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特許料等の見直しが中小・ベンチャー・スタートアップの支援になるか?

公開日: : 最終更新日:2014/11/15 特許, 特許トレンド ,

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photo credit: Mathieu Thouvenin via photopin cc

10月15日に行われた政府の閣議にて、経済の成長戦略のために企業の競争力を高めることを目指す「産業競争力強化法案」が決定し、臨時国会に提出されました。

その中には「特許料等の特例」という項目もあり、特許庁長官に対して特許料や出願審査請求の手数料を見直す要求が書かれています(第七十五条関係)。

そこで今回決定した産業競争力強化法案による特許料等の見直しが中小・ベンチャー・スタートアップの支援につながるかどうか考えてみました

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・従来からあった制度だが。。。

今回の見直し項目は以下の3つです。

1.特許料の軽減、免除、支払の猶予
2.出願審査請求の手数料の軽減、免除
3.国際出願の手数料の軽減、免除

簡単にいうと、ある条件を満たせば特許料や出願審査請求の手数料や国際出願の手数料を安くしたり免除したりするよ、というものです。

一方、従来からこのような制度はありました。しかしこの制度の利用件数は、全体の2.4%(6000件程度)のみ。中小企業などが利用するには、いわゆる「赤字企業」であることが必要で、条件が厳しかったため利用件数も少ない状況でした。

©特許庁「法人を対象とした審査請求料・特許料の軽減措置について」

©特許庁「特許料金の見直しについて」

 

 ・見直しのポイント

そこで今回の産業競争力強化法案による見直し内容について、以下のように報道されています。

「中小・ベンチャー向け国内外出願の料金減額は国内が従来の「2分の1」から「3分の1」に減免幅を拡充。・・・

・・・これまでの減免措置は・・・赤字企業に対する支援策の色が濃かった。

競争力強化法案で導入する新制度は、特許法で国内出願料の減免対象としていた中小企業・個人事業主のうち法人税が課されない「赤字企業」の適用要件を撤廃。その上で、従業員20人以下の小規模企業と個人事業主、設立10年未満の”スタートアップ”時期にある中小・ベンチャーの国内外出願に支援を集中する。

競争力強化法案について国は2017年度までの5年間を各施策を特例措置する集中実施期間に定めている。特許料減免などの特例制度については法案成立後、早急に政令を定めて14年度から運用開始。17年度までの特例措置とする見通し。」(引用:2013/10/16 中小企業ニュース 「特許庁、特許出願費用を減額-中小の革新後押し」)

ポイントは、「従業員20人以下の小規模企業と個人事業主、設立10年未満の”スタートアップ”時期にある中小・ベンチャー」が対象となったこと。今までの「赤字法人」という若干マイナス思考の救済制度を一変し、新しい取り組みをするスタートアップに支援の矛先を向けたことになります。

シリコンバレーようなスタートアップ特許戦略が産業競争力の強化につながると見こした制度設計と考えられます。

 ・利用率の向上には特許の担い手が必要

政府は特許制度の活用件数が増えれば産業競争力につながることを想定しており、今回の見直しはそこが狙いなはずです。実際、中小企業等が日本の産業の大多数を占めるにも関わらず、それらの利用率の底上げは簡単ではありません。

・・・30%強の中小企業が特許を取得しているものの、50%以上の中小企業が特許を取得したことがないとの調査結果がある。このように、中小企業が特許を取得していない原因は様々挙げられるが、同調査によれば、「知的財産に係る知識の不足」が50-60%、「人材や資金不足」が45-50%を占めており、全企業数の99%以上が中小企業であることに照らすと、特許権取得に対する潜在的なニーズは存在すると言える。(特許庁「特許料金の見直しについて」)

利用率が低い原因は、明らかに知識と人材の不足です。つまり自社に特許制度を理解できる人材がいない中小企業等に対して、特許料を安くすることで活用の機会を増やす配慮がほどこされています。しかし数万円料金を安くしたところで、難解な特許制度に取り組むとあっという間に工数が増えてしまうため、結局のところコストがかかってしまうのです。

≪まとめ≫

特許料等の値下げは表面的な対策に過ぎず、知的財産権に関して知識を持った人材を増やさない限り、知的財産権を活用した産業競争力の強化にはつながらないのではないでしょうか。そこで個人的にはスタートアップに対し、知的財産についてわかりやすく伝える担い手として活動していきたいと考えています。

2013年10月16日

著者 ゆうすけ

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