ピコ太郎さんも驚きの商標トラブル!エイベックス社が巻き込まれた状況を図解
ピコ太郎さんの話題は2017年になってもまだまだ衰えるところを知りません。話題性があるということは、それだけ皆さんに知られているということであり、それはネーミングやキャッチフレーズが一人歩きしているわけですね。
こういうときに注意したいのが、その話題性に便乗してくるパターン。ものまね芸人さんくらいならかわいいところですが、強引に権利を主張して金銭を要求してくるようなパターンには頭が痛いところです。
今回は後者のパターンに巻き込まれたピコ太郎さんなわけですが、いったいどういうことなのか?ネットで公開されていることと特許庁で公開されていることを踏まえて、図解してみました。
早い者勝ち制度を利用した元弁理士の狙いとは?
「(商標には)盗むという概念はないんですよ、原則として。だから私自身は不正な利益は一切求めない。正当な利益を求めていく。(エイベックスには)当社と交渉の上、ライセンス許諾を受けた上、事業展開をするようにと警告書を発送しました」(上田育弘さん)
引用:『「PPAP商標出願」男性を直撃 「ビジネス」と強調』 2017/1/26 毎日放送
ピコ太郎さんがYouTubeに動画を公開したのが2016年8月25日です。その直後に世界中で話題になりました(たらえばですが、この時点で商標出願すべきという判断がなされていればよかったですね)。
そこで、元弁理士の会社(ベストライセンス社)は、その話題性を察知して2016年10月5日に「PPAP」の商標出願を特許庁にしています。商標出願のタイミングとしては、話題の爆発力を考えると、決して早いわけではありません。
一方、ピコ太郎さんと契約しているエイベックス社は、その9日後である10月14日に 「PPAP」の商標出願をしています。今回はこの9日の差が商標トラブルの根本となっています。たった9日、されど9日ですね。
補足しますと、元弁理士が先に「PPAP」を商標出願している事実を、エイベックス社は10月14日に知る術がなかったので仕方がありません。通常、商標出願は1ヶ月くらいしないと特許庁から公開されないからです。
さらに、元弁理士は2016年11月24日に「ペンパイナッポーアッポーペン」の商標出願を行なっています。ここまでエイベックス社は予想できなかったのかもしれませんね。しかも、エイベックス社が「ピコ太郎」を商標出願した日から1ヶ月以上後にです。
ここもポイントの一つですね。元弁理士は、なぜ 「ペンパイナッポーアッポーペン」の商標出願をしたのか?推測ですが、元弁理士はエイベックス社の「ピコ太郎」の商標出願を知り先を越されたこと、エイベックス社が商標獲得に動いたことから、さらに追い討ちをかける狙いがあったと想像しています。または、関連するキーワードを片っ端から商標出願しているんでしょうね。
そこで、元弁理士は「PPAP」「ペンパイナッポーアッポーペン」の商標出願に基づいて、エイベックス社にこれらの使用料を要求すると共に、これに従わなければ 「PPAP」「ペンパイナッポーアッポーペン」の使用は認めないという警告書を送ったと考えられます(他にも出願していたら、ライセンス許諾を要求している商標はもっと多いかもしれません)。
総じて、 「PPAP」と 「ペンパイナッポーアッポーペン」は元弁理士の方がエイベックス社より早く商標出願していますが、早い者勝ちとして商標登録が認められるかどうかは特許庁の審査結果次第であり、エイベックス社としてはこの結果の良し悪しでアクションが変わるため、行方を見守りたいところです。
2017年1月27日 ゆうすけ
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