「世の中に新しい価値をつくる教室」から学ぶ、頭でっかちな職人に必要な5つの思考
インターネットで知らない人同士でもつながりを持ちはじめたことで、誰でも簡単によりよいモノやサービスをえられる時代になりました。この時代になって昔と大きく変わったのは、お客さんの“価値観”だと思います。
以前は売れていたモノやサービスが売れなくなったのは、お客さんがそのモノやサービスに“価値”を感じなくなったからではないでしょうか。お客さんにとって価値があるモノやサービスを提供すること、これはビジネスにとって不変なはずです。
しかし手に職を持ったいわゆる“職人”といわれる方の中には、どうもこの視点が足りない人が多いように思えます。気にいらないなら買わないでいい!という職人気質は大切なものの、お客さん目線でビジネスを考えないと先細りする時代にもなっているわけです。
そこで「世の中に新しい価値をつくる教室」に学ぶ、頭でっかちな職人に必要な5つの思考について考えてみました。
<このページの目次>
1.誰の何を解決するのか考える
2.業界の非常識を考える
3.ミッション(使命)を考える
4.見せ方を考える
5.面白いかどうか考える
1.誰の何を解決するのか考える
職人さんは自分の腕に自信があるだけに、自分がお客さんのどんな悩みを解決すべきかという思考が足りないように思えます。とりあえず看板出しておけばお客さんが来てくれる時代は終わってしまいました。
ビジネスというのは誰かからお金をいただいて成り立っているため、「誰の何を解決していけるかどうか」ということがお金をいただけるかどうかの指標になります。誰かが困っていることを解決するとその対価としてお金が支払われるため、ビジネスが成り立ちます。これが深ければ深いほど価値があるアイデアだと言うことができます。(引用:p32,IGPIマネージングディレクター・塩野誠先生)
「深ければ深いほど価値があるアイデア」という点がとても大切だと想います。ぼくも弁理士の仕事をしていると、“法律屋”だからわかりにくい説明でも仕方がない、と思う瞬間が正直あります。そんなときはお客さんの顔を想像しながら説明の仕方を考えるようにしています。小さいかもしれませんが、それだけでもお客さんにとっての価値になると考えているからです。
2.業界の非常識を考える
誰の何を解決するか?職人さんにとっては今までしたことのない頭の使い方かもしれません。しかし自分が考えたことはだいたい他の人が既に考えていると思った方がよさそうです。
「業界の歴史を調べることは重要です。その業界の常識は、どういう経緯を経て常識になったのか、ということは絶対に知っておくべきです。楽天時代の上司でもあった、三木谷浩史さんに新規事業をやるときに教えていただいたことがあります。『お前のアイデアは素晴らしいかもしれないが、だいたい自分が考えていることは、ほかの10万人が考えている。そのアイデアがこれまで世の中になかった理由は、“もう誰かがやって失敗していること”もしくは“できない理由が猛烈にある”のどちらかであって、それがわかるまでは、取り掛かってはいけない』ということです」(p62,㈱ビズリーチ代表・南壮一郎先生)
新しいアイデアといっても過去のアイデアの組み合わせに過ぎないので、業界の常識を知ることは大切です。今までの弁理士の常識は、お客さんの特許や商標を申請して守ってあげることでした。最近ではお客さんが気づいていない守るべきアイデアを積極的に見つけてあげるコンサルティングも常識になりつつあります。そこでぼくは、お客さん自身が守るべきアイデアに気づく考え方をウェブで発信することをはじめました。これは業界の非常識だと考えています。
3.ミッション(使命)を考える
お客さんのことを一生懸命考えるあまり、モノやサービスの質ばかりにこだわってしまうのも職人さんの傾向ではないでしょうか。お客さんのココロを動かすのは、質だけではなくなってきました。
「アイデアに価値はない」ということの真意は、「Why(なぜそれをやるのか)」と「How(どのようにするのか)」を抜きにして、アイデアの話をしてしまうと、たいていの場合、それは思いつきやはやりを模倣したものに過ぎないと思っているからです。(p39,㈱nanapi代表・古谷健介先生)
なぜお客さんの役に立ちたいのか?どのようにお客さんの役に立ちたいのか?モノやサービスがあふれている時代、お客さんのココロが動くのは、“人となり”、つまりその人のミッション(使命)だと考えています。ぼくにも自分なりのミッションがあります。特許や商標の“守り”をふまえた“攻め”の提案をすることで、お客さんが新しい価値をつくれたら嬉しいです。
4.見せ方を考える
ミッションが明確になると、世の中に対して自分の果たすべき役割が腑(ふ)に落ちるため、活動が楽しくなると思います。ところが職人さんはその道のプロだけに、お客さんへの表現の仕方、つまり“見せ方”に対する意識が低いと思います。
おいしいレストランの要素を考えてみると、おいしい料理について、食材がいいかどうか、これは「知識力」です。そして料理の腕が「思考力」つまり、知識や材料を組み合わせられる力です。そして、料理の盛り付けやレストランの内装が「対人関係力」です。人に動いてもらう力、とも言えるかもしれません。これらのうち2つ以上がほかのレストランより上回っていれば、ほかのレストランよりも良いレストランだと言うことができると思います(p34,「地頭力を鍛える」著者・細谷功先生)
職人さんは「知識力」と「思考力」に磨きをかけるパターンが多いので、他の職人さんとの違いがわかりにくくなくなってしまいます。そこでぼくは弁理士としての“見せ方”、つまりブログで発信したりわかりやすい図をつくったりすること(例:商標登録の申請の流れ)を意識するようになりました。新しいネーミング・発明・デザインなどクリエイティブなことを扱っている職業なので、“見せ方”にこだわりを持つことは当然だとも思っています。
5.面白いかどうか考える
最後に、やっぱりこれだと思います。職人さんは頭が固い!これはぼく自身にも言いきかせています。
「データで検証することも大事ですけど、なんでもかんでもデータに頼っちゃって、「事例がないからやめておこう」みたいな妥協しちゃう癖がついてしまっている人もたくさんいらっしゃると思います。だから、もうちょっと怖がらずに冒険しようぜ!って世の中になると面白いなと思いますね。(p30,㈱バーグハンバーグバーグ代表・シモダテツヤ先生)
職人さんは努力家だし勉強熱心だし頭がいいはずです。それだけに面白さの追求が欠けている気がします。ワクワク感がないというか、無難になりがちです。職人の腕や知識を活かしたら、面白いアイデアが生まれるとぼくは想っています。コピーライターでブロガーで弁理士、なんだこいつって思われるかもしれませんが、ぼくは仕事に限らず面白いことを考えて発信していきたいです。「いろんな楽しみ方を知る」を追求するプチ企画「タノシル」は、ぼくの感性を高めるのにも役立っています。
≪まとめ≫
ぼくは職人さんをココロから尊敬しています。お金より大切な何かをしっかりと持っているからです。それだけにもったいないとも想っています。ちょっと思考を変えるだけで、世の中に感動を与えられる存在になれるポテンシャルが必ずあるとぼくは信じています。
世の中に新しい価値を つくる教室 (U25 SURVIVAL MANUAL SERIES)
2013年9月22日
著者 ゆうすけ
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