くまモンvsディズニー ブランド戦略の本質と版権ビジネス 3つの違い
くまモンにもディズニーにも、キャラクターの著作権やネーミングやロゴの商標権があります。つまりどちらも勝手に使えないように制限をかけているわけです。でも版権ビジネスの本質はそれぞれ異なります。
そこでくまモンvsディズニー 版権ビジネスの3つの違いをまとめました。
1.コンセプトが違う
版権ビジネス、つまりキャラクターやネーミングを利用して商売するやり方にもいろいろとあります。なぜいろいろあるのかというと、そもそもコンセプトが異なるからです。
くまモンを管理する熊本県のコンセプトは、県内の名産物や名所の認知度アップです。そこでくまモンを利用して、熊本県を日本中にアピールしています。つまり地域産業の価値をお客さんに知ってもらうことが、熊本県のミッションです。
ディズニーのコンセプトは、お客さんに夢の国を提供することです。そこでディズニーキャラクターを利用して、ディズニーランドへの好奇心を高めています。つまり夢の国の価値をお客さんに感じてもらうことが、ディズニーのミッションです。「ディズニーこころをつかむ9つの秘密(渡邊喜一郎著)」には以下のように書かれています。
ディズニーのマーケティングとは何か。
まず、その最大の特徴を端的に挙げるなら、ブランドに関わる目に見えるものすべてをコントロールする、・・・
そしてブランドは、人々が欲しているものを見定め、“絶対的な価値”として送り出すこと。(p010)
コンセプトが異なれば、キャラクターやネーミングの使い方も変わります。
2.承認の程度が違う
くまモンもディズニーキャラクターも、使うときには承認が必要です。しかしその承認の程度がちがいます。
くまモンの場合、あらかじめ熊本県に利用申します。利用の規定内には、県の信用や品位を害したり、キャラクターのイメージを損なったりする場合は、許可しないとなっています。しかしコンセプトは熊本県の認知度のアップだから、比較的ゆるいと思います。現に関東のスーパーマーケットでも、「くまモンフェア」と称して飲食物の販売がなされています。
ディズニーの場合、ディズニーの版権の管理会社に利用申請します。ところが利用申請をクリアするハードルが高いのです。「ディズニーこころをつかむ9つの秘密(渡邊喜一郎著)」には以下のように書かれています。
人材募集であれば、その広告はディズニーのクオリティを満たしているか、がまず問われます。そしてロゴを使うときには、ロゴの周囲何センチは空きがなければいけない、という「プロテクトエリア」のルールや、色の厳格な指定がありました。(p126)
熊本県は最低限の利用規定さえクリアすればOK、ディズニーは簡単にブランドを使えない、と思ってもらえるまで徹底的に厳選しています。
3.収益構造が違う
版権ビジネスは収益につながる大切な部分であり、成功している企業の多くが取り入れています。ところがくまモンとディズニーでは版権ビジネスの収益構造が違います。
くまモンは利用申請して認められさえすれば、無料で使うことができます。なぜならくまモンの役目は、熊本県を日本中にアピールすることだからです。したがって熊本県としては、利用規定さえ守ってもらえればくまモンをどんどん使っていいですよ、というスタンスです。これにより熊本県の収益構造は、熊本の名産物の販売や観光客からの収入がメインとわかります。
ディズニーはライセンス契約が前提です。つまり版権そのものが収益になっています。したがってディズニーは、夢の国の価値を保つことにより、キャラクターの価値も向上させているのです。「ディズニーこころをつかむ9つの秘密(渡邊喜一郎著)」には以下のように書かれています。
「版権は財産であり、お金そのものである」
彼(ノームエルダー)はそう言いました。著作権は有効活用すると同時に、徹底した保護策を打たなければいけない、と。厳格な版権管理こそが、ブランドのコントロールにつながり、クオリティのコントロールを実現させていたのでした。(p122)
くまモンのように版権そのものを収益にしなくてもビジネスは成立します。一方、ディズニーのように版権を収益にするならば、徹底したブランド価値の維持が必要です。
まとめ
くまモンとディズニーとでは版権ビジネスのとらえ方が全く異なります。しかしどちらも成功しているのは事実です。目安として、歴史が浅い場合はくまモン方式、歴史が深い場合はディズニー方式が理想的です。したがってはじめはくまモン方式で認知度を高め、その後ディズニー方式に切り替える、というのもありだと思います。
<参考>
ディズニー こころをつかむ9つの秘密 (渡邊喜一郎著)
2013年6月12日
著書 ゆうすけ
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