特許を取るまでの流れ-第2フェーズ「出願準備」ですべき大切な5つのこと
分析しがいのある知財ネタが増えてきたので、フレームワークのまとめがおろそかになりがちでした。気づいたら、第1フェーズ「調査・検討」ですべき大切な3つのことを公開してから、早1年以上絶っていました。
でも、1年前に書いたエントリーを読み返しましたが、流行り廃りのない内容なので、今でも十分使えることに安心しました。そこで、今回は、第2フェーズ「出願準備」ですべき大切な5つのことをまとめます。特許をとるまでの全体像と合わせて見るとよりわかりやすいはずです。
なぜこの内容をまとめるかというと、事業と特許は密接な関係にもかかわらず、事業と分けて特許をとっているのが実情と感じているからです。これは、休眠特許が多い原因の一つとも考えています。
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1.出願する目的を決める
当たり前のことなのに、なぜかこの点が語られずに特許出願されることが多いです。それはきっと、出願の目的にもいろいろあることを知られていないからでしょう。
詳細は、特許を出願する5つの目的にまとめましたが、特許で直接儲ける(ライセンス収入など)だけじゃなく、間接的に儲ける(ライバル会社をけん制など)ことも見込めるわけです。
2.特許をとる時期を明確にする
特許は事業と密接につながっているはずなのに、いつ特許をとるかについてもあまり語られていません。特許を出すだけで満足し、気づくと商品の売れ時が過ぎていた、なんてこともあります。
「特許をとる時期」というのは、審査を通過して国のお墨付きがおりるタイミングということです。そして審査を通過するには、その前に審査をはじめてもらうお願い(出願審査請求)をしなければなりません。
「出願審査請求」は特許を出した日から3年以内ならいつでもできます。さらに、「出願審査請求」に加えて、審査を早くはじめてもらうお願い(早期審査の事情説明)をすることもできます。
これらのお願いをいつするかによって、特許をとる時期が2~6か月(最短)から4~5年(平均)まで差が出ます。早く特許をとるか、あえて遅らせるか、その判断はとても重要です。
3.特許の範囲を決める
特許をとるには、過去のアイデアと重ならないようにしなければなりません。だから、これは画期的だ!今までなかった!と本人が思っても、審査官に似たアイデアがのってる文献を見つけられたら、特許になりません。
そうならないよう、特許の範囲を決めます。「特許の範囲」とは、土地の広さと同じです。エリアにもよりますが、広ければ広いほど稼げる(自分の土地で商売ができる)わけです。
でも、広すぎると、他の人の土地と重なるため、土地をせまくしなければなりません。逆に、せますぎると、自分の家(自社商品)すら建てられなくなり、意味がありません。
このように、他の人の土地が過去のアイデアだとすると、他の人の土地を避けつつ、自分の土地(特許の範囲)をいかに広くするかが決め所です。
4.商品のバージョンを洗い出す
特許の範囲が決まったら、その特許の範囲に含まれる商品のバージョンを洗い出しましょう。なぜなら、特許の範囲が広ければ広いほど、意味があいまいだからです。
商品のバージョン(パターン)を洗い出すことで、特許の範囲がはっきりします。特許の範囲がはっきりすると、その特許を武器に戦いやすくなります。土地を住所であらわして所有者をはっきりさせるようなイメージです。
「商品のバージョン」とは、例えばモノの形状、材料の種類、部品同士の組み合わせなど、考えられるパターンです。これを洗い出せば出すほど、ライバル会社にとっては脅威となります。
なぜなら、類似品をつくりたくても、特許の範囲が広くかつはっきりしていたら、それを避けるのが難しくなるからです。さらに、いろんなパターンが書いてあると、ライバル会社が特許を出しにくくなるからです。
5.予算をイメージする
なんだかんだいってつまるところは予算でしょう。売れ筋商品の特許なら費用対効果は高いかもしれませんが、売れるかわからない商品や死に筋商品の特許では費用対効果は低いからです。
特許をとるまでに費用を支払うタイミングは一般的に段階的です。主なタイミングとしては、出願したとき、出願審査請求したとき、特許庁からのダメ出し(拒絶理由通知)に応答したとき、特許が成立したとき、です。
だから、これらの予算が必要なタイミングをイメージしておけば、お金がないから特許が出せない!ということはないでしょう。さらに、資金調達先に対して特許出願は好印象をあたえるはずです。
≪まとめ≫
特許を出したけど事業化には至らなかった、売り込みにいったけど相手にされなかった、など残念な知らせも聞きます。売れるかわからないのにお金は払えない、でも投資しないとパクられて損をするかもしれない、だから特許を出願する前に準備することが大切なんです。逆に、これらを意識することで、商品開発がスムーズに行われるとも考えられます。
2015年5月21日
著者 ゆうすけ
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