本家以外も使用OK?歴史上有名な人物の家紋と商標登録の関係
TVドラマで有名になったフレーズがTV局より先に商標登録出願されてたなんてニュースが以前ありました。基本的に商標登録は出したのが早い者勝ちです。
でも、早い者勝ちだからといってなんでもかんでも商標登録(独占権の付与)を認めてたら、他の人が困るよね、ということで、商標法ではちゃんと規制されています。
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家紋の商標登録は本家以外でもできる
では、歴史上有名な人物の家紋はどうでしょうか?本家以外でも使用していいのか?商標登録できるのか?大河ドラマ「真田丸」が年明けから放送されるので、このネタが熱くなりそうです。
来年のNHK大河ドラマ「真田丸」の放送開始を前に、・・・真田氏の家紋の六文銭をモチーフにした「六文銭弁当」など3種類の弁当を商標登録した。坂上京子代表は「自分たちでレシピを考えた弁当なので、その味を守りたかった。一層のおもてなしにつなげたい」と話している。
<引用:2015/12/3「真田の「六文銭弁当」商標登録 九度山の茶屋「味を守っておもてなし」」by 産経ニュース>
というわけで、六文銭の商標登録が他にないか調べてみたら、けっこうありました(以下、J-PlatPatの検索結果画面の一部コピー。検索日:2015/12/3)。 これってけっこうビックリじゃないですか?
商標登録が認められるためには、商標法上の「拒絶理由」に該当しないことが条件です。つまり、拒絶理由に該当していなければ、誰でも好きな商標(ネーミングやマーク)を登録(独占)できるわけです。
先取りされたら本家でも取り戻すのは困難
そこで、歴史上有名な人物の家紋を本家以外が無断で商標登録出願した場合の拒絶理由ってないかな~と考えたところ、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は登録NGという拒絶理由があります(商標法第4条第1項第7号)。
ですが、この拒絶理由でも登録NGにならないようです。「六文銭」の家紋を含む商標登録出願が、この拒絶理由に該当するか否かについて拒絶査定不服審判(不服2011-020371)で審議された下記審決の文言が参考になると思います。
当審において職権をもって調査するに、「真田」の文字及び「六文銭の図形」そのものが、歴史上の人物としての「真田幸村」を指称するものとして理解、認識されるとみるべき事実を発見することはできなかった。
・・・
本願商標は、「真田」及び「千両餅」の文字と「六文銭の図形」とを結合してなる商標であるところ、その構成中の一部に当該氏と当該紋の図形を含んでなるものであっても、その指定商品について、当該氏と当該紋の図形を自己の商標として使用することが、他の法律によって禁止されているものでもない。
つまり、商標法上は本家以外の第三者がした商標登録出願を公序良俗違反だから登録NGという理由は該当しないため、やはり原則通り早く出したもの勝ちということが言えそうです。「六文銭弁当」がまさにそのパターンでしょう。
逆にいうと、本家だからといって「六文銭弁当」を無断で販売したら、商標権侵害になるということです。これが商標登録の怖いところですね。この場合、「六文銭弁当」を使いたかったら商標権者との交渉が必要でしょう。
ちなみに、本家以外の商標登録が認められるとはいえ、本家に無断で使っていいのか?という点ですが、基本的に他人の家紋を使っちゃいけないという法律はないので、無断で使ったとしても法的な制限を受けるリスクは低いと思います。
ただし、第三者による家紋の無断使用を理由とする損害賠償請求なんてことを本家がしてきた場合、どうなるかは裁判次第です。そうなる可能性は低いとは思いますが、事前に許可をとるとらないは自己責任でお願いします。
≪まとめ≫
歴史上有名な人物の家紋を使いたいと思った場合、本家へ許可をとることよりも、商標登録されてないかどうかに注意するほうの優先順位が高いと考えられます。そして、もし商標登録されていたら、指定商品(指定役務)が何かを確認しましょう。指定商品(指定役務)が違えば、使用することができるからです。ただ、使用する前に本家に許可をとるか否かの判断は慎重にすることをおすすめします。
2015年12月3日
著者 ゆうすけ
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