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『サムライジャパン』から学ぶ商標登録の効果と影響力

公開日: : 最終更新日:2014/11/15 商標事例研究, 商標戦略

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※引用:NPB『SAMURAI JAPAN』ロゴ

2013年になってから何かとニュースで取り上げられ話題の『サムライジャパン』についてお伝えします。

ここで一つご質問です。『サムライジャパン』といえば?

そうです。“WBC(World Baseball Classic)”っていうかそんな簡単な質問だすまでもないじゃん!という声が聞こえてきそうですが。。。

なぜこんな質問をしたかというと、これがまさに『サムライジャパン』を管理する“NPB(Nippon Professional Baseball:日本プロフェッショナル野球組織)”のネーミング戦略だからです。

もともと“WBC”やオリンピックなど世界大会のときに編成されたチームはそのときの監督名とからませて呼ばれていました(例えば、王ジャパンとか。)

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しかし第2回の“WBC”(2009年開催)の時、抜擢された原監督は、“ジャパン”という野球界の誇りであり憧れのチームだからネーミングを代えてほしいと頼んだところ、“NPB”が『サムライジャパン』を提案したそうです。

このネーミングのおかげで!?『サムライジャパン』は二連覇達成!日本中を感動の渦に巻き込みました☆

が。。。

それ以前に“すったもんだ騒動”があったことをご存知ですか?

実は“NPB”が『サムライジャパン』を発表する以前の2008年3月に、『サムライJAPAN』 という商標を社団法人日本ホッケー協会が商標登録申請していたんです><。

通常であれば、全く同じネーミングは避けたほうがいいと考えています。バッティングして後々にもめると厄介だからです。

現に、その当時日本ホッケー協会の永井東一広報委員長は、「WBC日本代表より前に“さむらい”を 名乗っていた。元祖は私たちなのでパクったのではない」「露出の差を考えれば、こちらがマネしたと思われる」と主張し、“NPB”など関係団体に抗議文を提出しました。

しかし“NPB”側はこの抗議に一切応じないばかりか、当時の加藤コミッショナーは「双方の代表が親しまれ、さらに活躍できるように協力、応援をお願いしたい」とコメントしています。

結局『サムライジャパン』という言葉はナショナルチームを意味する言葉として認知され、2009年の新語・流行語大賞候補となりました。

ん~、なんか理不尽というか。。。

それにしても、日本ホッケー協会が先行商標登録までしていたにも関わらず、なんら問題にならなかったのはなぜでしょうか?

まずは日本ホッケー協会の商標登録の内容を見てみると・・・

『サムライJAPAN』商標登録第5195556号
【出願日】平成20年(2008)3月18日
【出願人】社団法人日本ホッケー協会
【カテゴリー】ホッケーの興行の企画・運営又は開催など(全1カテゴリー)
ここで注目すべきは、“ホッケーの”ということば。

これが意味するのは、“ホッケー”に関するサービスについてしか独占権がないということです。

ちなみにホッケー協会は、『さむらいJAPAN』という平仮名バージョンの登録商標も持っています(商標登録第5195564)。

平仮名かカタカナかに大差はないんですが。。。

一方、NPBの商標登録の内容を見てみると。。。

『SAMURAI\JAPAN』商標登録第5297420号
※サムライと日の丸マークあり
【出願日】平成22年(2010)1月29日
【出願人】一般社団法人日本野球機構
【カテゴリー】せっけん/テレビゲーム/キーホルダー/紙製のぼり/かばん/クッション/なべ/布団/洋服/テープ/すごろく/茶/ビール/日本酒/広告/放送/技芸・スポーツ又は知識の教授(全17カテゴリー)

ん???なんか違いますね(笑)

見ておわかりのとおり、【カテゴリー】がまったく異なります

つまりNPBは、日本ホッケー協会とは異なる“エリア”について登録していたのです。別の言い方をすれば、日本ホッケー協会の“アミ”には引っ掛らなかったということです。

だからNPB側は日本ホッケー協会に抗議されても強気にいられたわけです。

ではこの違いはビジネスにどのように影響するのでしょうか?

※引用:NPB侍ジャパングッズ画像

例えば、日本ホッケー協会の知名度があがると、関連グッズの販売で収益をあげることができます。

なぜならそれらのグッズには日本ホッケー協会の『サムライJAPAN』というロゴや文字がつくからです。そしてみなそのロゴや文字を見て、日本ホッケー協会の商品だと安心して購入します。

一方、NPBは“キーホルダー”とか“紙製のぼり”というカテゴリーについて商標登録しています。つまり野球側でも関連グッズの販売を見越して、そのカテゴリーについておさえていたのです。

NPBは当時4年単位でスポンサーを募り、4年総額40億円を超える収益を見込んでいました。この収益の一部に関連グッズの販売が含まれていたんです。

これにより何がおこるか。。。もうおわかりですよね。

NPBは“関連グッズ”についても『SAMURAI\JAPAN』という商標を独り占めできる権利を持ったため、日本ホッケー協会は『サムライJAPAN』といううロゴや文字をつけた関連グッズを勝手に販売できなくなるのです。

収益をあげるためには、ライバルを寄せ付けないのも戦略の一つです。その戦略の一つが商標登録であり、商標登録はネーミング戦略の一つです。

こうなると、日本ホッケー協会は『サムライJAPAN』というネーミングを先につかい先に登録したにも関わらず、関連グッズを販売するときはNPBの許可をとらなければなりません。

そしてNPBがOKと言わないかぎり販売できず、OKを言わせるためにお金を支払うケースも考えられます。

したがってこれを起業家のビジネスにあてはめると、1~2年くらい先に予定している企画がある場合、その企画に関係するカテゴリーをしていしてネーミングを商標登録しておくことをオススメします^^

ぜひご検討ください☆

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