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「スタートアップ・バイブル」から学ぶ特許取得のメリットと実情

公開日: : 最終更新日:2014/11/15 おすすめ本, 特許, 特許戦略 , ,

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ビジネスにおいて特許はホコにもタテにもなります。そして実際に特許を活かした成功事例はたくさんあります。日本ならキャノンが有名。プリンターのインクやトナーで儲けるビジネスを特許で抑えています。

しかしスタートアップに大企業の特許戦略をそのまま置き換えるのは難しいと思います。なぜなら専門家に依頼すると、特許を取るまでに少なくとも50万円はかかるからです。しかも海外まで視野に入れると、さらに100万円以上かかります。

「スタートアップ・バイブル(アニス・ウッザマン 著)」ではシリコンバレーの成功事例とつかって特許のメリットをわかりやすく3つに分けて説明してあります。しかしそれが全て日本のスタートアップに当てはまるかといえば、ちょっと厳しいというのが私的な感想です。

そこで「スタートアップ・バイブル」から学ぶ特許のメリットと実情をまとめました。

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メリット1.小さな会社でも大きな会社に勝てる

小さな会社が大きな会社に勝つための必要条件(なくてはならないもの)の一つに特許が入るのは間違いないと思います。特許を取れればその技術を独占できるからです。

実際にアメリカでは、2011年8月にクラウド型TVサービスを提供しているActive video Networks(未上場会社)が、アメリカ第1位の携帯事業会社Verizon(…)を相手にインタラクティブ・サービスに関する特許訴訟を起こし、1億1500万ドルの賠償金を得ました。

特許を取得していれば、相手企業の大小にかかわらず、自らが発明したサービスやアイデアを守れます。結果として会社を守ることができるのです。(p132)

この事例を見ると、いとも簡単に賠償金をゲットできたように思えますが、裁判で勝つのはそんな簡単なものではありません。

わかりやすくいうと、仮に特許が「A+B+C+D+E」という構成だったとします。このうち裁判で勝てるのは、相手が「A+B+C+D+E」を真似している場合です(特許権の侵害)。相手が「A+B+C+D」や「A+B+C+D+F」だと、勝てません。

また大きい会社はマーケティング力があるため、特許にひっかかりそうでひっかからない商品を販売されたら、小さい会社はひとたまりもありません。すぐ大きい会社に市場を占拠されてしまうでしょう。

つまり小さな会社が大きな会社に勝つには、特許の構成をちゃんと考えて模倣品がひっかかりやすい“強い特許”にしないといけないのです。

ちなみに、痛くない注射針で有名な岡野工業の岡野氏は、特許取得は大きい会社と組むべきと言っています。岡野氏の考えは、大手企業に特許を譲るやり方です。これも特許で利益を得る一つのやり方です。

「僕は特許を大会社と一緒に取るわけ。注射針だったら発明者は岡野工業、特許出願はテルモさんと。それでいいの。そうするとさ、大会社ってのはさ、世界中に出張所なり、情報網があるでしょ。どこで真似したっていうのがすぐ分かるわけ。…」(引用:岡野雅行「利益を独り占めするな」)

メリット2.資金調達やエグジットにおいて有利となる

特許を武器にする一つの手段が、ライセンス契約です。つまりうちの特許使ってもいいけどお金ちょうだいね!ってやつです。また会社や事業を売るときも、その特許に価値があればその分高値で売れるはずです。

優れた特許を保有すれば、企業の魅力に直結します。特許を利用すればプロダクトの開発に役立てることができるだけでなく、ライセンス料による収益が見こまれ、他社からの特許訴訟を防ぐことにもつながるのです。

グーグルによるMotorola Mobility買収は、Motorolaが保有している特許の取得が買収の主な目的だったとまで言われています(…)。(p132)

しかし特許を取っただけで他社に買収されるほど甘くありません。はじめは自社でマーケティングして注目されなければ、特許の意味はほとんどないでしょう。日本にはまったく売れずにお蔵入りした「休眠特許」が沢山あります。

だから特許を取る価値があるアイデアかどうか、プロダクトの段階で探るべきです。たとえばユーザーの声を聞きながらピポッドし、然るべきタイミングで特許申請するとか。でもオープンにし過ぎると他社に真似される可能性もあるので注意が必要です。

ちなみに岡野氏は営業面でも特許は使えると言っています。

「営業しなくてもすむわけ。世界中が見てるわけ。俺の信用が上がるわけ。あいつはあそこの会社とも組んでんだな。あそこの会社とも組んでるんだなと、黙ってても分かるわけ」(引用:岡野雅行「利益を独り占めするな」)

メリット3.競合他社から自社のプロダクトを守る

特許を取って守れるのは申請した日から20年です。つまり特許をとっても永久に守れるわけではないということです。商品のライフサイクルは平均6~7年ですが、ウェブサービスやアプリはもっと短いかもしれません。

アマゾンを例に説明しましょう。アマゾンでクレジットカードや住所などの情報を入力すれば、以後はワンクリックで買い物できます。アマゾンはこの機能についての特許を取得しました。おかげで、クレジットカード情報の再入力の手間を省き、アマゾンで簡単に買い物できるようになったのです。・・・(p134)

アマゾンのワンクリック特許は、アメリカで1997年9月に特許申請されて、1999年に特許になりました。ビジネスモデルとしてすごく強い特許なので、他社にとっては驚異なはずです。

一方、日本ではどうなったかというと、2012年3月にようやく特許になりました。アメリカで申請してから14年後です。そしてこの特許はあと5年で切れてしまいます。アマゾンのように14年後に巨大なマーケットを獲得できればいいですが、特許を取る前に消滅してしまうスタートアップもあるのではないでしょうか。

国によって特許になるタイミングが異なるため、商品リリースのスケジューリングがとても大切です。

≪ピッタリナまとめ≫

今後スタートアップにとって特許の活用がますます大切になってくることは間違いありません。世界中の技術レベルが均衡し、画期的な技術革新が起き難いからです。そうなると似たり寄ったりの製品が増えてくるはずです。現に今でもスマホ業界では特許合戦が繰り広げられています。

無駄にコストをかけないで特許を有効に活用する一つの手段は、プロダクト⇔特許戦略⇔マーケティングをスパイラルに進めていくことだと想います。

2013年9月9日

著者 ゆうすけ

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