特許を取るまでの流れ-第1フェーズ:ステップ①「調査・検討」でアイデアの宝石箱を活用しよう!
第1フェーズ「調査・検討」では、アイデアの特徴、商品のリリース時期、マーケティングとの関連性について調査・検討するタームとご紹介しました。これで特許を取るための方針が固まります。
では次に、このフェーズで具体的に行う作業についてご紹介します。このフェーズでどんな特許が取られているかを調べることにより、申請すべきかどうかの判断、他の特許権に引っかからないような回避策の検討、新しいアイデアの情報収集ができます。使用するのは、特許庁のデータベース(IPDL)です。
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特許申請すべきかどうかの判断
まずそもそも特許申請すべきかどうか?似た特許が先に申請されていたり登録されていたら、特許を取ることよりもアイデアの再検討が必要です。そこでどのように調べて判断するかの手順を簡単にご紹介します。
1.特許庁のデータベースで「3.公報テキスト検索」を選択
まずはこちらのサイトをひらきます。つぎに「特許・実用新案検索」→「3.公報テキスト検索」を選びます。
2.公報種別で「公開特許公報」と「公開実用新案公報」を選択
「3.公報テキスト検索」を選ぶと、以下の画面がでます。そしてチェックボックスの「公報種別」で、「公開特許公報」と「公開実用新案公報」を選びます。
このとき「出願人/権利者」の欄にライバル会社を入れて検索をすると、ライバル会社が申請した特許の一覧が出ます。ここでは「フェイブック」と入れて検索しました。するとヒット件数が38件でした。つまりフェイスブックが過去に申請した特許のうち38件が公開されていることになります。なおその他の検索キーワードの選び方はいろいろありますがここでは省略します。
3. ヒットした特許公開公報を確認
検索後に「一覧表示」ボタンを押すと、下記の画面が表示されます。ここに表示された特許は、申請後1年半を過ぎたものです。だから既に登録された特許、まだ登録されていない特許、登録できなかった特許がごちゃまぜになっています(正確には、登録されたものだけを”特許”といいます)。
だからこの検索結果の有効な活用方法は、オープンされた技術にどんなものがあるか?を調べることです。そしてこの情報から、特許申請すべきかどうかの判断ができます。そしてもし似た先行技術があれば、それを上回る(進歩する)アイデアを検討することをお勧めします。
他の特許権に引っかからないような回避策の検討
さきほどは申請後1年半を過ぎた特許を調べました。それはあくまでも特許申請すべきかどうかのためです。一方、はじめから特許申請しないと決めていたとしても、既に誰かに特許をとられているリスクがあります。したがってこのリスクを回避するために、考えたアイデアに似た特許が先に登録されていないか調べるべきです。そこでどのように調べて判断するかの手順を簡単にご紹介します。
1.特許庁のデータベースで「3.公報テキスト検索」を選択
これは先ほどと同じです。こちらのサイトをひらき、「特許・実用新案検索」→「3.公報テキスト検索」を選びます。
2.公報種別で「特許公報」と「実用新案公報」を選択
ここではチェックボックスの「公報種別」で「特許公報」と「実用新案公報」を選びます。これにより登録されたもののみを表示できます。
ここでも「フェイブック」と入れて検索しました。するとヒット件数が14件でした。つまりフェイスブックが過去に申請して登録された特許が14件あることになります。そして「一覧表示」をして、考えたアイデアに似た特許が登録されていないか調べます。
3. ヒットした特許公報の「特許請求の範囲」を確認
どうやって考えたアイデアに似ているかいないかを調べるかというと、特許公報の「特許請求の範囲」というところを確認します。「特許請求の範囲」とは、登録されたアイデアの内容です。つまり「特許請求の範囲」に書いていることと異なれば、特許に引っかかっていないことになります。
しかし「特許請求の範囲」は独特な表現法で書かれています。そして似ている似ていないの判断は、「特許請求の範囲」の文章単位・単語単位で検討します。したがって安易に似ていないと判断するのは危険なのでくれぐれもご注意ください。経験がないと読解力のある人でも解読するのは難しいでしょう。
新しいアイデアの情報収集
第1フェーズのステップ①「調査・検討」でやるべきことのメインは、上に書いた「特許申請すべきかどうかの判断」と「他の特許権に引っかからないような回避策の検討」です。しかし公開されている特許の中には、まだ世の中にリリースされていない商品のアイデアもあります。つまり特許庁のデータベースは、他人のアイデアを最も早く知ることができる有効なツールと考えられます。そのため新しいアイデアの情報収集として活用できます。
具体的には公開されている特許の内容を読むのが新しいアイデアの情報収集になりますが、なれていないと特許文献を読むのも骨が折れます。そこでまずは公開されている内容のうち、その特許が解決しようとしている課題はなにか?を調べると、アイデアの種を得られる可能性があります。
特許には必ず解決すべき課題があります。上の文章でいえば、最後の方に書かれている部分「従って、・・・を供給する機構を提供することは有益である。」がこの特許が解決すべき課題といえそうです。そして逆に言えば、解決すべき課題が同じでも、その課題をクリアする手段(技術的ロジック)が異なれば、その特許に引っかかっていないし、さらに新しいアイデアとして特許がとれます。
≪まとめ≫
特許の調査・検討は、特許を申請するためにやるだけでなく、リリースしようとしているアイデアが他人の特許に引っかかっていないかどうか?、他社がどんな新しいアイデアで特許を取ろうとしているのか?、他社が特許を申請してまで解決すべき課題はなにか?、自社に活用できるアイデアはないか?などを判断するために有効活用できます。特許庁のデータベースはアイデアの宝石箱といっても言い過ぎではありません。
2014年1月22日
著者 ゆうすけ
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