ダイソーvsダサソー 仁義なき商標の戦いin韓国の3つのポイント
ダイソー(大創産業)は、全国に2600店、海外28か国に進出している100円ショップの最王手です。韓国ではアソン産業と提携して、2001年にダイソーブランドを立ち上げました。今では860店舗ほど営業しており、ダイソーブランドは韓国内で認知されたようです。
そこでダイソーは韓国内の小売雑貨店ダサソーに、看板の文字が似ているから使うのやめさせたいとソウルの裁判所に仮処分の申請をしたところ、この申請がみとめられました。
日本を代表する企業が海外で立派に戦っている姿は、多くの中小企業に勇気をあたえるのではないでしょうか。そんなダイソーとダサソーの仁義なき商標の戦いについて、3つのポイントをわかりやすくお伝えします。
1.ハングル文字が似ているからダメ
引用:ダイソー(上)とダサソー(下)
ダイソーは、ハングル文字で「다이소(読み:ダイソー)」という商標登録を韓国内でしています。このためダイソーは、商標登録「다이소(読み:ダイソー)」と、ダサソーの看板「다사소(読み:ダサソー)」が似ているため、自分たちの権利を侵害しているよ、という主張をしました。
そしてソウルの裁判所は、それぞれの最初と最後の文字(「다」と「소」)が同じで、中央の文字(「이」と「사」)が似ているため、「다사소(読み:ダサソー)」は「다이소(読み:ダイソー)」に似ているね、と判断しました。これが今回のニュースの最大のポイントです。
たしかに「이」と「사」とでちがうのは、左部分だけです(右部分はほとんど同じ)。しかも看板では、ダサソーの「사」の左部分は丸みをおびています。このため両者が似ているという裁判所の判断もうなづけます。
2.言葉の意味の違いは認められなかった
「다사소(読み:ダサソー)」は、韓国語の方言で「全部買って」を意味します。一方、「ダイソー」は、大創産業の「大創」が由来であり、「大きくつくる」を意味します。
商標(ネーミング)で、言葉の意味は重要です。なぜならお客様は、言葉の意味も含めてお店を選んでいるからです。言葉の意味がお客様にとって心地よければ、その分来客数が増えるはずです。
そこでダサソーは、言葉の意味が違うから「다사소(読み:ダサソー)」と「다이소(読み:ダイソー)」は似ていないと反論しました。しかし言葉の見た目(外観)が似ていたら、原則として両者は似ていることになります。
ちなみに「ダサソー」は、日本語で誹謗中傷を表す「ダサそう」を意味しますが、「다사소(読み:ダサソー)」と「다이소(読み:ダイソー)」が似ているかどうかの判断には関係ないでしょう。
3.ダサソ―は裁判所の判断に納得していない
引用:ダサソーの商標出願の公開文書
ダサソーは今回の裁判所の判断に対し、ダイソーとは扱っている商品がちがうため、ダイソーの商標権を侵害していないと反論しています。つまりダサソーが販売しているのは生活用品全般で、ダイソーが販売している低価格商品とはちがうため、ダイソーの商標権とはバッティングしていないでしょ、という言い分です。
たしかに商標は商品とセットで登録するため、ダイソーが商標登録している商品とちがう商品をダサソーが売っていれば商標権にバッティングしませんが、価格は一切関係ありません。したがってこの言い分は厳しいでしょう。
ちなみにダサソーは、自社の看板を商標登録しようとしていました。この申請をみとめるかどうかは韓国の特許庁の判断ですが、もしダサソーの商標登録がみとめられれば、今回の裁判所の判断はひっくり返るかもしれません。
まとめ
アルファベットより現地語のほうが言葉の意味が伝わるため、現地の人々にとってわかりやすいはずです。もしダイソーがハングル文字で「다이소(読み:ダイソー)」を商標登録していなければ、「다사소(読み:ダサソー)」に対して文句はいえませんでした。したがって海外では現地語に翻訳した商標を登録しておくことをオススメします。
ちなみに仮処分とは、権利をもっている人に、この権利の力をつかってもいいよ、というお許しを仮にあたえるものです。つまりダイソーは、「다이소(読み:ダイソー)」を独り占めできる権利をもっているけど、この権利の力をつかえるのはあくまでも仮で、「다사소(読み:ダサソー)」をつかわせないようにできるのは一時的にすぎません。
したがって今後行われる裁判の結果次第で、「다사소(読み:ダサソー)」を本当につかえなくさせることができるかどうかが決まります。なお仮処分の間、ダサソーは看板にシールをはって「다사소(読み:ダサソー)」を見えなくするなどの応急措置をするのではないでしょうか。
2013年4月4日 著者 ゆうすけ
<参考サイト>
ダイソーに激似で商標使用差し止め その名は・・・(13/04/02) ⇒ http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=EygOo0b_CIU#!
※2013年10月29日削除
「海外で日本の店名(看板)が真似される3つの理由」 ⇒ https://namingpress.com/?p=3015
<追記> ※2013年10月29日
ソウル地裁は29日にダイソーの訴えを退ける判決を出しました。つまりダイソーの負けです。仮処分申請しただけに痛い判決です。
裁判所は、見え方(外観)が似ていることより、読み方(称呼)と意味(観念)が異なることを重んじたわけです。
参考=「ダサソー」使用OK=ダイソー商標権侵害せず―韓国 時事通信 10月29日 ※2014/6/22リンク切れ確認のため削除
<追記> ※2014年6月22日
ソウル高裁は一審判決を取り消しまし、ダサソーに対して商標の使用を禁じると共に、約2億3千万ウォン(約2300万円)の支払いを命じる判決を下しました。つまり「ダサソーの商標の外見や呼称などを総合的に観察すると(ダイソーと)混同する懸念があり、類似しているとみるべき」と判断したことになります。
参考:2014/6/20 サンスポ「韓国の雑貨店「ダサソー」 ソウル高裁が商標使用を禁止の判決」 ※2015/10/20リンク切れ確認のため削除
<追記> ※2015年10月20日
なんと、大法院(最高裁)が10月15日に、ダサソー側の上告を棄却し、「ダイソー」の標章が「ダイソー」の登録商標と類似している判断し、原審を確定させたようです。これでダサソー側は「ダサソー」のネーミングやロゴを使えなくなるため、名称の変更や看板の付け替えなどせざるを得なくなります。
参考:2015/10/20 「「ダイソー」の逆転勝訴が確定 韓国「ダサソー」は類似商標 “パクリ”韓国企業に賠償金」by 産経ニュース
<追記> ※2017年2月28日
2015年に敗訴が確定したにもかかわらず、「ダサソー 」を使用していたため、今度は罰金刑が言い渡されたようです。
参考:2017/2/26 「「ダサソー」経営者に罰金刑50万円 韓国地裁 ダイソー類似商標で営業続け起訴」by 産経ニュース
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