ルノーのブランド戦略に学ぶ 売上をアップさせるグレード名のつけ方
ルノー・ジャポンは、4代目『ルーテシア』のグレード名にブランドコンセプトを採用したニュースが報じられました。
自動車は、機能や仕様などスペックの違いでグレードが変わります。それはどの自動車メーカーも同じです。しかしルノーはグレード名でも他社との差別化を狙っています。
そこでルノーのブランド戦略に学ぶ 売上をアップさせるグレード名のつけ方を整理しました。
・ルノーのグレード名はブランド戦略の一部
今回のニュースで、4代目『ルーテシア』のグレード名は以下のように発表されました(グレードが高い順)。
・INTENS(インテンス)
・ZEN(ゼン)
・ACTIF(アクティフ)
これらのネーミングについて、プレスリリースでは以下のようにコメントしています。
「ACTIF(アクティフ)は“活動的な”。ルノーのブランドアイデンティティ“Human”とリンクさせ、活動的な人間性をイメージしています」とし、ZEN(ゼン)は、「“落着き”です。ルノーのブランドアイデンティティの“Reliable”から、信頼に基づく落着きをイメージしています」。最後のINTENS(インテンス)は「“激しい”で、“Enthusiastic”と結びつけ、“激しい情熱”をイメージしています」と説明した。(「【ルノー ルーテシア 新型発表】グレード名にブランドコンセプトを採用」より)
またルノーは2009年からはじめたブランド戦略についてこう述べています。
大極司代表取締役社長は「我々の一番大切な価値はデザイン。生活に存在する物で、デザインが好ましいものばかりなら、皆きっと幸せになれるだろうと感じている。その概念的なものを具現化するために打ち立てたのが、“FTS戦略”だ」とし、2009年の社長就任後からは商品やコミュニケーションなど全てのアクティビティを“FTS=フレンチタッチ、トレンディ、スポーツ”というキーワードの下に集約することで、ブランド力を高めていると述べた。(「【ルノー ルーテシア 新型発表】大極社長「一番の価値はデザイン。“FTS戦略”も実を結んでいる」」参照)
つまり車のデザイン性を最大限ユーザーに伝えるためには、グレード名にもネーミングをつけるべきと考えたのではないでしょうか。
ちなみに「ルーテシア」は日本での車名で、フランスでの車名は「ルノー・クリオ」です。ところが「クリオ」は本田技研の登録商標のため使えません。そこで日本用に改名していると思います。
・日本車のグレード名はありふれた記号や単語で表現
ところで日本の自動車メーカーが車のグレード名をどのようにつけているか調べたところ、多くがありふれた記号やレベルを意味する単語で表現しているようです。
たとえば一般的には以下のような記号が使われています。
GT=Grand Truism(グランツーリズム)
GL=Grand Luxury(グランドラグジュアリー)
R=Racing(レーシング)
S=Sport(スポーツ)
E=Elegant(エレガント)
また、スーパー、エクシード、デラックスなどレベルを表す単語で表現したりもします。
会社によって記号や単語の意味が違うようです。そして車種によって記号で表現したり、レベルを表す単語で表現したりしています。たとえば、スポーツカータイプは記号で表現し、ファミリーカータイプはレベルを表す単語で表現しています。
・グレード名がユーザーの購買心理にあたえる影響は大きい
1グレード違うと車のスペックがかわるため、価格も数十万~数百万円かわります。ユーザーにとって自動車は高価な買い物になるため、少しでも安く買いたいと思うのが本音のはずです。
しかし自動車会社としては、1つでも上のグレードを買ってもらえれば売上アップにつながります。そのときグレード名が無機質な記号で表現されていたら、ユーザーはどう思うでしょうか。おそらく単なるスペックの違いとしてしか見ないはずです。つまり購入後のライフスタイルをイメージできないと思います。
一方、グレード名をコトバにすることで、1グレードアップすることによるライフスタイルの違いをユーザーはイメージしやすくなります。つまりその違いに価値を感じてお金を余計に払うか払わないか選択できるわけです。
≪ピッタリナまとめ≫
ユーザーが商品を買った後の姿をイメージできるグレード名は、売上アップにつながりそうです。記号や単語だけだと無機質な感じがするため、ユーザーが選択しやすいネーミングにすることをオススメします。
2013年7月29日
著書 ゆうすけ
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