『下町ロケット』第8話から学ぶ、大企業と中小企業の共同開発と特許と契約の関係
いよいよ佳境に入ってきました『下町ロケット』。第8話の視聴率は20.4%。今年の民放連続ドラマで最高値となったようです。
第8話のキーワードは「共同開発」。佃製作所もサヤマ製作所に対抗して“シュレッダー”の共同開発を帝国重工に提案してましたよね。
ドラマ内で共同開発の特許について話は出ていませんでしたが、両社の技術を融合した発明の価値は高く、その価値をより高める特許は重要な経営課題です。
そこで大手企業と中小企業との共同開発と特許と契約の関係について解説します。
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共同開発の特許は一般的にみんなで共有
2社以上の会社が共同開発した発明を「共同発明」といいます。一般的に、共同発明の場合、特許を受ける権利は共同開発にかかわった会社みんなの共有となります。
つまり、佃製作所と帝国重工が協力してシュレッダーの詳細な構造を発明した場合、両社に特許を受ける権利があるわけです(図の右側)。
どこから共同開発?線引きが重要
ここでよくありがちなのが、共同開発の線引き問題です。両社の仲がいいときは問題ないんですが、仲が悪くなったり、儲け話がからんでくると、この問題が浮上することがあります。
たとえば、帝国重工が佃製作所からシュレッダーの基本的な構造だけ聞き出し、サヤマ製作所との共同開発に切り替えたとします。この場合、佃製作所にもはや特許を受ける権利はないのでしょうか?
実は、ちゃんとあります。なぜなら、シュレッダーの基本構造は佃製作所の単独開発であり、この部分については佃製作所にのみ特許を受ける権利があるんです(図の左側)。
中小企業の場合、単独開発した発明なのか?共同開発した発明なのか?をちゃんと線引きしておかないと、全てが大企業との共同開発にされてしまうリスクがあります。
共同開発開始前に契約書を作成
そのため、中小企業だからといって大企業の言いなりになっていると、損するかもしれません。そうならないよう、共同開発前にちゃんと契約書を交わすべきでしょう。
線引きするためには、例えば、共同開発の期間(開始日~終了日)、内容、参加者(特に、開発に携わる技術者)のみならず、共同開発前(単独開発時)の進捗状況や自社ノウハウを明文化しておくと安心です。
ちなみに、契約書がそもそもなかったり、共同開発とは関係がない部分(自社独自のノウハウなど)が何かを契約書に明文化しておかないと、以下のようなトラブルが起こってしまうことがあります。
(契約書がない)
・・・友好な関係にあったことから特段の契約はしなかった。その後、共同研究開発事業自体はうや むやになったが、書面による取り決めをしていなかったため、自社技術が共同研究相手先に無償で流出する結果となった。(自社特許の提供-安易な共有化の悲劇)
・・・・特許を相手との共有にした。その結果、新用途の開発は失敗したが、共有にした自社 の特許の相手方分は戻ってこなかった。(ノウハウ等提供の際の注意不足)
・・・・そのノウハウを特定しなかったため、研究自体は成功したものの、その持ち分協議の際に、貢献度が不利に扱われ、持ち分が減った。また、共同研究開発終了後もノウハウは取られ放しとなった。<引用:特許・ノウハウに関する共同研究開発契約の手引き(p2)>
≪まとめ≫
一般的に、共同開発した発明については、特許出願を2社連名で行い、特許権を共有することになります。そのため、契約書で共同開発の線引きしておかないと、自社独自で開発した発明や自社ノウハウが奪われるリスクがあるため注意が必要です。
2015年12月7日
著者 ゆうすけ
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