シフトし続けるスタートアップ起業家に学ぶハードウェア開発と特許・商標ダンドリ戦略
尊敬する先輩が教えてくれた本「できないとは言わない。できると言った後にどうやるかを考える(ダイヤモンド社、著者:㈱SHIFT代表・丹下大)」を読んでいます。まだ読み始めたばかりですが、タイトルに負けない丹下氏の実行力にリスペクトしまくってます。
その中でも丹下氏の代表作である「メッセージが届くと香りが出るスマホ」の商品開発話がとてもおもしろいです。発案の切っ掛け、エンジニアとの出会い、苦労したプロトタイプ開発、展示会出展など、ハードウェアスタートアップの成功ステップとして勉強になります。
そしてぼく的にはやはり特許と商標の戦略に注目しました。どのように丹下氏が特許や商標について考えて行動していたか?そのタイミングは?など整理しました。なおここでご紹介するのは著書以外からの情報もあります。
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会社設立前に商標登録と特許の申請が完了
めちゃくちゃ理想的です。起業家としての実績もあるからなせる業かもしれません。
会社設立(着パフ株式会社(現Scentee株式会社))は2011年8月2日(Scentee株式会社HPより)です。ところが当時の商品名「着パフ」の商標登録申請を同年5月11日、さらにビジネスモデル特許の申請を同年6月30日に行っています(特許庁調べ)。
著書にも書いてありますが、このビジネスを思いついて丹下氏が最初にしたのは、弁理士に類似特許がないかどうか確認したことです。この判断というか、嗅覚が凄すぎです。
このときもし類似特許を発見したとしても、プロトタイプの製作に入る前に、企画の練り直しを行うことができます。つまり先走ってどんどん進めてしまい、その後に類似特許を発見していたら、この類似特許にひっかからないように企画を練り直しか、企画倒れもありえたわけです。
展示会出展後に申請した特許に対し早期審査請求
会社設立(2011年8月2日)の約1年後に、試作品を完成させてWMC2012に出展しています。もちろん既に特許申請していたため、展示会で技術内容をオープンしても問題ありません。
もし特許申請前に展示会で技術内容をオープンしてしまうと、その技術内容は新しくなくなる(新規性を失う)ため、特許になる条件から外れます。だからその後に特許をとろうと思っても原則とれないんです。
さらに同年の12月末に、申請したビジネスモデル特許に対して早期審査請求を行っています。展示会で好感触だったからでしょうか。早く特許にしたかったとよめます。ちなみに早期審査請求をすることで、今では審査結果が約1.9か月で来るくらいスピード化されています。
クラウドファンディングでも特許・商標ネタをアピール
ビジネスモデル特許に対して早期審査請求を行った後(約1か月後)、量産するための資金をクラウドファンディング(キャンプファイヤー)で調達しています。そこでは以下のようにアピールしています。
このプロジェクトが立ち上がったのは、2011年5月。携帯に香りを使ったサービスが出来ると面白いねという1人の女性の声がきっかけでした。
早速、プロジェクトリーダーの丹下が特許を調査。どこにも類似特許が無い。イケる。チャンスだ。そして、着うたが流行ったように、名前は着パフ(※パフは、パフュームの略)と名付けました。
早速、特許申請を行い、着パフの商標登録を済ませました。そこからプロジェクトが始まりました。
直接ではないとしても、特許や商標への取り組みは、信頼性の向上につながるはずです。結果的に、2~3日で目標額に到達してしまいました。
<参考>丹下氏の特許・商標ダンドリ戦略の時系列
2011年5月 弁理士に相談
2011年5月11日 「着パフ」商標登録申請
2011年6月30日 ビジネスモデル特許申請
2011年8月2日 着パフ株式会社(現Scentee株式会社)設立
2011年10月7日 「着パフ」商標登録完了
2012年2月 WMC2012出展
2012年12月28日 ビジネスモデル特許早期審査請求
2013年1月17日~21日 クラウドファンディング
2013年4月26日 ビジネスモデル特許完了
≪まとめ≫
スタートアップの商品開発や営業活動の現場では、特許や商標なんていってられないくらいのスピードで動いているでしょう。しかし大事なアイデアだからこそ、売れる商品だからこそ、はじめから特許や商標を検討すべきなんです。いつ申請すべきか?その後どういうタイミングでアクションを起こすべきか?など、この事例をぜひ参考にしてみてください。
2014年10月10日
著者 ゆうすけ
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