないかな~って模索していました。
そこで読んだこの本「鈴木敏文の統計心理学〈新装版〉―データサイエンティストを超える仕事術」は、顧客目線のヒントになりそうです。鈴木会長の本は他にも読んだことがありますが、本当にすごい人だな~と感じています。考え方が理系的なのでとてもしっくりきます。
1.分母と分子で考える
分数ってすごく便利な表現方法です。半分のことを1/2って表すこと、誰が考えたのでしょうか。そんな便利な分数を、顧客目線の考え方に応用した鈴木会長の思考がとてもわかりやすいです。
分母、分子の操り方はデータの読み方だけに限らない。鈴木氏はことあるたびに、売り手の立場でなく、買い手の目線で考えろと言い続けている。これも、分母に「売り手」や「売り手市場」を置くのではなく、「買い手」や「買い手市場」を置いて考える発想法といえば、よりわかりやすい。(p121)
例えば、前に出てきた正月用の黒豆の例だ。量をまとめ売りする「パック詰め」は、分母が「売り手」だと「お買い得」の意味合いになるが、「買い手」が分母になると「押しつけ」になる。逆に「量り売り」は分母が「売り手」だと「手間がかかりコスト増」になるが、「買い手」が分母だと「うれしい買い方」となる。(p121)
あるいは、「完売」の意味合い。仮に30個仕入れた商品が一日で「完売」したとして、分母が「売り手」だと、売れ残りが出ずに「儲かった」になるが、「買い手」が分母だと、「ほしい商品が品切れの店」になる。(p121)
分数の分母と分子に言葉を入れる発想そのものが驚異的です。「売り切れ」の概念なんかすごくわかりやすいです。売り切れ後にきたお客様は、その商品が販売されていたことすら知らずにいるかもしれないわけです。それは大きな機会損失になりかねません。
また新しいことを常に考える鈴木会長の思考法として、分数が活かされていました。
「商品の鮮度管理が重要という点では、食品も衣料品もまったく同じです。このことを私は言い続けているのですが、多くの人が食品と衣料品は違うという既成概念に縛られていてなかなか理解されません。食品が毎日新しい商品を売り場に入れて鮮度を保っているように、衣料品も新しい商品を入れ続けなければ、お客様に飽きられてしまいます」
「鮮度」というと、われわれは分母に「食品」ぐらいしか考えていないが、鈴木氏は自由に発想し、あらゆる商品カテゴリーを分母に置いて考え、「鮮度」という答えが出るためには、どのような分子が必要なのかを追い求める。「情報」「コンビニの店舗経営」・・・といったものも分母に置いて考える。
頭の中に、「Y(分子)/X(分母)=鮮度」という思考の方程式を設定し、X(分母)を自由自在に変えていく。これは、氏が最も嫌う「陳腐」「マンネリ」を避けるための、日々革新の方程式でもある。(p124)
「Y(分子)/X(分母)=鮮度」、この方程式を弁理士の業務にあてはめると、こんな感じになります。
・分子:申請代行/分母:弁理士=陳腐
・分子:日記ブログ/分母:弁理士=やや陳腐
・分子:提案・ソリューション/分母:弁理士=やや新鮮
・分子:役立つブログマーケティング/分母:弁理士=新鮮
新しいことって、コンビニだろうが資格業だろうが変わらないはずです。不変的なものであっても、表現の仕方やお客様へのアプローチを変えれば、「新鮮」になります。これはピポッド戦略に似ています。
2.数字でウリを明確にする
強みやウリ、これもあいまいな言葉です。わかりやすく表現したいなら、数字をうまく入れ込むべきでしょう。
これに対して、私はまったく違った異なる顧客の心理を読んでいました。顧客は不景気だからお金を使わないのではなく、不景気だからこそお金を有効に使いたい。だから、デフレの時代であっても、顧客は単に価格が安いという理由だけで商品を選ぶのではなく、常に新しいものに価値を見いだそうとします。100円から140円まで10円刻みの五段階の値段がついていた価格設定とは違った“新しい仕かけ”に価値を見いだしたからでした。(p132)
価格の差別化とは、安くすることだけじゃありません。商品点数とその価格帯が、セブンイレブンのおにぎり商戦の強みでした。たしかにオムライスやドライカレーは、定番のおかかやさけに飽きたとき、新鮮な驚きを提供してくれました。
3.絶対価値がものさし
ライバルの活動や成績、気になるところです。しかしそれを調べても一喜一憂しただけ、という経験がありませんか。精神安定剤としてライバルの現状を把握するのはいいですが、自社の経営に役立つことありません。
ここで経営学的な議論に触れたのは、データを読むとき、相対価値を意識するか、絶対価値を目指すかによって、読み方が違ってくると考えられるからだ。例えば、競争に終始する会社は、自社の業績が下がったとき、競合他社の業績を見て同じように下がっていれば景気のせいだと考える。競合の業績が上がっていれば、競合との比較で敗因を分析し、その手法をまねて挽回しようとする。一方、絶対的なものを目指す会社は、自社の業績が下がったのは顧客の心理に応えられず、共感共鳴を得られなかったかrで、それはなぜなのかと問題を掘り下げ、もう一度、自分たちの仕事のあり方を問い直す。(p137)
競合他社をベンチマークするのは大切です。扱っている商品の数や特徴、実績、特許や商標の数など、自社が力を入れるべきポイントの参考になるでしょう。しかし分析した数値をそのまま真似たところで、なんの解決にもなりませんし、むしろレッドオーシャンに突っ込むだけです。「絶対価値」という規準を持つことは、ブルーオーシャンに向かうチャンスではないでしょうか。
≪まとめ≫
昔は、コンビニは高い!というイメージが強かったのに、今ではコンビニは便利!というイメージに代わってきました。ユーザーの思考を変えるのはビジネスでもっとも大切で、もっとも難しいことです。新しいモノやサービスを追及し、伝え続けたからこそ今のコンビニ業界があり、セブンイレブンがあるのではないでしょうか。心理学と数学的思考は今後の経営課題になりそうです。
鈴木敏文の統計心理学〈新装版〉―データサイエンティストを超える仕事術
2013年12月19日
著者 ゆうすけ
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