特許を一気に獲得!ダンロップも活用した「事業戦略対応まとめ審査」ってなに?
ゴルフクラブも特許になるんです!知らない人にとってはこれだけでもけっこうビックリするニュースではないでしょうか。そんなゴルフクラブやグッズで有名なダンロップが、一気に12件も特許をとりました。内訳としては、「スイング慣性モーメント」に関する特許を5件、ヘッド技術の特許を5件、シャフト技術の特許を2件です。
そして一気に特許がとれたのは、特許庁の「事業戦略対応まとめ審査」を活用したからのようなんです。ところで、この「事業戦略対応まとめ審査」っご存知ですか?
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特許になるまで一般的に時間がかかる
まったく戦略なしに特許出願すると、平均4~5年後に特許になります。なぜなら出願審査請求のタイミングや審査着手のタイミングが影響するからです。つまり出願審査請求と審査着手のタイミングを早くすれば、もっと早く特許になります。
このうち出願審査請求のタイミングは、本人の意思で早くも遅くもできます。もっとも早いタイミングは特許出願と同時、もっとも遅いタイミングは特許出願の日から3年後です。したがって自分の意思次第で3年の期間を短縮することができます。
一方、審査着手のタイミングは、本人の意思だけではどうにもなりません。早く審査してくれ!とお願いできる制度(早期審査)もありますが、一定の条件を満たさないと早く審査してくれません。なんでもかんでもお願いを聞いていたら、秩序が乱れてしまうからです。基本は、特許出願された順番に審査されます。
1つの製品には複数の特許が含まれている
ところが1つの製品に対して特許が1つとは限らず、複数の特許で1つの製品が成り立っていることもあります。とくに技術開発力のある企業では、研究開発した新しい技術(素材や形状や構造や機能)を複数盛り込んで1つの製品を完成させるため、特許もその分増えることになります。
そして全ての研究開発が同時に終了し、全ての技術について同時に特許出願できれば、出願審査請求も同時にできるし、審査着手も同時期に行われる可能性が高くなります。でも研究開発が予定通りに行くなんてそうはありません。成分の配合量をチューニングしたり、品質検査を繰り返したりするため、終了するタイミングもまちまちです。だから特許出願も五月雨式にされることが多々あります。
また特許庁では技術分野毎に審査チームを分けています。商品の素材の新技術と構造の新技術では、審査するチームも人がちがうんです。だからますます審査着手のタイミングがよめないため、特許になるタイミングもわかりません。
そうはいっても審査着手のタイミングがバラバラで、特許になるのが早かったり遅かったりすると、製品化や権利行使のタイミングに影響することもあります。そのため新技術を包含した製品を売り出す企業にとって、特許になるタイミングはとても重要です。
まとめ審査をするには条件がある
そこで特許庁では一定の条件を満たす複数の特許出願に対して、「事業戦略対応まとめ審査」というものを2013年からはじめました。一定の条件をざっくりいうと以下です。
- 審査着手前の出願であること
- どれも同じ出願人(企業)であること
- 出願した複数の特許のうち、少なくとも1件は、外国にも出願しているか、2年以内に製品化の予定があること
- 新規な事業や国際展開を見据えた特許出願であること
<参考> 事業戦略対応まとめ審査の開始について(特許庁)
≪まとめ≫
特許はたくさん持っているほど、手持ちのカードが増えるため心強いです。当然、強いカードもあれば弱いカードもあるでしょうが、持っていることで選択肢が増える点が強みです。そのため新技術がたくさんあるなら、まとめ審査を活用する価値があるでしょう。
<参考> 「事業戦略対応まとめ審査」によってゴルフクラブに関する特許12件を取得(ダンロップ)
2014年6月27日
著者 ゆうすけ
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