「常識を疑うことから始めよう(ひすい他著)」から学んだ大切な3つのこと
常識とは、だれもが知っている、または知るべき一般的な知識のことを意味します。そして日常生活では、「常識で考えればわかる」や「常識外れ」など、どちらかといえば常識に欠ける人に対するネガティブな使い方がされています。このため私たちは「常識=正しいこと」という固定観念にとらわれがちです。
ではそもそも何が「常識」なのでしょうか?昔の日本はちょんまげのサムライが常識でしたが、今は違います。つまり私たちが「常識」ととらえるものは、時代や場面に応じて変化してしまう程度のものなのかもしれません。
そこで「常識を疑うことから始めよう(ひすいこたろう,石井しおり著)」を読んで感じたことや実践してみたいことを3つまとめました。
1.アイデアは常識を新しく組み合わせてつくる
新しいものを考えるときには、今あるモノ(常識)とは違うものにしたいと意気込むあまり、常識を度外視してしまいます。常識を超えようとする気持ちは素晴らしいのですが、世の中をかえる画期的な発明も、ほとんどが常識の新しい組み合わせで生まれています。本書では、「アイデアのつくり方」の著者・ジェームスヤングの名言を引用しつつ、ソフトバンクの孫正義社長が行っていたアイデアの出し方が紹介されています。
具体的には単語がかかれた数百のカードから3つカードを引いてアイデアに結びつけるというもの。孫さんはこの方法で、「一日一発明」を日課にし、なんと1年で250ものアイデアを生みだしています。(p50)
たとえばアイスクリームの「雪見だいふく」も、大福とアイスクリームとの組み合わせで生まれたヒット商品です。そして「雪見だいふく」の特徴は、冷凍しても大福もちがかたくならないことであり、この特徴が特許になったわけです。
ネーミングもアイデアの一つなので、考え方はまったく同じです。つまり売れるネーミングは、既存のコトバの新しい組み合わせにすぎません。「雪見だいふく」のネーミングは、こたつのある和風の家の屋内を「大福」のイメージに、窓や庭先から眺める雪景色を「アイスクリーム」のイメージに重ねたことが由来です。
2.自分の土俵に新たな常識をつくる
どんなことでも、パターン(常識)を知ることや高める努力をすることは大切です。しかしこの常識が今の自分にとって本当に優先順位が高いものかどうか?を見極める必要があります。本書では、伝説の広告マン・ジョージロイスの名言を引用して、回転寿司のルーツを以下のように述べています。
業界スタンダードになった回転寿司。でも、それは味を追求した先にはなかった。値段を追求した先でもなく、ニーズを追求した先でもなかった。それは、「おもしろさ」のさきにあったのです。(p72)
今の弁理士の常識(専門分野)は、書類作成ばかりでなくコンサルティングもおこなわれています。私が取り組むネーミング戦略は、さらにクリエイティブを組み合わせた新たなマーケティング理論とかんがえています。
あまり知られていませんが、弁理士はお客様の発明やネーミングの相談にのることがあります。つまり特許や商標をとるには、他の商品とあきらかに違うポイントが必要なため、発明やネーミングの企画創造(クリエイティブ)に弁理士の知識が役立つのです。
しかし本当に大切なことは、特許や商標をとることではなく、お客様の商品が売れることです。だから弁理士として、特許や商標をとるポイントがお客様の商品が売れる理由となるように尽くすことが今後のミッションとかんがえています。
自分の専門分野(土俵)をほりさげることが常識ならば、今の常識にとらわれず土俵に新たな常識をつくる勇気をもつことで、回転寿司のようにさらに自分の土俵で活躍できるようになるのではないでしょうか。
3.見たもの(常識)の中に新たな発見(美しいもの)を探す
やりたいことと自分の能力のギャップを感じた場合にどうするか?という質問に対して、とても参考になる考え方がのっていました。本書では、世界的に有名な画家・ゴッホの名言を引用して、以下のように述べています。
なにかのせいにしている限り、あなたは自ら、自分の可能性を閉ざしています。環境が現実ではない。起きた出来事が現実ではない。そのどこを見るか、どう受け止めたかがあなたの現実をつくっています。あなたの心が投影した世界が現実なのです。(p92)
私は絵を描くことが好きで、小学1年生のときに描いた人物画が県のコンクールで入選、中学2年生のときに描いた建築画が世界児童画展で入選しました。どうやら見たものを描く(分析する)才能は豊かのようです。逆にいうと、頭の中で創造したものを描く才能は乏しいと自覚しています。
弁理士になったのは、新しく企画創造する能力が弱かったため、まずは法律家としてお客様の企画創造のお手伝いをしたいと思ったのも一つの理由です。お客様の企画にふれながら自分の感性を磨こうと考えました。そして今は、攻めと守りのネーミング戦略という新たな常識を研究中です。したがってまだまだクリエイティブな能力に乏しいのです。
でも自分の才能を企画創造につなげることはできそうです。たとえば「加齢臭(かれいしゅう)」というコトバ。読んで字のごとく、年齢を重ねることで発する体臭を意味し、もっぱらネガティブワードとしてつかわれています。しかしこのネガティブワードも、「華麗衆(かれいしゅう)」と表現をかえるだけで、ポジティブワードになります。このようなコトバ遊びから生まれるネーミングも、今後の研究テーマにしたいと考えています。
見たものの中に新たな発見を探す、つまり見る角度を変えたり、色眼鏡を外したり、一部消してみるとか、ちょっとした創意工夫で自分の欠点(短所)を長所にかえたり、自分の長所を短所につなげたりできるはずです。
まとめ
自分の常識や自分をとりまく環境の常識から外れることができないのなら、まずはこれらの常識をどうすれば活かせるか?を考えることからはじめることをオススメします。ヒントはそこら中にあるはずです^^
<参考> 雪見だいふく – Wikipedia
2013年4月16日 著書 ゆうすけ
関連記事
-
「世界をよくする仕事」で稼ぐ著書・大澤亮氏に学ぶキャリア形成に大切な3つのこと
仕事人ならキャリアはずっと付いてきます。他の人より光るキャリアの持ち主なら、予期せず転がって
-
アップルのデザインの表と裏の世界
ファッションなどに限らず、デザインというキーワードは産業の発達に欠かせない要素になってきまし
-
著書「ハゲタカ外伝 スパイラル」から考える特許の無償開放(オープン戦略)の意義
以前、「ハゲタカ外伝 スパイラル」の著書・真山氏のコメントに基づいてエントリーしましたが、今
-
弁理士が主人公の本「ぼくは愛を証明しようと思う。」を現役の弁理士が読んだ感想
ネットニュースでこの本のことを知り、なんと主人公が弁理士!ということで、早速購読しました。モ
-
知財管理もホワイトカラーのパラダイムシフトが必要!「トヨタ生産方式の逆襲」から学ぶ業務カイゼンの真髄とは?
かんばん方式をはじめトヨタ生産方式が誤解されている理由や、実は製造現場に導入すべき考え方など