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知財監査が必要な時代 知的財産活動が経営戦略の穴を埋める次の一手

公開日: : 最終更新日:2014/11/15 弁理士, 弁理士キャリア, 教育論

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会社にとっての”目に見えない価値”、その一部が知的財産(技術、デザイン、ネーミングやロゴ、写真など)であり、それらは自分が考えたものだ!俺が第一人者だ!と主張できる権利が、知的財産権(特許、意匠、商標、著作権など)なわけです。

photo credit: TheImageGroup via photopin cc

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知的財産は経営戦略の大切なカード

おそらく大事だってことは誰だってわかっているでしょう。将来にはお金にバケるかもしれない会社の資産ですから、。でもやっぱり目に見えない”暗黙知的なもの”ととらえられている傾向がまだまだ強いと感じています。しかも費用対効果がわかりにくい。だから経営陣は予算をしぶる。その気持ちもわかります。オープンな時代だし、独り占めなんてする必要はないじゃん、という声も聞こえてきます。

でもそんな時代でも、成長を続けている会社はちゃんと知的財産活動を続けています。それは知的財産を独占してを囲い込むだけじゃなく、無償公開したり(マーケットの拡大)、隠したり(ノウハウ化)、貸し借りしたり(ライセンス)、売り買いしたり(譲渡、M&A)しているわけです。つまり経営戦略の大切なカードであり、いいカードをもっていないと勝てないどころか勝負も交渉もしてくれないでしょう。

会社ごとに取り組むべき内容は異なる

そんな大切なカードである知的財産を、どう集めたらいいか?育てたらいいか?温存したらいいか?どんなタイミングで切ればいいか?その辺を検討すれば、経営戦略の穴を埋められる強力なカードになるのではないかとぼくは考えています。しかしそれらは会社のヒト、モノ、カネ次第。どんな会社にも共通する魔法はありません。会社ごとに強み・弱いがあるからです。

だから健全かつ有効な知的財産活動を行うために、知財監査を導入すべき時代がきたとぼくはみています。特にこれから知的財産活動に本腰を入れる会社、例えばスタートアップや他社事業を買収して知的財産権をもつようになった(もつ予定の)会社は、先行特許をもっている大手企業とどう渡り合うか?自社のマーケットをどう拡大するか?などを知財の側面から検討する価値は十分あるでしょう。

知財監査による検討項目一覧

そこで知財監査として確認したり検討したりする一般的な内容を以下に列挙しました。大きく分けると、まずは会社方針となる経営幹部の想い 実行部隊となる知財部門や研究開発部門の活動内容会社が持っている技術や特許の内容を整理すると、あるべき姿とそのギャップが見えてくるはずです。

大項目 中項目 小項目 回答例
会社方針 経営幹部 技術開発と知財に関する狙い ・主力技術の特許化又はノウハウ化
・既存特許の周辺技術を特許化
・他社ライセンスをうける(うけている)
・意匠登録や商標登録で複合的に保護
知財への取り組み方 ・積極的に権利行使(警告、訴訟)
・ライセンス提供による利益確保
・競合他社への参入障壁の構築
・知財部門及び開発部門の知財力強化
・特許維持コスト削減
・外注費削減
知財に対する具体的リスク(体験含む) ・権利侵害訴訟(サブマリン特許など)
・パテントトロール
・職務発明に関する従業員とのトラブル
・営業秘密の漏洩対策
人事(関係部門) 知財部門 知財に関連する業務内容 ・発明の発掘(技術者へのヒアリング)
・発明者と特許事務所との仲介
・明細書のドラフトチェック
・特許文献の検索の仕方
・特許化又はノウハウ化の検討
・先使用権の確保検討
・ライセンス交渉及び契約書チェック
・警告状への対応
・特許年金など期限管理
・他社新商品や出願状況のウォッチ
・知財戦略に関する役員説明
・予算管理
知財の認識 ・特許制度の概要理解(手続,法定期限)
・特許化の理解(進歩性)
・抵触の理解(文言侵害,均等論)
・ライセンスの理解(実施権設定登録)
・意匠法、商標法、著作権の理解
研究開発部門 知財に関連する業務内容 ・先行技術調査
・発明提案書の作成
・請求項又は明細書の作成
・弁理士による明細書のドラフトチェック
知財の認識 ・特許文献の検索の仕方
・特許化の理解(進歩性)
・抵触の理解(文言侵害,均等論)
知財部門と開発部門との関係(業務フロー) 定時(随時) ・権利化及び抵触の検討
・出願とリリースのタイミング検討
・特許事務所とのやり取り
・特許維持年金支払い可否の検討
突発時 ・警告状対応
技術開発・知財 主力技術・商品・特許 特徴(差別化ポイント) ???
特許(出願中、登録済み) ???
競合他社 ???

 ≪まとめ≫

知財立国という言葉が生まれたくらい知的財産は国レベルの課題であるにも関わらず、国とそれを実行すべき会社との間に温度差があるのは、知的財産活動の取り組み方が伝わっていないからではないでしょうか。そこでそのような会社の現状と取り組む知的財産活動のあるべき姿とのギャップを埋めるのが知財監査のミッションと考えています。

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2014年7月19日

著者 ゆうすけ

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