モンテローザvs任天堂 仁義なき「わらわら」商標の戦い 3つのポイント
引用:笑笑(左)とWaraWara Plaza(右)
モンテローザ社は、商標登録された任天堂社のネーミングが、商標登録済みのネーミング「笑笑」「わらわら」「WARAWARA」とほぼ同じだから、モンテローザ社と何か関係があるの!?とお客様が混同してしまうため登録されるべきではなかった、と日本の特許庁に申し出たというニュースが4月29日にありました。さらにモンテローザ社は海外についても同様の対応を取るようです。モンテローザ社をここまで動かす要因はなんなのでしょうか?
そこでこのニュースのポイントをわかりやすく3つにまとめました。
1.モンテローザ社は怒っているの?
そもそもモンテローザ社は、「笑笑」(登録第4185167号)という漢字のネーミングを1998年9月に商標登録しましたが、ひらがな「わらわら」やアルファベット「WARAWARA」を商標登録していませんでした。そのためモンテローザ社は、「わらわら」を2年後の2000年、「WARAWARA」を12年後の2010年に商標登録したようです。
なぜこれらを後から商標登録したのでしょうか?それは以下のように考えられます。
漢字「笑笑」の呼び方は、“ワラワラ”だけでなく、“ショーショー”や“エミエミ”もあります。また漢字とひらがな・アルファベットでは、字面が大きく異なります。このためひらがな「わらわら」やアルファベット「WARAWARA」を誰かに真似された場合、漢字「笑笑」とは似ていないため、文句を言えない可能性があるからです(原則、ネーミングの字面(外観)、呼び方(称呼)、イメージ(観念)のうち、どれか一つが同じならネーミング(商標)は似ている、と判断されます。)。
にもかかわらず、任天堂社がアルファベット「WaraWara」(登録第554317号)を2012年12月14日に商標登録してしまいました。さらに「わらわら広場」(登録第5569961号)も2013年3月29日に商標登録しています。そして日本国内外で「わらわら広場」や「WaraWara Plaza」をゲーム機「WiiU(ウィー・ユー)」の画面に表示しています。
そこでモンテローザ社は、ひらがなだろうがアルファベットだろうが“ワラワラ”を世間に広めたのは自分たちだし、居酒屋「笑笑」のお客様が、「笑笑」とゲーム機「WiiU(ウィー・ユー)」とに何か関係があるの?と混同してしまうから、任天堂社のネーミングは商標登録されるべきではなかった、と申し出たわけです。
2.任天堂社が悪いの?
任天堂社は商標登録申請して正式に認められました。ではなぜモンテローザ社の「笑笑」「わらわら」「WARAWARA」とほぼ同じ「WaraWara」や「わらわら広場」が商標登録されてしまったのでしょうか?
それは任天堂社が商標登録申請している商品やサービスが、モンテローザ社のものと違うからです。モンテローザ社は飲食物や飲食店について申請しています。一方、任天堂社はテレビゲームやインターネット関連のビジネスについて申請しています。このためネーミングは同じものの、後から任天堂社が申請した「WaraWara」や「わらわら広場」は商標登録されました。
これにより任天堂社は「WaraWara」や「わらわら広場」をゲーム機「WiiU(ウィー・ユー)」の画面に表示しても、誰にも文句を言われないはずでした。
3.今後どうなるの?
各メディアでは、モンテローザ社が任天堂社の商標登録について異議申し立てをしたと書かれています。しかし「わらわら広場」に異議申し立てしたのか?「WaraWara」に異議申し立てしたのか?はっきりとはわかりません(4月30日時点で、特許庁データベース「IPDL」にまだ表示されていないようです。)。
どちらにしろモンテローザ社にとって任天堂社の商標登録は目の上のタンコブのようです。モンテローザ社の申し立てが認められるかどうか定かではありませんが、簡単に認められることはないと思います。
また日本のみならず、海外の商標登録にも異議申し立てするのかどうかもはっきりとはわかりません。もし海外の商標登録に異議申し立てをするとなると、時間とコストがかかるため、その決断は並々ならぬものを感じます。
「わらわら」というネーミングそのものをモンテローザブランドとして死守する決意というか、今後「わらわら」をつかったら、おたくにもこうしますよ!というメッセージがこめられているのかもしれません。
まとめ
商標登録されればもう安心!というわけではないことを知る事例だと思います。また申請する商品やサービスを違うものにすれば同じネーミングで商標登録することはできますが、お客様を迷わせるような商標登録は後々トラブルの元になるため慎重に検討することをオススメします。
<参考> 任天堂商標、笑笑が異議申し立て「混同招く」 ←2014年2月22日リンク削除
2013年4月30日 著書 ゆうすけ
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