資本金10億円未満の企業の67.5%が特許活動を実施!(2013年度文部科学省調べ)
なかなか興味深いデータが公開されたのでさっそく拝見。民間企業の研究活動に対する実態調査の中に、知的財産活動も含まれているので、気になった部分を整理して考察します。
まずは特許出願についてです。なお以下が研究概要です。以下、「民間企業の研究活動に関する調査報告2013(2014年9月 文部科学省 科学技術・学術政策研究所 第2研究グループ )」を引用します。
今年度(2013年度)の調査では、資本金1億円以上で研究開発を行っている3,426社(回答企業1,628社)を対象とし、研究開発支出額や研究開発者数、研究開発活動の成果としての特許やノウハウの創出・管理の状況、主力製品・サービス分野の研究開発、他組織との連携や先端的研究施設・設備の利用状況について調査した。
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資本金10億円未満の企業の67.5%が特許活動実施
全体でみた場合、研究開発を行っている企業において、79.7%が特許について、13.3%が実用新案について、26.8%が意匠について、・・・知的財産活動を実施していることがわかる。
・・・
知的財産活動を実施していない企業の割合が比較的高い業種としては、情報サービス業(33.9%)・・・が挙げられる。
・・・
特許については 10 億円未満の企業でも 67.5%の企業が活動を実施しているという事実は、研究開発を行う企業にとって、事業活動を行う上で特許の重要性が非常に高いことを表している。(p56)
特許活動をしている企業の割合が全体の79.7%というのは納得です。一方、意匠登録活動をしている企業の割合が26.8%というのは意外でした。最近ではモノの外形のみならず、スマホの操作画面などのデザイン性が注目されており、これらはすべて意匠登録の対象です。
しかし特許と意匠登録で大きく違うのは、権利範囲(守備範囲)です。意匠登録は特許より守備範囲が狭いんです。そのため権利取得の目的も、自社で安全に実施するためかデッドコピー対策かに限られる傾向にあります。だから意匠登録活動の割合はまだ小さいと想定できます。
情報サービス業の33.9%がまだ知的財産活動をしていないというのも想像できます。まず情報サービスの概念が広い。いわゆるビジネスモデル特許がないかぎり、特許出願は厳しいでしょう。また情報サービス時代の歴史も浅いため、まだ特許出願するに至っていない企業の割合が多いのではないでしょうか。
<参考>今さら聞けないビジネスモデル特許の意味、ビジネスモデル特許の登録率は53%(2012年度特許庁調べ)
そうはいっても10 億円未満の企業の 67.5%が特許活動を実施しており、その重要性を認識しているところが多いと言えそうです。
資本金1~10億円企業は特許出願に平均207万円投資
これも面白いデータですね。他の会社ではいったいどれくらい特許出願に金使っているんだ?と経営者だったら知りたい情報ではないでしょうか。
特許出願費用を1件30万円(外注費+特許印紙代)とすると、年間約7件となります。会社の資本力、技術力、ビジョン、人材の有無などによるため、207万円が多いか少ないかの判断は難しいところですが、1~2ケ月に1件特許出願するペースは悪くはないでしょう。
特許網の構築や従業員のモチベーションアップのために特許出願を継続的にすることが、また会社の基礎体力をつける活動につながるはずです。
特許出願の増減に国の特許制度の影響は小さい
「特許侵害訴訟では特許権者に不利であること/特許侵害訴訟では特許権者に有利になってきたこと」、「特許審査に時間がかかりすぎること/特許審査が迅速化されたこと」、「特許査定を受けるのが困難であること/特許査定を受けやすくなったこと」を特許出願の増加・減少の理由として挙げた企業はごくわずかである。したがって、こうした制度的要因が特許出願数の増加・減少に及ぼす影響は小さいことがわかる。(p63)
このデータをみたら、法改正に携わっている特許庁の方々や弁理士の先生たちは残念がるかもしれません。中には、特許出願や無効審判などの案件数の増加を目的として制度設計されたものもあるんじゃないでしょうか。
でも料金に関することが含まれていないようなので、これについては増減に少なからず影響していると想定できます。どうやら2015年から特許料の値下げ(最大1割)が予定されているようなので(2014/11/16日経新聞参照)、これが特許活動の活性化につながるかどうかの効果測定をしたいところですね。
≪まとめ≫
統計から自社の知的財産活動を検討するのも大切です。それに準じて予算立てて目標設定して経過を見ることから知的財産活動をはじめるのもありではないでしょうか。
2014年11月17日
著者 ゆうすけ
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