【速報】ホンダ「スーパーカブ」が立体商標登録されるまでの道のりとその影響力
ホンダの「スーパーカブ」といえば小型バイクの代名詞とも言える名車。1958年から販売開始され2014年3月末時点で8700万台以上に達し、世界最多量産・販売台数を記録したほどの人気です。
そんな「スーパーカブ」が立体商標登録されたようです。ホンダとしてはヒット商品のデザインを権利化して守りたかったわけですが、その裏ではどのような道のりがあり、どんな狙いであったのかを整理しました。
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「スーパーカブ」立体商標登録までのキセキ
※特許庁IPDLの検索結果より
- 出願・・・・・・・・・2011年(平成23年)2月18日
- 拒絶査定・・・・・・・2013年(平成25年)2月15日(発送された日)
- 拒絶査定不服審判・・・2013年(平成25年)5月16日
まず驚いたのが、2011年2月18日に出願されていたことです。ロングセラーのヒット商品だからもっと前に出願されていたと思っていました。ひょっとすると立体商標の登録率が低いからかもしれません。
近年の立体商標の登録率を割り出すと、2011年は27%、2010年は42%、2009年は47%です。これは、文字商標や図形商標の登録率(50~80%)と比べると低めです。案の定、2013年2月15日には登録が認められずに拒絶されています。
参考:立体商標とは何ぞや?文字・ロゴ・図形以外に立体的なモノも商標登録OK
しかしこれであきらめなかったホンダ。「スーパーカブ」は立体商標登録されるべきだ!と主張し、2013年5月16日に拒絶査定不服審判を請求しました。今まで審査官1人で判断していたけど、あらためて審判官3人で判断してくれーとお願いしたわけです。
それが功を奏して無事に商標登録が認められました。おそらく「スーパーカブ」を見ればホンダの商品でしょ!って誰もが思うくらい有名になったから、立体商標として登録されてもいいはずだ!という主張が認められたんじゃないかなって想定しています(審決公報が発行されたら確認したいです)。
これについてホンダは即行プレスリリースしました。日本発というのが何よりのアピールであり、このデザインを真似されないようにする抑止力としての効果も発揮しているでしょう。
Hondaの「スーパーカブ」の形状が特許庁から立体商標として登録されることが決定しました。二輪自動車※1としてはもとより自動車業界としても、その乗り物自体の形状が立体商標登録されるのは日本で初めてであり、工業製品全般としても極めて珍しい事例となります。
<引用:本田技研工業 ニュースリリース 2014/5/26 「「スーパーカブ」の形状が日本で立体商標登録認可 ~乗り物として初の快挙達成~」
立体商標で半永久的にデザインを独占
一般的に、デザインは意匠登録で保護します。デザイン(見た目)は意匠登録、文字やロゴ(他人の事業と区別するためのマークなど)は商標登録という棲み分けです。ところが立体的な形状(=モノのデザイン)だって他人の事業と区別できる特徴があるんだから商標登録の対象にしよう!ということで、1996年に商標法が法改正されて立体商標制度が導入されました。
「スーカーカブ」が意匠登録されているかどうか調べてみましたが、二輪での意匠登録は発見できませんでした(Dターム:G2300、出願人/意匠権者=本田技研工業で検索)。詳細は不明ですが、おそらく意匠登録の存続期間が切れてしまったんだと思います。意匠登録は、登録してから20年間しかもちません(現行制度)。つまりデザインを独占できる期間は有限です。
一方、立体商標で登録とするということは、半永久的にデザインを独占できることになります。なぜなら普通の商標登録と同じで、更新手続と更新登録料さえ払えば、商標登録を維持し続けることができるからです。だから意匠登録無き今、立体商標登録はヒット商品のデザインを守る切り札になるわけです。
≪まとめ≫
立体商標に限らず、特許庁によるきわどい判断を乗り越えて法的に登録が認められたのは画期的なことです。立体商標の可能性について「スーパーカブ」の登録事例が参考になるからです。つまり「スーパーカブ」が登録されたからうちのデザインだって立体商標として登録になるはず!と主張する価値があるということです。
2014年5月26日
著者 ゆうすけ
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