特許をとっても営業は大切!事例から学ぶハードウェアスタートアップと特許の関係
スタートアップ企業にとって、特許は早いうちから検討すべき項目の一つになってきました。事業の出口戦略を考えると、権利の有る無しが欠かせない条件になったからです。
事業を譲渡しないとしても、事業を軌道に載せるために特許は有効です。売れる商品なら真似をされ、成長している会社なら他社から狙われる(攻撃の的になる)運命にあるからです。
そこで、「ピアスキャッチ」の事例を参考に、商品の誕生エピソードや事業の成長過程と特許との関係を整理しました。
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特許のタネは私生活の中にあり
24歳のとき、彼からもらったピアスを失くして怒られたんですが、「私じゃなくて金具が悪いんだ」と抵抗して大ゲンカに。それを証明するためにピアスキャッチ=留め金を開発しようと思ったんです。私たちが2012年に調べた結果、86%の人がピアスを失くした経験があり、うち9割は何度も繰り返しているという。
<引用:2015/6/28 「「女の時代」どころか「女から学ぶ時代」 菊永英里と竹部美樹、2人の女性起業家の体験にみる驚きの戦略とは?」by 現代ビジネス>
特許をとれるアイデアって私生活の中に存在することを物語るエピソードですね。着眼点は、不便なことや困っていること。こうなればいいのにな~という発想。つまり、世の中の課題を解決できるかどうかが特許のポイントです。
ピアスキャッチの発想は、ピアスが外れやすい(落ちやすい)という構造上の欠陥により、大切なプレゼントがなくなって男女のトラブル(痴話げんか)につながるという課題があったわけですね。
このとき、ピアスを落ちにくくする新たな構造が特許になるかどうかは、それ以前にどういう構造でピアスを落ちにくくしていたか次第です。つまり、従来のピアスの構造と比べて、より落ちにくい構造と言えれば特許になります。
ピアスキャッチの場合、特許と認められた構造が2件、さらに新しいアイデアとして特許出願中の構造が1件あります。一番最初に特許を出したのが2006年で、それから改良して特許を出し続けた背景が伺えます(2015/6/28現在、上画像参照)。
ピアスキャッチをつくろうと思ってから完成するまで、ずいぶん時間がかかりました。特許はとったのですが、A4の紙に鉛筆で書いた、いま思えばひどい図面を工場に見せても「帰れ」と言われるだけで、200社くらいあたったんですが、ほとんど相手にしてくれませんでした。
<引用:2015/6/28 「「女の時代」どころか「女から学ぶ時代」 菊永英里と竹部美樹、2人の女性起業家の体験にみる驚きの戦略とは?」by 現代ビジネス>
最近よく聞かれるのが、特許のライセンス収入を得たいけどどうすればいいか?という質問。自分では製造もできないし販路もないので、アイデアを特許にして儲けたいというのが狙いです。
でも、特許の本質って、やっぱり自分のアイデアを守ることです。自分のアイデアを守るということは、類似品を簡単に出せないようにして、最終的に自分が優位になれる仕組みをつくるのが目的です。
そして、例えば地方限定でヒットした商品を全国販売したいタイミングになったら、特許をライセンスして他社とコラボし、その売上の一部を特許料(ライセンス収入)としてもらえるようになります。
そのため、やっぱり最初は自分でどこかの試作工場にサンプル品を作ってもらって、泥臭く営業活動しまくって、ようやく1社トライアルでサンプル品を使ってもらって、よかったら製造委託契約して量産という流れが一般的だと思います。
そのときに、特許があれば(特許を出してれば)、試作工場にパクられても営業活動しても安心だし、引き合いのあった会社から特許出してるか聞かれても、強気で交渉が進みます。
ちなみに、特許を出さない(ノウハウとして秘密にする)としても、売り込み先が大きな会社ほど、他社の特許を侵害していないかどうか確認するので気をつけましょう。
≪まとめ≫
スタートアップ企業が事業を立ち上げてから軌道に乗るまでの間に、どうやって特許を出し、どう特許を活かしているかというパターンがだんだんわかってきました。特許をとること、コストをおさえること、製造委託先を探すこと、販路を開拓することなど、やることはたくさんありますが、参考にしてみてください。
2015年6月28日
著者 ゆうすけ
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