小さな会社を強くするブランドづくり-ネーミングは最強の武器&財産
ブランドづくりは、いろいろな要素が混ざり合って一つのブランドになるため、一言で語りつくせないものです。ところが最近ではブランドというコトバが独り歩きして、“ブランドづくり”が目的になってしまっているようにも思えます。ブランドとは、お客さまとの関係をはぐくんだ賜物ではないかと、個人的には想っています。
「小さな会社を強くするブランドづくりの教科書(著・岩崎邦彦)」では、ブランドづくりのイロハをアンケートデータに基づいて理論的に説明してくれています。本書では、「ブランドは、心の連想だ(p36)」と説いています。つまり「〇〇〇といえば△△△」、この〇〇〇と△△△にコトバを入れて、最初に思い浮かぶブランドこそ、トップ・オブ・マインドとなるわけです。
そしてトップ・オブ・マインドになるために必要不可欠なのが、ネーミングです。なぜならネーミングがなければ「〇〇〇といえば、、、えっと、あれあれ!」となってしまうからです。つまりお客さまのイメージと商品とをつなぐ架け橋がネーミングです。「名前は、ブランドづくりにおける最強の武器であり、財産なのである。(p205)」というのもうなづけます。
そこでブランドづくりの重要な要素の一つとして語られているネーミングについてひろってみました。
シンプル・覚えやすい
東京通信工業 ⇒ SONY
ユニーク・クロージング・ウエアハウス ⇒ ユニクロ
ヤマト・パーセル・サービス ⇒ 宅急便
強いブランド名はシンプルで、覚えやすい。・・・覚えやすいネーミングの商品ほど、ブランド力は強い。(p187~188)
シンプルかつ覚えやすいネーミングは、3~7文字くらいです。3~7文字というのは、よんだときのもの。だから漢字を使いすぎると、7文字をオーバーしてしまいます。また上述した会社はいずれも改名してシンプルにしています。しかし逆に言えば、立ち上げ当初からシンプルにし過ぎると、まったく相手にされないリスクもあるので注意が必要です。
ちなみにSONYは、“音”を意味する「SONIC」の語源であるラテン語の『SONUS (ソヌス)』と“小さい・坊や”を意味する『SONNY』を組み合わせた造語です。また宅急便は、クロネコヤマトの登録商標です。
独自性・固有名詞
普通名詞を組み合わせただけの商品名や、すでに辞書に掲載されている言葉を引用した商品名は、言葉のジャングルに埋もれやすく、強力なブランドにはなりにくい。辞書にある言葉であれば、まったく関係のない商品・サービスに利用すべきである(たとえば、アマゾン)。(p191)
ブランドづくりにはオリジナルの名前が必要です。なぜなら自分が考えた!と言えるからです。そして自分が考えたネーミングならほぼ商標登録できるため、ブランド力がアップします。普通名詞をブランド名にした例といえば、アマゾン以外にもアップルがあります。コンピューターにアップルっていう発想がオモシロい!となるわけです。
一方、普通名詞を組み合わせただけの商品名にもメリットはあります。特にインターネットの世界では効力大です。それは検索されやすいキーワードを確保できるということです。普通名詞を組み合わせただけなので、一見独自性はなさそうですが、その組み合わせ自体に独自性がある可能性は十分あります。まさにコロンブスの卵、使ったもん勝ちです(ぼくがつかっている「ネーミング戦略」もあまり使われてなかったので使ってます^^)。
発音しやすい・聞きやすい
ブランド名は、多くの場合、音によって伝達される。いいにくい名前や聞き取りにくい名前は強いブランドにはなりにくい。「イル・ジョルナーレ」というブランド名のままであったら、今のスターバックスの繁栄はなかったかもしれない。(p192)」
発音しやすいとネーミングは、想い出しやすく、聞きやすいネーミングとは、記憶しやすいと言えそうです(参考:ニューロマーケティングで「なんとなく」脳に伝わるネーミングのつくり方)。
ちなみに、スターバックスの前身「イル・ジョルナーレ」社とは、イタリア語で「日刊新聞・日誌」という意味。1985年に説立後、1987年に「スターバックス・コーポレーション」に社名変更しています。
検索されやすい・入力しやすい
インターネットで検索されやすくするための条件としては、
①同じ名前が他になく、検索結果をみつけやすい
②同音異義語がない
③キーボード入力しやすい(たとえば、キータッチ数が少ない)
などをあげることができる。(p193)
ユーザーの8割が、気になるブランドや商品をネット検索しているそうです。ツール(PCやスマホ)がネーミングに影響する象徴です。ブランド名をネット検索するということは、そのブランド名を知っているユーザー(顕在顧客)と言えます。
