ニューロマーケティングで「なんとなく」脳に伝わるネーミングのつくり方
ニューロマーケティングとは、商品をなんとなく買ってしまったなど人が意識しないでする行動などを脳科学で解明して、商品開発や宣伝広告などマーケティングに活かす考え方のことを言います。別名、神経マーケティングや心脳マーケティング。
ネーミングはマーケティングの重要ポイントと一般的に言われていますが、ニューロマーケティングにあてはめると本当にそうなのか!?とネーミング戦略を研究している僕にとってもとても興味深いテーマです。
・ニューロマーケティングとネーミングの関係性
ニューロマーケティングにとってネーミングはどんな役割をするのでしょうか。
重要なのは、ブランド名を記憶する「意味記憶」のメカニズム、なんらかのブランドとの関係にまつわるエピソードを記憶する「エピソード記憶」のメカニズム、ブランドの体験や体感を記憶する「手続き記憶」のメカニズムをいかにブリッジするようしむけられるか、という点にある。(p172)
もっと簡単にいうと、「意味記憶」は、単語の意味を暗記するようなこと、「エピソード記憶」は、そういえばそんなことあったな~とか、あのときはあんなだったな~とか覚えておくこと、「手続き記憶」は、何かするときの動作や順番を覚えることです。
つまりニューロマーケティングにおけるネーミングの役割は、脳の片隅になんとなく無意識にしまってある商品やサービスと、「意味記憶」「エピソード記憶」「手続き記憶」をつなぎ合わせるものと言えそうです。
・「おーいお茶」はニューロマーケティングにピッタリナ事例
そんな役割を持った大事なネーミングですが、実際にユーザーはどんな思考や心理の上で商品やサービスを思い出すのでしょうか。「おーいお茶」を事例にして考えてみました。
「おーいお茶」は、1989年に改名して1年後に売上を前年比3倍の約36億円にのばし、2011年末に累計販売本数が200億本を突破した“お茶ブームの火付け役”となったヒット商品です。
改名前の「缶入り煎茶」は、缶に入れた煎茶(=緑茶)というそのままの意味でした。このため「意味記憶」は働くものの、「エピソード記憶」や「手続き記憶」がまったく働かず、ユーザーは買いたいと思い難くかったのではないでしょうか。
一方、島田省吾さん出演のテレビCMでのセリフ「お~いお茶」をネーミングに採用したことで、日本人が持つ緑茶のイメージ「家庭的なぬくもり」が「エピソード記憶」として働くばかりでなく、お父さんに「おーいお茶」と呼ばれたらお茶を入れる「手続き記憶」が働きやすいため、ユーザーはなんとなく買ってしまうように脳が活動したんだと思います。
・ニューロマーケティングとネーミングの相性はいい
結論として、ネーミングはニューロマーケティングでも大切と言えそうです。
①ブランド認知優先の法則:
商品名の認知は後まわしになってもかまわない。商品名を記憶するシステムは、商品のコンセプトや物語を記憶するシステムとも、その使用所作を記憶するシステムとも異なるシステム、「意味記憶」のシステムで記憶される。商品名を認知させたからといって、自動的に関心が高まったり、購買につながるとは限らず、名前の認知よりむしろコンセプトや思想のエピソード記憶、使用を通じた手続き記憶を優先して浸透させることが、ビジネスを広げる可能性がある。(p186)
つまり単にわかりやすい(意味記憶を重視した)ネーミングがいいわけではないということです。しかしだからといってネーミングを二の次にしてはまずいと思います。なぜなら記憶と商品をつなぎ合わせるのがネーミングの役割だからです。
ユーザーはパッと見て意味がわからなくても、そのネーミングからエピソードや手続きの記憶がよみがえれば、その記憶に基づいて商品を購入する動機ができると考えられます。体験したことや体感したことをベースに、買う買わないの判断を“なんとなく”決めているからです。
≪ピッタリナまとめ≫
ニューロマーケティングにあてはめると、コンセプトや思想を伝えることがネーミングする目的と言えそうです。これからの時代、ユーザーの脳や心理を考えてブランドを築くべきではないでしょうか。
なぜ脳は「なんとなく」で買ってしまうのか? ニューロマーケティングで変わる5つの常識
2013年7月31日
著書 ゆうすけ
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