社外弁理士に存在価値はあるのか?
先日(2016/5/16)の日経新聞に、「企業の枠越え 法実務磨く」という記事が載っていました。企業内の知財や法務の担当者が定期的に集まり、共通して抱える課題について意見交換を行っているそうです。
組織の構造改革や最適化に伴い、一人あたりの仕事の負荷が増えてきているし、スピード重視に伴い、意思決定の仕方や業務フローも刻々と変わってきているため、こうした現場レベルの意見交換は有意義だと思います。
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現場に活きる知財ノウハウが必要
特に知財については、時代背景(権利の活用、模倣品への対策、IT化など)も影響し、“情報”という無形財産の価値があがったため、その守り方(契約による秘密保持義務、営業秘密化による不正競争防止法の適用など)に工夫が必要になってきました。
このような現場レベルの知財ノウハウについて、社外の弁理士も日々キャッチアップしていくべきです。社内の知財担当者の負荷が増えれば、社外の専門家の負荷も増えるでしょう。でも、それはプロフェッショナルとしての責務ではないでしょうか。
中堅企業以下の法務の場合、弁理士に依頼せざるをえないとき(たとえば、他社に特許権侵害で訴えられたとき、弁理士の印(お墨付き)がないとダメなとき)って、まれな突発業務で、実はそんなに多くはないんですよね。
通常業務については、知財ノウハウがあればほとんど社内で片づけられるんじゃないでしょうか(中には、セカンドオピニオンや責任回避のために社外の専門家に依頼することもあります)。
つまり、社内に知財の知識や経験がある担当者がいれば、社外弁理士の存在価値は、基本的にないわけです。まして、担当者一人あたりの守備範囲が広がり、その分知識と経験が増えるため、今後はますますその存在価値が下がるかもしれません。
ひょっとしたら、存在価値というより、そもそも存在自体まだ認知されていないんじゃないかと感じるときもあります。便利屋さんと勘違いされることも今だにありますし(笑)。中堅企業以下の知財活動の普及がなかなか進んでいないのも事実です。
通常業務のうち、社内のマンパワー不足を補う単なるアウトソーシング先としてではなく、社内の事情に捕らわない発想や社内にはない幅広い経験やネットワークを活用することが、社外弁理士の存在価値の向上につながるでしょう。
≪まとめ≫
弁理士だけじゃなく、士業は法律の知識だけじゃ食べていけない時代かもしれません。もちろん、エッジがきいた法律家としての強みは大切です。ただ、お客様の状況も時代によって変わってきていることを考えると、専門家はお客様以上にスピーディーに変わっていくべきではないでしょうか。
ちなみに先日、あるお客様から相談されたとき、こんなコメントをいただきました。「こんなこと、ゆうすけさんにしか相談できない」と。とても嬉しかったです。無理難題でも気軽に相談してもらえる関係を意識して築いていくことも大切なんだと実感しました。
2016年5月18日
著者 ゆうすけ
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