弁理士の働き方 「総合病院型」の特許事務所と「町医者型」の特許事務所の比較
昔は先生とちやほやされてきた弁理士の働き方も変わりつつあります。そしてどうやら特許事務所のあり方も見直されるようです。特に国としては「総合病院型」の特許事務所の増加を狙っているようですが、「町医者型」の特許事務所のニーズも増えると個人的には考えています。
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特許事務所の大規模化を後押しするため、特許庁が規制緩和に乗り出す方針を固めたことが1日、分かった。利害が対立する依頼者の案件を取り扱うことを禁じる規定が厳しいため、弁理士が別の特許事務所に移ることが難しかった。これが大規模化を妨げているという指摘があるため、制約を緩める。専門性を持つ弁理士を多数集めた「総合病院型」の特許事務所の増加を促し、安倍晋三政権の成長戦略の一つである「知的財産立国」の実現につなげる狙いだ(引用:2014/3/2 産経新聞「特許庁、規制緩和で特許事務所大規模化へ 「知的財産立国」を後押し」)。
説明がむずかいしので簡単にいうと、今までは、A社が受注していた業界Bの案件Cにはノータッチだった弁理士Dが、A社をやめてE社に転職しても業界Bの案件Fには関われない、という状況でした。なぜなら業界Bの案件Cにノータッチだったとしても、同業界の案件Fにとっては有利になってアンフェアだからです。でもそれだと弁理士が他社に転職しにくく、ひいては特許業界の発展に悪影響だから、もうちょっとルールをゆるめよう、というのが規制緩和の狙いのようです。
弁理士を大きく分けると、特許専門の弁理士、商標登録専門の弁理士、意匠登録専門の弁理士、の3パターンです。また特許専門の弁理士を大きく分けると、機械に強い弁理士、電気に強い弁理士、化学に強い弁理士、の3パターンです。このようなパターンの弁理士を沢山集めたのが、「総合病院型」の特許事務所です。そして今のままの規制では、「総合病院型」の特許事務所にしにくいわけです。
「総合病院型」の特許事務所のメリットは、大量の案件をさばけることです。つまり弁理士が沢山いるので、突発的な案件増にも対応できます。デメリットは、弁理士一人ひとりの守備範囲が狭いため、たらい回しにされるリスクがあります。つまりザックリとした質問に対して適した診断を素早くできるかというと、疑問です。
しかし平成24年の段階で、全体の7割くらいが弁理士一人の「町医者型」の特許事務所です(参考:「特許事務所・特許業務法人の在り方について(2)」)。「町医者型」の特許事務所のメリットは、ザックリとした質問に対して丁寧に対応してくれるところです。つまり「総合病院型」の特許事務所にいる弁理士よりも守備範囲は広いでしょう。逆にデメリットは、突発的な案件増や大型案件には対応しきれない点です。
≪まとめ≫
将来的に「総合病院型」の特許事務所が増加する一方、「町医者型」の特許事務所が減るならば、「町医者型」の特許事務所の希少価値が高まると予想しています。今後ますますスタートアップやIT事業が増加するから、アイデア保護の相談案件も増えるはずです。さらに小さなアイデアをブランドに育てる支援の需要も高まるでしょう。そういう時代背景の中で、弁理士としてどう働くかをちゃんと考えていくべきです。
2014年3月3日
著者 ゆうすけ
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