ダイレクトマーケティングのシュガーマンも語る特許・商標・著作権の重要性
米国のダイレクトマーケティングで世界的な成功を収めたシュガーマン。売り上げを左右するのは言葉の力であり、表現や説明の仕方や重要なポイントを工夫することで成果が上がるといっています。
そんなシュガーマンの著書「シュガーマンのマーケティング成功事例大全 1」の中で、特許・商標・著作権の重要性が語られています。成功者にしか見えない景色があり、そこではこれらの権利が有効に活きるようです。
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特許は出願(申請)することに意義がある
大企業のように年間で数百~数千件の特許を申請するならまだしも、1件そこら出したからってどうってことないと思われている方も多いでしょう。それは決して間違っていません。たった1件の特許では、権利の範囲が狭いので、効力は弱いです。そのためシュガーマンは、特許は出願(申請)することにメリットがあると唱えています。
しかし 、“特許出願中”という言葉や商品の特許番号を付けていることは、いずれにしても効果的だ 。あなたの商品をコピーするかどうか、もう 一度考えてみようと競争相手に思わせられるからだ。(p72)
“特許出願中”という表示は、申請すればつけられます。たったそれだけでも大きな効果は確かにあります。というのも、ぼくはお客様からある発明について特許が取られていないか調べてほしいと頼まれたら、“特許出願中”のものまで調べることをおすすめしています。なぜなら、特許になるかもしれないからです。
そしてもし“特許出願中”の中で、お客様が考えた発明に似ているものがあれば、将来的に特許権を侵害するリスクがあるので設計の変更や商品化の断念に追い込まれるわけです。つまり“特許の効力”という小さな網をしかけるのではなく、“特許出願中”という大きな網をしかけておくことに意義があります。
商標登録の3つの意義
シュガーマンは言葉の力を重要視しているため、商標登録をとても重んじています。そこでシュガーマンによる商標登録の3つの意義をまとめました。
商標で領域を確保する
「がっちりマンデー」で経済アナリストの森本卓郎さんも言っていましたが、ある商標を検索すると自社の商品全てが表示される状態は、他社にとって大きな脅威です。
自分の商品をとりわけ強力に守ってくれるものの1つが商標だ。あなたの商品に名前を付けて特許商標庁に出願したとしよう。そのタイプの商品を持ち込んだのはあなたが初めてで、かつ商品名が良ければ、商品カテゴリー全体があなたの商品名と同一視されるようになるだろう。(p74)
商標登録は、商標(ネーミングやロゴ)とカテゴリー(商品やサービス)をセットで登録します。そのため守りたいカテゴリーがあればそれを追加する必要があります。追加すればするほど守れるカテゴリーが増え、領域が確保されます。
早い者勝ち
商標は特許と違い、公開後でも登録できます。つまり公開した自社の商標を誰かに先取り登録されるリスクがあります。
ある名前を使用する場合、事前に注意すべき点がいくつかある。まず、自分が最も付けたいと思う名を登録すること。それから、あなたの商品名と混同されそうなのに他社が登録してしまう可能性のある名前をいくつか考え、それらを登録するか、名前の権利を確保しよう 。これは“ネーム・ブロッキング”と呼ばれている。(p77)
ひとたびあなたの商品が評判になり、国際的に通用するとわかったら、できるだけ早く海外で商品名の登録を始めよう。我々は地球規模の経済活動を営んでいる。自由世界全体に強い力を持つ商標があるなら 、 それを保護しなければあなたの成功を真似しようとする誰かに間違いなく奪われてしまう。(p75)
特許も商標も著作権も、国ごとに取らなければなりません。つまりアメリカ国内で真似する誰かを取り締まるなら、アメリカで権利を取得しなければならないのです。先日、マイクロソフトが「SkyDrive」を改名しましたが、ネットビジネスをしているコンテンツオーナーや社長は要注意です。
商標登録の管理も重要
商標登録は更新手続きさえすれば、半永久的に権利を確保できます。しかし商標登録していることを世論に示しておかないと、そのことを知らずに商標を勝手に使われ、最終的には商標登録の意味がなくなってしまいます。
商標を、大衆がもはや商標と思わなくなるとき、企業は商標権を失ってしまう。“ビタミン”“アスピリン”“リノリウム”などがその良い例だ。こうした言葉はかつて商標だったが、それを所有していた企業は商標権を失ってしまった。(p78)
実は○○○の登録商標です!でお伝えした中にも、もはや商標権を失っているものがあります。こうなってしまうとせっかく商標登録を維持していても、無駄になってしまいます。
特許と商標登録の比較
じゃー特許と商標登録、どっちを申請すればいいの?っていう質問が飛んできそうです。今までの流れからもわかるとおり、結論からいうと両方なんですけど、優先順位としては商標登録でしょう。
最強の特許を取っていても、法廷で権利を主張するには何年もかかるかもしれない。しかし商標登録をしていれば、誰かがあなたの名前を模倣したとき、アメリカ政府全体、税関検査官、警察に味方についてもらえるのである。違反者が民事訴訟で裁かれるだけという例もよくあるが、特許しかない場合よりも有利に働くことが多い。だから、商品に素晴らしい名前を付けて市場に出し、ブランドをつくり上げてほしい。(p75)
ブランドをつくるという観点でいえば、商品の構造やITのロジックを特許出願することもブランディングの一環です。特許出願の内容を公開することで、その発明の企画者であることを証明できるし、株式公開など対外的なアピールにもなるからです。しかしブランディングとして重要度が高いのは、ユーザーに認知してもらうことです。
認知させるには、商品のイメージやストーリーがユーザーの生活に入り込むくらいのインパクトが必要です。そう考えるとやはりネーミングやロゴは欠かせないものであり、それを守らない限りはブランディングの穴ができてしまいます。このように意外と空いてしまいがちな”ブランディングホール”をふさぐために商標登録の優先順位は高くなっています。
著作権表示も忘れずに
特許や商標の違いすらなかなか知られていないのに、さらに著作権も考えろというのは酷でしょう。でも大丈夫です。シュガーマンもおそらく知的財産権の専門家ではないけどそれなりのケアで十分効果を得ているようです。とくに著作権は考えだしたらキリがないくらい奥深いので、簡単な対策をオススメしています。
あなたは著作権法からも保護が得られる 。広告の最後に著作権表示をするだけで、広告コピーを模倣しようとする者からいくらか守られるだろう。
・・・
私が広告に著作権表示をしていただけで、訴訟を起こす必要カがある際には非常に確かな論拠が与えられた。 あなたは、広告末尾の然るべき場所に、小さな©、年号、自分の名前か会社の名前を記すだけでいい。例をあげよう。©1998、ジョセフ・シュガーマン。(p82)
昨今、コンテンツビジネスを主流とする日本で著作権の効力をどこまで及ばせるかは非常に大切な論点です。アメリカでは“フェアユース”という考え方もあり、ビジネスの妨げにならないならガミガミいうのはやめようよ、という風潮が強いです。でもだからといってケアしなくていいわけではなく、自分の著作権かどうかを他人が客観的にわかるようにしておくことは、自己責任として必要です。それも1ページにつきたった1行でいいから楽チンでしょう。
≪まとめ≫
マーケティングと特許・商標・著作権は隣り合う関係にあり、これらはブランディングにとって欠かせないファクターです。シュガーマンはマーケティングの観点から特許・商標・著作権の保護の重要性を語っています。そこでぼくはブランディングの観点から、特許・商標・著作権の重要性や位置付けを引き続き検討したいと思います。
2014年2月17日
著者 ゆうすけ
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