著作権侵害の取締りが激化するコスプレ衣装の製造販売で気をつけること
戦隊ヒーローのコスプレ衣装を製造販売していた業者が東宝の著作権を侵害した容疑で逮捕されたニュースが報じられました。どうやら2008年12月ごろから今年7月まで海賊版のコスプレ衣装を製造販売し、売上高が3億円。受注後の製造は中国で行っていたようです。
これは確かにやり過ぎですが、売上高が低ければ著作権者に目をつけられないというわけではないと思います。そのブランドに傷をつけられたなど金銭以外の損失があった場合も著作権者は黙っていないでしょう。
そこで著作権侵害の取締りが激化するコスプレ衣装の製造販売で気をつけることを整理しました。
・コスプレ衣装が“著作物”かどうかが問題
コスプレで著作権侵害となるには、そのコスプレ衣装がそもそも“著作物”であることが前提となります。これについて弁理士会の著作権委員会が公開している資料では、以下の説明がなされています。
衣装,装飾品は,美術の著作物として著作権を有する可能性があります。衣装や装飾品が創作性を有していれば美術の著作物と考えることができます。このとき,衣装や装飾品は大量生産される実用美術の範疇であって著作物性が否定される可能性もありますが,専ら美の表現を追及して制作されたものとみられる美的創作物であって絵画のような純粋美術と同視されれば,衣装や装飾品は,著作物性を有すると考えます(アメリカン T シャツ事件)。この場合には,衣装や装飾品は著作権を有することになります。
このため,イベントにおいてこれら著作物たる衣装や装飾品を模して製作すると,これらの著作権の複製権(著作権法第 21 条)を侵害することになりますので,注意が必要です。(引用:著作権 Q & A(インターネットとの関連を中心に)平成 20 年度著作権委員会第 2 部会)
コスプレ衣装を真似してつくるときは、まずそのコスプレが著作物に該当するかどうかの確認が必要です。コスプレが(創作性のない)ありふれたデザインであれば、著作物には該当しないでしょう。しかし「海賊戦隊ゴーカイジャー」のようにその番組のためにオリジナルで創作されたデザインのコスプレ衣装は、創作性のある著作物と考えたほうが無難です。
そのためこのようなコスプレ衣装を真似してつくった場合は、著作権の複製権を侵害することになります。さらにそのコスプレを人にあげた場合は、著作権の譲渡権(著作権法第 26 条)を侵害することになります。このように著作権というのは、“複数の権利の束”で構成されているため、これなら大丈夫!と油断すると痛い目を見ることになります。
・製造委託メーカーは要注意
これを踏まえると、以下のコスプレ衣装の製造販売行為も著作権侵害になる可能性が高いので注意が必要です。
〇アパレルメーカーが、アニメのキャラクターの衣装を、学際用として、高校生に販売する行為
〇スポーツ用品メーカーが、フィギアスケート選手のユニフォームを、ジュニア大会用のユニフォームとして、中学生に販売する行為
注意すべきは、自社製品ではないものの、コスプレ衣装を製造委託されるケースです。中小規模のメーカーにとって、製造委託業は大切な利益源です。なんでもかんでも著作権を侵害しないように依頼を断るわけにはいかないはず。
しかし依頼がある度に著作権に侵害しているかいないかどうか考えたり、著作権者に許可を取ったりするのは非常に手間がかかります。また超有名なコスプレ衣装以外は、依頼主のオリジナルなデザインと勘違いすることもあるでしょう。
そんなときのために、注文依頼書などには“著作権侵害に対する免責事項”を記入しておくのがいいと思います。依頼主と良好な関係を保つためにも、著作権に関する取扱いについては自己責任とする旨にはじめから同意を得ておいたほうが後々安心ですし、悪気がない依頼主にとっても早期に著作権侵害を回避できるメリットがあります。
≪ピッタリナまとめ≫
コスプレは日本の文化として海外からも注目されているので、まだまだ熱はさめないでしょう。しかしその分、著作権の取締りが厳しくなってくることが予想されます。知らなかったでは済まされない事態になる可能性もあります。そのため“著作権侵害に対する免責事項”など対策はしておいたほうがいいでしょう。
2013年9月30日
著者 ゆうすけ
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