「愛されるアイデアのつくり方(鹿毛康司著)」から学んだ大切な3つのこと
ネーミングや商標登録の戦略立案もアイデアそのものです。売れるネーミング、売れるネーミングのつくり方、ネーミングと商標登録の関係、商標登録のタイミング、商標登録の仕方など、気づくと考えている自分がいます。
この本は、アイデアの情報収集をインターネットでしているときに、偶然(必然?)出会ったものです。「愛されるアイデアのつくり方」というタイトルにひかれて迷うことなくアマゾンで購入しました。そんな本から学んだ大切な3つのことをまとめました。
1.想いをストレートに伝えること
引用:エステー宣伝部ドットコム
著者の鹿毛康司氏は、2000年に起きた「雪印事件」で被害者やマスコミの対応をした元雪印社員。2003年にエステー入社後、過去の辛い経験を活かして宣伝部長として次々とヒットCMを制作していました。
ところが2011年、東日本大震災が発生。多くの企業がCM放送を中止していた中、生活雑貨メーカーとしてできることは何かをかんがえていました。偽善ではなく被災地に心を寄せたCMづくりに苦悩した末、1755年にうけた津波の被害から復興したリスボンで、ミゲル少年と出会いました。そしてできあがったのがこのCMです。
商品説明もなにもないこのCMで、エステーは生活雑貨をつかえる「日常生活に戻ろう」というメッセージを伝えています。少年の純粋な歌声と「消臭力」という商品(ネーミング)が被災地の人々の心にストレートに届いた作品になりました。
2.「言葉」の限界を知ることの大切さ
決して才能豊かなわけではなく、むしろ泥臭く取り組む姿勢を大切にしている鹿毛氏の作品だからこそ、言葉では語り切れないものが心まで伝わってくるのではないでしょうか。本の中にも、「言葉」の限界についてこう書いてあります。
「言葉」には十分な注意が必要だ。なぜなら、「言葉」だけでは本当に伝えたいと思っている「空気」のようなものを伝えることができないからだ。それは、「言葉」の限界なのかもしれない。その限界を認識せずに「言葉」に頼ることによって、コミュニケーションはいとも簡単に壊れてしまうのだ(P170~171)。
しゃべることでのコミュニケーションばかりでなく、ビジネスでは電子メール・報告書・法的文書・契約書など読み書きすることでのコミュニケーションもかかせません。むしろ読み書きによるコミュニケーションのほうが重要な場面もあります。そういう意味でも「言葉」の限界を意識し、一言でうまく伝えきれない想いはどういう言葉を組み合わせれば伝わるかをちゃんと考えなければなりません。
3.「お客様の目線」が愛されるアイデアの原点
ときに、正しい情報を提供することがお客様に伝えること、と勘違いしてしまいがちです。その情報が本当にお客様のためになっているかどうかを考えなければなりません。お客様のためになっている情報とは、「お客様の目線」にあったもの。本の中では、「お客様の目線」についてこう書いてあります。
情報をもっているビジネスマンは、・・・「教える」という姿勢が出てしまう。その結果、伝えたいことが伝わらないばかりか、ときとして反感すら買ってしまうのだ。・・・自らの力で自らの「上から目線」に気づくことができるほど甘くない。そうならないためには、次の3つを常に意識する必要がある。
(1)お客様が何を考え何を思っているかを事実確認する
(2)その際に自分の目線の高さを修正しながら考える
(3)お客様に「教える」という姿勢でなく「気持ちよく伝える何か」を探し出す
(P116~117)
「上から目線」になる原因は、お客様の未来をみすえて語っていないからと考えます。ここでいうお客様の未来とは、違和感なく安心してつぎの一歩を選択できる状態。つまりお客様の未来をみすえず、その場しのぎの対応をしようとするから「上から目線」で説得してしまう。お客様の状態を知り、お客様と向き合うことが愛さるアイデアを生み出す原点ではないでしょうか。
まとめ
言葉をこえたコミュニケーションとお客様目線になることは、ワンセットで考えるべきです。どちらか一方だけでよいというものではありません。独りよがりにならず、つねにお客様が目の前にいるとイメージしながら考えることが、愛されるアイデアを生むきっかけになるでしょう。
最後に、あまりにもよかったので、ミゲル少年,西川貴教氏,島谷ひとみ氏がエステーのCMで熱唱している歌の歌詞を引用します。この歌は、著者の鹿毛氏が5歳のときに他界した父への想いも含まれているようです。ぜひ歌詞を見たうえで動画をご覧ください。
「力」 鹿毛康司+西島真紀(P232~233)
誰だって、うまくいないときもあるんだ
いつだって、あたたかい気持ちでいられたらいいね
あの空のくものように ふわふわになり、きみのいるところまで
ひとりぼっちじゃない きみがいるから
僕は笑い 僕は歌い 僕は叫ぶ
ただいるだけで きみがそこにいるだけで 力あふれ
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