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中小企業が新たな価値を生むには?知的財産活動はモノづくりプロデュースのカギ

公開日: : 商標, 弁理士, 弁理士キャリア, 意匠, 特許, 著作権

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『ハゲタカ』シリーズの最新作『スパイラル』を背景に、著者の真山氏が語る日本の中小企業の実態や未来像の記事が素晴らしかったのでシェアします。

やっぱり、モノづくりのプロデュースには知的財産活動(以下、「知財活動」)が柱の一つになると感じました。

photo credit: William Shatner at Loyal Studios “Star Trek” Behind the Scenes via photopin (license)

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モノづくりプロデュースに知財活動は欠かせない

真山氏が例に挙げるのは、アップル社の共同設立者スティーブ・ジョブズだ。彼の成功の本質は、その発明にあったのではなく、一見ばらばらの特許や技術を一つにまとめ上げて一つの製品を作り出すプロデューサーとしての力にあったとする。しかし、日本ではそうしたプロデューサーが生まれているとは言いがたい。

<引用:2015/724 「中小企業に未来はないのか?『ハゲタカ』真山仁氏が語る中小企業再生のカギ」 by THE PAGE>

真山氏が映像内で繰り返し言っていたのが、日本には中小企業の技術や特許を活かして別のモノをつくり出すプロデューサーがいない、ということ。プロデューサーがいない(プロデュース力が弱い)ことは前々からの課題ではありますが、あらためて真山氏が語ると、本当に切実だなと感じます。

技術や特許を理解し企業のマッチングも行う行政出身の人材がいるとはいえ、彼らはアレンジャーであって、プロデューサーではないことも危惧しています。モデルがジョブズだとハードル高く感じますが、要は既存の技術や特許を組み合わせたとしても、単なる寄せ集めではない新たな価値を提供する仕掛けを生み出すのが真のプロデューサーなわけですね。

ただ、新たな価値になるかどうかは、商品のニーズ、マーケットの構築、ブランドの創作、知財の保護、将来の見通し(出口戦略)、財源の確保などにかかってきます。そして、ジョブズ率いるアップル社の活動からもわかるとおり、知財の保護だけじゃなく、取得した特許の活用など、知財活動はモノづくりプロデュースの柱になるはずです。

そこで、モノづくりプロデュースにおいて、知的財産活動にはどういうことが必要かを5項目に分けて整理しました。 

価値ある権利を取るための支援

今の時代に大切なのは、特許や商標や意匠を登録する価値があるモノやサービスを創造することです。登録できなかったり、登録する価値が見い出せないモノというのは、逆に言うともはやライバルがたくさんいるということになるでしょう。

当然、特許や商標や意匠がとれたからといって、売れるわけではありません。しかし取れたら、客観的にライバルと差別化できるポイントが生まれるわけです。そのポイントが、お客さまの求めていたものになるよう、モノづくりをするべきだし、独占権をとるべきです。

また登録すべき価値があっても、登録できるスキルや勘がないと、せっかくのアイデアも台無しです。このようなスキルや勘は、実際に特許や商標や意匠の権利を取るために幅広く経験すれば養えるはずです。 そしてこういった知識をもった人材をモノづくりの開発段階から加えることで、価値あるモノの創造のみならず、後々のトラブル回避にもつながるのです。

権利トラブルを回避するための活動

事業を継続させるためには、①入るお金を増やすこと、②出るお金を減らすこと、③トラブル対策をすること、の3つと考えています。このうち、③トラブル対策をすることの中には、自分の権利が陳腐化しない対策や他人の権利を侵害しない対策を含めるべきです。

経営者はどうしても①や②に頭が行ってしまいます。またトラブルといえば、天災や人事問題などに気が向きがちです。しかしこれらトラブルが発生する確率と、他人の権利を侵害する確率とを比べたら、大差はないはずです。だから同じようにケアすべきです。

トラブルを回避するには、市場を定期的にウォッチすることをオススメします。どこで誰がパクッてるか、自分がいつ地雷を踏んだか、わからないからです。特に商標は、パクられると一般名称になってしまうリスクがあります。

実になるライセンス契約を結ぶための活動

ライセンス契約とは、自分の特許や商標の権利を他人に貸して収入を得たり、逆に他人の特許や商標を借りて事業に役立てたりするためのものです。どこに自分の権利を欲している人がいるか?またどこに自分がほしい権利が眠っているか?を探すのは簡単なことではありません。

知的財産権のマッチングは、広く一般に公募するやり方もあれば、非公開で探すやり方もあります。富士通や日産では、自社が持つ特許を貸し出す活動を公開して行っています。貸すにしても借りるにしても、理想のマッチングを実現するため積極的に外部に情報発信することは大切です。

開発資金が少ない中小・ベンチャー企業、スタートアップにとって、すでに守られた技術を購入できることは、事業化を早める効果があります。大手企業のお墨付きがあればなおさらです。しかし権利の内容をちゃんと確認しなければなりません。特に特許は請求項の書き方によって、範囲が狭すぎて意味のない権利になりかねないからです。

予算配分や資金繰りのための活動

結局ここに尽きるます。知的財産権のデメリットはお金がかかることです。それも目に見えないものだから、投資した分の効果もわかりにくいわけです。当然、資金投入する優先順位は下がります。これは仕方ありません。

では少ない予算でどうやって効率的に知的財産戦略を進めていくか?は、経営者だけでは考えられないはずです。申請から登録まで、商標なら半年、特許なら約4年と、中長期ビジョンで検討しなければならないからです。当然、事業化の準備は同時進行なわけです。しっかりと計画的に予算配分しないと、大変なことになります。

また現在は国レベルで知的財産戦略を支援しているため、条件さえクリアできれば活用しがいのある助成金制度もあるし、民間のクラウドファンディングも多数存在します。こういった情報にもキャッチアップでき、かつ予算に見えった知的財産プロジェクトを推進できる支援が必要です。

知的財産スキルを伝授する人材育成のための活動

この分野に人材を常任できる会社は、それなりの収益がある会社であって、そう多くはありません。ほとんどの中小企業は、経営者・取締役・部長・総務部担当などが、知的財産の業務を兼任しています。

そういった会社には知的財産の戦略が必要ないから人材育成する必要はない!とは到底思えません。先にも書きましたが、価値あるモノづくりをするには、知的財産について検討すべきだからです。

会社で必要な知的財産スキルと、弁理士や特許事務所で必要な知的財産スキルは別物です。会社にとっては、先に書いたようなスキルが必要です。特許庁に提出する書類が作れなくても、内容さえ知っていればいいのです。そういった会社に必要なスキルを伝授できるのは、会社組織の一員として働いたことのある人材のほうが適しているかもしれません。 

≪まとめ≫

ジョブズのようなモノづくりのプロデューサーが不在なら、複数人で一つの製品をプロデュースするのもありではないでしょうか。その際、知財の専門家は知財活動をプロデュースする担い手として参加できれば、中小企業に貢献できるんじゃないかなって思います。

2015年7月25日

著者 ゆうすけ 

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