一方、ブランド名を知らないユーザー(潜在顧客)をゲットするには、先に述べた普通名詞を組み合わせたネーミングが有効です。
音感がいい
ブランド名を決める前には、何度も発音してみて、その音感をぜひチェックしてほしい。名前は人の行動を変える力を持つのである。(p197)
ぼくが以前お話を聞いたリグナ東京代表の小澤さんは、「Rigna(リグナ)」を音感で決めたと言っていました(参考:高くても欲しくなるデザイナーズ家具「リグナ」から学ぶネーミング戦略)。ラ行(ラリルレロ)は高級感、サ行(サシスセソ)はさっぱり・ひんやり感など、音が人に与えるイメージは確実に異なります。
読みやすい・書きやすい
商品で大事なのは、ネーミングである。ネーミングは、商品の売れ行きを左右するほど重要なものである。-小倉昌男『小倉昌男 経営学』日経BP社
新しく名前をつけるときには、漢字で読みにくい名前をつけることは避けたほうがよい。既存の名称で、読みにくい場合は、ひらがなやカタカナ表示に変更することを考えたほうがよいかもしれない。アルファベットの表記も同様である。読み方のわかりにくい英語表記も避けるべきだ。(p198)
漢字をあえてひらがなやカタカナにしているわかりやすい例といえば、選挙のときの立候補者。あれは明らかに読み間違いや書き間違いされないようにするためでしょう。またアルファベットのネーミングならフリガナをつけておくのが無難です。
ちなみにスポーツブランド「NIKE」は、勝利の女神「ニケ(nike)」が由来なので読み間違われやすそうですが、もはや正規の読み方(ナイキ)がブランド化した事例です。
意味を暗示
・・・イチゴのトップ・ブランドの「あまおう」は、・・・「あかい」「まるい」「おおきい」「うまい」の頭文字をとって「あまおう」と名づけられているが、“甘さの王様”といった響きもある。
ここで強調したいことは、ブランドの特徴は名前の中に明示するのではなく、暗示するほうがよいということだ。「明示」すると、特徴のない、ありきたりな名前になる懸念がある。(p202)
わかりやすさを追求してズバリそのまんまのコトバをつかったネーミングはオモシロくないということです。ある種チラリズムのようなものでしょうか(笑)。「モノ」ではなくお客様が共感・感動する「コト」を売る、というビジネスの本質を明文化するならば、意味を暗示するネーミングが必要でしょう。
利用シーンに適合
「・・・ブランド名を考えるときに、商品そのものに意識が集中してしまう傾向があるが、それは危険だ。商品だけでなく、商品が利用されるシーンを具体的にイメージして、そのシーンにフィットする名前をつけることが大切である。(p202)
オリンピック招致のプレゼンですっかり流行語になった「おもてなし」。これはお客さまにあつくサービスするという意味で使われており、そのイメージが浸透したためにヒットしている商品が「おもて梨」です。流行語の「おもてなし」とひっかけただけでヒットしたとは思えません。この名前の由来が「直接買いに来てくれた方をもてなしたい」というように、やはり「おもてなし」というコトバがつかわれるシーンが「梨」にのっかった賜物ではないでしょうか。
保護可能性
「商標登録をせずに販売をスタートしたり、既存の商標の確認をせずに販売を展開すると、後日、そのブランド名が利用できなくなるといったことも起こりうる。せっかく定着したブランド名の変更を余儀なくされる。これは、ブランドづくりにとって大きな損失だ。ブランドづくりにおいて、ブランド名の商標登録は不可欠である。(p204)」
ぼくが提案している「ネーミング戦略」の極意は、保護可能性を見こしたネーミング開発です。商標登録できないネーミングはブランドづくりにとっては明らかにマイナス。本当は商標登録できたのに、他人に真似されたり先取り登録されて、もはや商標登録できなくなった例もたくさん見てきました。今まではツーステップ(ネーミング開発→商標登録の検討)でしていたことを、ワンストップ(ネーミング開発⇔商標登録の検討)で行うのが「ネーミング戦略」の本質です。
もし新しいブランドづくり、ネーミング開発、商標登録でご相談がある方は、お気軽にご連絡ください。⇒お問合せフォーム
≪ピッタリナまとめ≫
ここにあげた9つのポイントは、ネーミング開発にとっていずれも大切ではあるものの、すべてを満たす必要もないと想います。スタートアップなのか?それとも既に認知されたビジネスなのか?などにもよって、選択肢はかわります。ご自身のビジネスにとってどれを優先すべきかを考えることが最も大切で、その優劣はお客様目線でなければなりません。
2013年10月1日
著者 ゆうすけ ⇒ プロフィール ・ミッション・ビジョン
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