デザインプロダクトをテストマーケティングした後に意匠登録するための注意点
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意匠
デザイナーがデザインプロダクトを開発したら、テストマーケティングしてユーザの反応を見るのはいいことです。そのテストの内容次第で、大量生産前にデザイン変更できるからです。
ところがそのプロダクトのデザインを意匠登録する場合、テストマーケティングが原因で登録できないリスクもあり、注意が必要です。
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デザインの最適化にはテストマーケティングが有効
Increments取締役・創業者兼デザイナーの小西智也氏は、デザインを最適化するにはまずユーザに聞いてみると述べています。
会場から:デザインって時間があればあるだけ最適化が可能なものだと思います。ですが、スタートアップは時間との勝負。時間が限られている中で、デザイナーは最適化とのバランスをどのようにとっていくべきなのでしょうか?
小西氏:私はデザインに迷ったらまず出してみて、そのプロダクトをユーザのところに行き、話を聞いてみますね。
<引用:THE BRIGE 2014/6/3「スタートアップにおけるデザイナーの存在意義とは?「Design dot BEENOS vol1」レポート #BEENOS」>
デザイナーにとって自分のプロダクトデザインがユーザにどう思われるのかはとても気になるでしょう。どう思われるか気にしないという人は、デザイナーではなく芸術家タイプかもしれません(笑)。
デザインされたプロダクトは人を感動させたり安らぎを与えたりすることができます。また機能美を追求したプロダクトなら、ユーザが困っている悩みを解決したり居住空間をよりよくしたりする効果があります。
しかしそれらはデザイナーの自己満足に過ぎないこともあります。独りよがりなデザインはユーザに受けず、売れない商品になってしまいます。それはデザイナーにとってつらい現実です。売れてはじめてそのデザインがユーザに評価されたと判断するのが妥当だからです。
テストマーケティング後に意匠登録するための注意点
先日、友人のプロダクトデザイナーから意匠登録について相談をうけました。オリジナルブランドのプロダクトを他の誰にも真似されたくないから守りたいというのです。しかしそのプロダクトは既に一般公開されてからだいぶ月日がたっていたため、意匠登録は厳しいという話しをしました。
意匠登録をするなら、一般公開する前に出願するのが基本です。一般公開すると、新規性がなくなってしまうからです。
<関連記事> 商標は一般公開した後でも登録できる。特許や意匠は公開した後では登録できない
しかしテストマーケティングなど商品の売れ行きを見るのはビジネスにとって大切なことです。そのため一般公開したら意匠登録できないとガチガチに決めてしまうと、デザイナーには酷だし、産業の発展にもなりません。
そこでテストマーケティングした日から6ヶ月以内に意匠登録出願+それに関する手続をすれば、テストマーケティングによって新規性を失ったことを例外として扱ってくれる制度があります(新規性喪失の例外)。
そしてこの制度を適用するには、テストマーケティングでプロダクトデザインを一般公開した日や場所をちゃんと証明できなければなりません。しかもこの証明は、第三者にしてもらったほうがいいんです。
たとえば個人的に展示会を開いた場合、その展示会会場でデザインプロダクトを一般公開したことを、その会場の管理会社などに証明してもらいます。またネットで限定販売した場合、その公開した販売サイトの管理人に証明してもらうといいです。
このように第三者に一般公開したことを証明してもらうと、その事実の立証能力が高まります。だから意匠登録後に、その意匠登録は一般公開してたから登録は無効だ!なんていういちゃもんにも対抗できるでしょう。
≪まとめ≫
テストマーケティングはプロダクトデザイン開発にとって有効な手段です。テストした結果よりよいデザインになったため、商品の売れ行きがのびるかもしれないからです。でも売れてしまったため誰かに真似されはじめたときには意匠登録できないなんていうのは残念すぎます。だからテストマーケティングはこっそりやって一般公開した事実をちゃんと証明できることと、テストマーケティングした日から6ヶ月以内に意匠登録出願することを少なくとも忘れないでください。
2014年7月1日
著者 ゆうすけ
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