「俺のハンバーグ」と「俺のフレンチ」から学ぶ商標登録の方法
まず「俺のハンバーグ山本」と「俺のフレンチ」とはどんな関係?とおもうかもしれませんが、それぞれ別々の会社が運営しています。
「俺のハンバーグ山本」は株式会社俺カンパニー(山本昇平代表)が2005年6月に設立しました。一方「俺のフレンチ」の2009年11月に開業したVALUE CREATE株式会社(坂本孝代表)が設立しました。ということは、「俺の〇〇」シリーズは「俺のハンバーグ山本」のほうが早かったにもかかわらず、なぜ「俺のフレンチ」(他に、「俺のイタリナ」もあります)がでてきてしまったのでしょうか?そのギモンを両社の商標登録のとり方からひもといてみます。
まず「俺のハンバーグ山本」から。縦書きで「山本」、その下に横書きで「YAMAMOTO」、その左に縦書きで「俺のハンバーグ」とかかれています。看板からもわかるとおり、もっとも目立たせたいのは「山本」ですが、「山本」は名字として一般的なため、これだけでは商標登録はとれません。そこで「俺のハンバーグ」をくわえて特徴をだしたことがうかがえます。
でもお客さんは「山本」より「俺のハンバーグ」をみれば、あのハンバーグストランだよね!って思いだすのではないでしょうか。「俺のハンバーグ」にはそれくらいインパクトがあるとおもいます。またこの商標が出願された平成19年(2007)2月ごろは、まだ「俺の〇〇」というレストランはほとんどなかったはずです。したがって「俺のハンバーグ」だけでも商標登録がとれたかもしれません。
つぎに「俺のフレンチ」。こちらは横書きで「俺のフレンチ」とかかれているだけのものです。字体もさほどかわっているとはいえません。これは平成25年1月25日に登録されています。※特許庁データベース調べ済み
つまり「俺の〇〇」シリーズのレストランはあたるとよんだVALUE CREATE株式会社は、先に商標登録されていた「俺のハンバーグ」とかぶらないように「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」という店名で出店したと推測できます。
そうはいっても、「俺の〇〇」シリーズはもともと「俺のハンバーグ」が先で、「俺のフレンチ」は「俺のハンバーグ」をまねしたんじゃないの?というギモンがわきます。でも商標登録をみるかぎり、たとえそうであったとしても、「俺のハンバーグ」と「俺のフレンチ」」は似ていないため「俺のフレンチ」は商標登録されたわけです。だからなんといわれようが正々堂々とつかえる権利をもっていることになります。
もし先に「俺の」という商標登録をとっていたら、「俺の〇〇」シリーズとしてすべてのレストランの店名をおさえることができました。でももはや「俺の〇〇」というフレーズはレストラン業界で一般的になってしまったため、「俺の」だけでは商標登録はとれないでしょう。
「俺のハンバーグ」と「俺のフレンチ」から学ぶ商標登録のとり方としてもっとも重要なことは、ヒットしそうなフレーズのみで商標登録がとれそうなら、それのみで申請する価値があるということです。そうすれば「俺の〇〇」シリーズのように、すべての店名を商標登録でおさえられ、その商標登録をかして収益をえられるかもしれません。
<参考>
・「俺の〇〇〇」といえば?有名どころから知る人ぞ知るものまで一挙公開!
著書 ゆうすけ
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