『下町ロケット』第1話から学ぶ、あなたの知らない特許の世界(ネタバレ注意!)
先日、『下町ロケット』の第1話が放送されました。皆さんはご覧になられましたか?特許の仕事をしている端くれのぼくとしては欠かせませんでした。初回視聴率は16.1%だとか。
一番の感想は、表現の仕方によってこんなに特許のことが伝わるんだな~という点です。うちの奥さんは特許について全くの素人ですが、かなりはまっているようです。
阿部寛さん演じる佃社長のように、会社を前進させるための特許は壮大な夢のようだし、一方で、会社の倒産を防ぐ切り札のための特許は心強い守り神のようですよね。
そんないろんな特許の世界を凝縮した見ごたえのあるドラマ『下町ロケット』第1話の中で、特許について知らない方なら不思議に思ったかもしれない5つのポイントを勝手に解説したいと思います。
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1.特許に強い弁護士って本当にいるの?
ドラマの中で、佃製作所のメンバーと顧問弁護士との言い争いのシーンがあったかと思います。その中で、顧問弁護士が、技術にうといだとか、特許に強い弁護士なんて見つからないだとか言ってましたよね。
これは実際にある話です。というのも、弁護士さんは法学部とかいわゆる文系出身の方が多く、逆に理系出身(工学部とか)の弁護士さんはめずらしい存在なわけです。
理系出身じゃなくてもいいですけど、技術系のバックボーンがないと、技術を守る特許の話にはついていけないことがあります。だから、特許技術の裁判のときは、特許やある特定の技術に強い弁護士さんを探すことはけっこうあります。
ちなみに、原則、弁理士は裁判の代理人にはなれないため、弁護士が代理人となり、弁理士が特許技術についてサポートする体制が一般的です。
2.いきなり訴訟って本当にあるの?
次に、佃製作所にナカジマ工業から突然書類が届いて、いきなり裁判所のシーンが出てきたかと思います。とても展開が早いため、視聴者としては見ごたえがありますよね。
でも、考えていただきたいのは、気に食わなかったら誰でもかまわずケンカ売りますか?ってことです。ドラマでは、ナカジマ工業がいきなり訴訟を起こしたのにも狙い(買収)がありましたが、実際にはそう多くはないケースだと思います。
裁判嫌いな日本企業の風土も影響しているかもしれませんが、買収要求だろうが製品の販売停止要求だろうが、まずはちょっとしたお手紙などで相手が逆ギレしないように伺うのがスタンダードでしょう。
3.営業担当は特許のこと本当に知らないの?
技術開発にはコストがかかるし、使えない特許製品なんて意味がない!と、営業担当と技術担当が言い合うシーンがありました。まー営業担当からすれば、商品は売れてナンボですからね。
そのため、これも実際にある話のようです。というのも、営業さんは売上(成績)を伸ばすことが目的なので、会社が特許出す前にプレゼンしちゃうとか、他社の特許に侵害する注文をうけちゃうとか。
でも会社によっては、特許を営業ツールにして、お客さんからの信用を高めたり、他社品との差異点を特許を使って説明したりするという事例も聞きます。
4.逆訴訟って本当にあるの?
やられたらやり返す!目には目を!逆訴訟は第1話のクライマックスでしたね。ドキドキしながら見ていました。資金繰りが苦しい中小企業にとっては背水の陣でしょう。
これも実際にある展開です。最近話題になったケースだと、アップルと島野製作所の紛争がこれに当てはまるかもしれません。島田製作所がまさに佃製作所ですね。
逆ギレして裁判する前に、手持ちの特許権で交渉するパターンもあります。お互い傷を負わないよう和解したり、お互いの特許をそれぞれ自由に使えるように(クロスライセンス契約)したりもします。
5.2週間前に同じ特許が出されてたのって本当にわからないの?
まさか2週間前に同じ特許が出されているとは。。。しかも優先権主張出願という素人にとってはチンプンカンプンなテクニックまで披露して。
ま、これもウソのようで本当にある話です。2週間前かどうかはさておき、特許は出願(申請)してから1年半はクローズ(非公開)のため、例えば今から1年前にどんな特許が出されていたかは本人以外はわかりません。
そのため大切なことは、ライバルに先を越されないように特許は早く出すこと、先に同じ特許が出されていた場合にその特許を回避する案を予め決めておくこと、などです。
ちなみ、優先権主張出願により、特許出願してから1年以内なら、出願した特許の内容の具体例(研究成果)を追加して特許の強さを補強したりすることができます。
≪まとめ≫
いかがでしょうか?なんとなく特許の世界が見えてきたという方がいらっしゃれば嬉しいです。ドラマ『下町ロケット』第2話でも不思議ネタがあったら解説したいと思います。
2015年10月20日
著者 ゆうすけ
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