立体商標とは何ぞや?文字・ロゴ・図形以外に立体的なモノも商標登録OK
ぼくのブログはネーミング、つまり文字商標がメインで、その他にもナイキのスウォッシュようなロゴ商標やくまモンのようなキャラ商標もたまに取り上げています。
商標登録のパターンも本当に多種多様で、一言では語りつくせません。そして研究すればするほど新たな発見があるため、ネタもつきません。そうはいってもマニアック過ぎないように気を付けたいところです。
そこでここでは、立体的なモノも商標登録できちゃうよってことをご紹介します。ちなみに立体的なモノとは、たとえば靴とか瓶とか、なんでもいいわけです(登録できる条件を満たしていることが必要ですが。。。)。
なお立体的なモノの商標をを「立体商標」といいます。つまりビジネスの目印にできるのは、文字やロゴだけでなく、立体的なモノでもOK。立体的なモノは目立つため、マーケティング効果もあります。
あの商品も立体商標として登録されている
まずはどんなモノが立体商標として登録されているか知るとイメージしやすいです。そこで登録されている有名な商品をいくつかピックアップしました。
・運動靴(アディダス)
アディダスといえば三本のラインが目印です。これを含んだ靴そのものを立体商標として登録しています。これによりこの靴を、靴の販売のために広告的(宣伝目的)に使っている業者ばかりでなく、この靴のパクリ品を販売している業者にも文句を言える権利があります。
・あひるのおもちゃ(バスクリン)
よく見かけるあひるのおもちゃ。この商標登録も、アディダスの靴と同じ効力を持っています。
・カーネルおじさんの置物(ケンタッキー)
ケンタッキーと言えば、カーネルおじさん。たとえ「ケンタッキー」と書いてなくても、この置物を見れば、フライドチキンが売ってるかな?って思うはずです。それがブランドであり、そのブランドを構築する具体策が商標なわけです。
しかしアディダスの靴やバスクリンのあひると違い、ケンタッキーの場合はこのカーネルおじさんそのものを販売しているわけではなく、飲食物の提供というサービスについて広告的(宣伝目的)に使っているだけです。
したがって違う飲食店がカーネルおじさんを置いていたら文句を言えますが、カーネルおじさんのパクリ品を売っている業者には文句を言えません。
・コーラの瓶(コカ・コーラ)
ちなみにコーラの瓶も立体商標登録されています。しかし申請した当時にはすでに多くの業者が似たような瓶でコーラを販売していたため、はじめ特許庁は一社に独占させるべきではないと判断しました。ところがこの瓶を見たら誰もがコカ・コーラを想い出すという反論が認められ、商標登録されたのです。
このように特徴的な形をしていても、そのタイミング次第で登録できないリスクもあるということです。
立体商標の登録率はちょっと低め
そうはいっても立体商標って簡単に登録できるかどうか気になるところです。そこで立体商標件数の統計を調べました。
この一覧から近年の立体商標の登録率を割り出すと、2011年は27%、2010年は42%、2009年は47%です。これは、文字商標や図形商標の登録率(50~80%)と比べると低めです。
ちなみに年間数百件しか申請されていないことにちょっと驚きです。というのも、立体商標を登録できるようになったのは平成8年(1996年)からで、比較的新しい制度です。そのため立体商標についてまだあまり知られていないのかもしれません。
意匠登録も文字商標もロゴ商標もできないときは立体商標に価値あり
では登録率が低めなのに、立体商標にチャレンジするメリットはあるのでしょうか?立体的なモノであれば、そのデザイン(外観)を意匠登録できるはずです。また商品名やサービス名は、その文字やロゴを商標登録しておくのがセオリーです。
しかし立体的なモノのデザインを意匠登録をするには、そのデザインに新規性がなくてはなりません。つまりリリース後だとそのデザインがオープンになるため、新しさがなくなってしまいます(半年以内なら望みはありますが、ここでは省略します)。そのため意匠登録はできません。
また同じ商品名やサービス名が他の誰かに先に商標登録されていては、もはや打つ手なしです(その人が商標登録の一部を譲ってくれたり、その一部を取り消しさせたりする手段はありますが、ここでは省略します)。
このように意匠権も商標権もないと、もし自分が最初に考えた立体的なモノを、パクリ品として他の業者に販売されてしまっては、本来自分のオリジナル品なのにその行為をやめさせるのが難しくなります。不正競争防止法や著作権を主張して止めさせる余地はありますが、意匠権や商標権と違い登録された権利ではないため、反論されるリスクが大いにあります。
そこでその商品を立体商標として登録すれば、商標法にもとづいてパクリ品の販売行為をやめさせることができるわけです。
判例だと、株式会社東京ひよこがひよこの形をした饅頭を立体商標として商標登録し、その商標登録の権利にもとづいて有限会社二鶴堂がひよこ饅頭を販売する行為を差し止めた事件がありました。
後に東京ひよこの立体商標は無効にされてしまったものの、立体商標があれば同じ形をした立体的なモノの販売行為を止められる事実が明らかになりました。
≪ピッタリナなまとめ≫
立体的なモノならなんでも立体商標できるわけではなく、ちゃんと登録するための要件があります。それは商標法上で定められていて、簡単に言えば、ちゃんと目印となる形状をしているかどうかが判断されます。
パクリ品の被害が増えているため、商標権・特許権・意匠権など登録して独占権をしかるべきタイミングでとることが今後のビジネスを安全に進める手段の一つであることは間違いありません。
<参考>
2013年11月1日
著者 ゆうすけ
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