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「爆速経営 新生ヤフーの500日」から学んだ興味深い3つの人事評価制度

公開日: : 最終更新日:2014/01/03 おすすめ本, 教育論 , ,

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ぼくが大学1年生のときにウィンドウズ95が発売されて、そのときくらいからヤフーの存在を知りました。ナイツのネタじゃないけど、当時は本当に、「ヤホー」って読んでました(笑)。そんなヤホー、いや、ヤフーがIT業界を牽引してきたといっても過言ではありません。

しかしながら順風満帆な経営が仇となり、守りに入ってしまいました。世間の評判を気にして嫌われない会社にするために、無難な経営体質になってしまったわけです。そのためSNSではフェイスブック、Eコマースでは楽天やアマゾン、そしてスマホではラインといった新勢力に押されっぱなしで、いつしか儲かっているけど“つまらない会社”のレッテルを張られてしまいました。

そこで2012年3月に経営陣を心機一転し、若手主体に切り替えました。そこから500日で、株価が約2倍になるほどの追い上げを見せています。今もなお新体制の快進撃は続いています。その快進撃の理由を突き詰めると、「爆速経営」や「課題解決」といったわかりやすい言葉で全社的に意思疎通を図ったこと、アスクルやTSUTAYAでおなじみのカルチュア・コンビニエンス・クラブといった異業種との最強タッグ実現させたことなどが挙げられています。

その中でも特に興味深かったのが、人事の評価の仕組みです。本書内にも書かれていますが、IT業界は常に新しいサービスを生み続ける宿命にあります。その宿命を果たすのは、人でしかありません。そのため優秀な人材を育てるしかなく、ヤフーは人材開発能力の高さも追及しているのです。それは社外的なアピールにもつながるという考えを持っています。

そこで「爆速経営 新生ヤフーの500日」から学んだ興味深い3つの人事評価制度をまとめました。

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1.斜め会議を実施

言葉だけでは意味不明なものの、その内容に感心しました。「斜め」とは、上司と部下の関係のうち、上司を他部署の上司と入れ替え、他部署の上司と部下がその上司について会議をするというものです。

・・・「斜め会議」というフィードバック制度を開始した。

通常、従業員の評価はその組織の上司が行う。360度評価のように、部下が上司を評価する制度も一般的になっているが、斜め会議では同格の立場にいる組織の部長が互いの部下から、それぞれの上司の評価を聞き出す。「上司について知っていること」「続けてほしいこと」「やめてほしいこと」の3つを直属ではない斜めの上司が聞き、本人に伝えていく。すなわち、評価の多様化を狙ったものである。(p193)

これは上司にとってすごく効果的な教育手法ではないでしょうか。というのも、上司の評価を部下がする仕組みをさらに越え、部下からの評価を他部署の上司に知られてしまうからです。他部署の上司とは、ライバル同士かもしれないし、あまり仲良くないかもしれません。

そんな気まずい間柄なのに、自分のことを部下に暴露されてしまうかも!?という危機感はハンパないはずです。つまり「斜め会議」は、部下からも見られているという意識を高め、主体的に成長する努力をさせる画期的な制度でしょう。

2.会社の価値観と社員の評価軸が一致

会社の価値観、つまり理念や行動規範やクレドを決めたとしても、それが社員に浸透していなければ意味がありません。社員の価値観と会社の価値観とがずれていたら、経営陣がどんなにがんばっても業績は伸び悩むはずです。

「・・・フェイスブックは『move fast(ムーブファスト)』といった4つの評価軸があって、それぞれが会社の価値観と直結しているというんだよね。ヤフーには、課題解決エンジんとか、フォーカスとか、いい言葉が出てきているけど、それは人事評価の中に組み込まなければ定着しない。あれは、参考になった」と川邊は振り返る。ここで言う評価軸こそが、本間の言う会社のベクトルにほかならない。

そして、新生ヤフーの評価軸となる4つの「バリュー」が決まった。
「課題解決をしたか」
「やるべき業務にフォーカスしているか」
「既存の枠組みにとらわれない、ワイルドな判断をしているか」
「何よりも爆速で動ているか」(p196)

社員の評価軸は、成果だったり目標の達成率だったりしますが、単に数字の計算に過ぎないパターンが多い気がします。それだと社員は会社の価値観に共感して行動しているのかどうかわかりません。また社員にとっても、意欲的に仕事をしにくい評価軸です。

その点、会社の価値観や行動規範をそのまま社員の評価軸とすれば、社員の意識もぶれず、成果や目標の達成率が向上しやすいはずです。

3.エンジニア部門には黒帯制度を導入

エンジニアって、企画や営業と違って、日の当たらない場所にいることが多いです。ってかそういうところが好きな人がエンジニアに多いタイプです。だから評価もしにくいわけです。画期的なシステムを開発したといっても、もともとは企画部門の発想だったりするし、大したサービスでなくても営業でカバーするパターンもあります。そんなエンジニアにも不公平感をなくす工夫がされています。

エンジニアの中でも、技術的な知見や見識、能力の高い社員を「黒帯社員」として認定、さまざまイベントの講師や指導を任せる。認定者には専用の黒の名刺を与え、自由な配布を認める。いわゆる名誉職で、それ以上でも以下でもない称号だが、「それだけでもエンジニアの士気は変わる」と村上は断言する。(p210)

エンジニアはお金よりも名誉や開発環境の提供を求める人が多くいます。つまり認めてほしいという欲求や、開発に没頭したいという欲求があるため、それさえ満たせばお金での評価はいらなかったりもするようです。“黒い名刺”というのがまた一工夫されていてオモシロいです。

≪まとめ≫

短い時間で結果を出さなければならない経営陣にとって、正当な人事評価制度は死活問題です。いい人材がいなくなることは、会社力の低下を意味するからです。社員を育てること、社員を評価すること、そして社員を信じること、経営にとってはどれも大切なことではないでしょうか。

爆速経営―新生ヤフーの500日

2013年11月18日

著者 ゆうすけ

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