特許の寿命は3年?迂回発明に負けないバージョンアップ特許戦略フレームワーク
「民間企業の研究活動に関する調査報告2013」の考察の続きです。
資料によると、特許の寿命、つまり特許が独占権を発揮し続けられる期間は3年弱というデータが出ていました。これはどういうことか?そしてもしこれが事実ならどういう対策をとるべきか?を考えてみました。
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特許の寿命が3年という理由
競合他社が迂回発明を特許出願するまでの期間の平均値をまとめたものである。競合他社が迂回発明を特許出願するまでの期間については、全体平均で 35.5 箇月である。したがって、特許出願した技術が独占権を発揮し続けられる期間は 3 年弱ということになる。この期間は特許権の有効期間が最大で 20 年であることと比較してかなり短い。すなわち、1 つの特許で技術を独占し続けることが非常に難しいことがわかる。(p66)
特許は、出願した日からMAX20年生きられます。でも商品のライフサイクルや時代の流れを考えると、20年間生きつづけて利益をもたらしてくれる特許は極一部です。身近な例でいえば、医薬品とか。
特許は、出願して1年半で内容が公開されます。特許をとるには、そのアイデアをさらけださないといけないんです。なんでいかっていうと、同じ特許を知らずに出さないようにするためや、技術の進歩にそのアイデアを役立てるためです。
そしてライバル会社に特許を発見されると、その特許に引っかからないようなモノづくり(迂回発明)をします。迂回発明ができるまで1.5年と考えれば、特許の寿命が3年弱というロジックも理解はできます。
迂回発明に負けないバージョンアップ特許戦略フレームワーク
こんなデータ見たら、特許出しても意味ないじゃん!と思うかもしれませんね。たしかに、たった1つの特許だけでライバルに負けないか?儲かるか?というと、それは厳しいでしょう。
特許はモノづくりの過程に過ぎません。技術力で勝負する会社なら、製品のバージョンアップの開発は継続されるはずです。それと並行して、特許も出しつづけなければ競争力を確保するのは難しいわけです。
ではどのタイミングでバージョンアップの特許を出せばいいかといえば、特許の寿命が実質的に切れる3年が経つ前に出すのが理想的と考えられます。
このとき、バージョン1は自社が使うための特許(自社実施)で、バージョン2や3は他社に使わせない(特許とらせない)ための特許(防衛出願)でもOKです。
バージョンアップなど改良発明のタイミングはいろいろあるでしょうが、大事なことは継続して特許を出すということです。
≪まとめ≫
特許には、ライバル会社に好き勝手させない、というメリットがあります。つまりライバル会社としては特許がジャマで製品開発をスムーズに行えず、商品リリースを遅らせたり断念させたりすることができるわけです。そのような間接的な利益を継続して得るには、バージョンアップの特許を時間差で出すと効果的です。
2014年11月17日
著者 ゆうすけ
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