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マーケットを拡大したかったら特許や商標をオープンする戦略に注目すべき!

公開日: : 最終更新日:2014/11/15 特許, 特許トレンド, 特許戦略

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死蔵特許や休眠特許など有効活用されていない特許を開放してイノベーションに役立てようという活動が行われています。逆に言うと、会社が使っている特許は解放しないという意味にもとれます。会社側としては研究開発に対して人件費や設備費に投資し、やっとの想いで生み出した発明を簡単には手放すわけにはいかないという心境でしょう。

ところがそんな心境を逆手にとったのがテスラやツイッタです。また『くまモン』もオープン化が成功した事例となりました。 

photo credit: urbaguilera via photopin cc

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テセラやツイッターの思惑

我々は間違っていた。残念なことに現実は正反対だったのだ。・・・電気自動車の販売台数は平均して、合計の販売台数の1%以下に過ぎなかった。・・・

これはまた、市場が巨大であるということを意味する。当社の真の競争相手は電気自動車を手掛ける他社ではなく、世界中の自動車工場から洪水のように毎日吐き出されるガソリン車なのである。(引用:2014/6/14 ハフィントンポスト「テスラのイーロン・マスク、特許を全面開放する決断に込められた「信念」」)

・・・Twitterの従業員が取得した特許は今後、Twitterであれ、Twitterがその特許を譲渡した他の企業であれ、防御的用途にしか使用しないことを保証する――という従業員との間の合意文書だ。(引用:2012/4/18 internet.watch「米Twitter、「特許は防御にしか使用しない」~法的文書のドラフトを公開」)

技術を独占するということは、ライバルが入ってこれない壁をつくることです。この壁が特許になります。だからライバル会社はこの壁をぶっ壊すか(特許を無効にする)、この壁のどこかに穴がないか探すか(特許に引っかからない製品を開発)、この壁を通り抜ける通行料を払うか(ライセンス契約)しかありませんでした。そしてこれらの対策を行うにはたくさんの時間とお金が必要なときもあります。ライバル会社にとっては手痛い出費です。

特許を持っている会社の心中を極端に言えば、自社のみでマーケットの拡大を図るか、マーケットの拡大は他社に任せて自社の利益を追求するか、どちらかだったわけです。しかし結果的に言えば、どちらもうまくいかなかったのではないでしょうか。優秀な技術者が海外に身売りしたことがすべてを物語っています。

このような悪循環を察し、テスラやツイッターはこの壁を自ら取り外したわけです。なぜなら自社のみでマーケットの拡大を図るのは難しいし、自社の利益を追求するにはライバル会社と無毛な争いをしなければならないからです。彼らが取った戦略は、壁を壊されるないように守ることでも、壁の抜け穴を埋めることでも、壁の交通量を取ることでもなく、壁を解放したことでした。 

くまモン戦略は地域経済のマーケット拡大の切り札

熊本県は『くまモン』の使用料収入をえるより、関連グッズを各地で自由に販売することで、人々に熊本県の食品などの名産物を知ってもらうことを狙いとしました。(利用許諾件数は2012年8月時点で6千件突破)。つまり『くまモン』というキャラクターを通じて、熊本県の名産物を買いたいという気持ちをたかぶらせることに成功したのです。(2012/10/31「『くまモン』の由来/意味-成功のなぞを徹底解明!」)

テスラやツイッターのような特許技術を開放するものではありませんが、『くまモン』というキャラクターのネーミングやロゴを商標登録し、それを誠意ある業者に対して解放するのは知的財産をオープンする戦略のケーススタディになります。商材を売るためにキャラクターを成長させ、そのキャラクターを使用することで商材の売れ行きを伸ばす戦略

そして『くまモン』は、さらに中国、韓国、台湾、シンガポール、タイ、米国、EU(欧州連合)加盟国に進出することになりました。それらの国でも商標登録を済ませているからです。アジア諸国での模倣被害はつきないものの、目的がマーケットの拡大だとすると、この一手は確かなものになるのではないでしょうか。

≪まとめ≫

特許や商標は、武器にも盾にもなります。そしてテスラやツイッターや『くまモン』は自らの盾をとり、武器を使わず、みんなと資源を共有することでマーケットを拡大する道を選択しました。そして一つ忘れてほしくないのは、いざとなれば武器も振りかざせるし、盾も構えられるということです。つまり特許や商標を持つことは、マーケットの主導権を握っていると言えるかもしれません。

2014年6月14日

著者 ゆうすけ

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