業界ではありふれた技術なのに?サブマリン特許よりたち悪い当たり前特許の脅威
技術の再利用は、日本の製造業が直面している課題です。ありふれた技術でも、組み合わせれば新たな価値が生まれるはず。そんな可能性を秘めています。
そして業界にとってありふれた技術でも、特許になることがあります。もちろん簡単ではありませんが、特許にならない理由さえ審査官が見つけなければ、特許なるんです。
そんなのが特許になったの!?と騒いでも、特許は特許です。ある意味、サブマリン特許よりたちが悪いかもしれません。
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サブマリン特許よりたち悪い当たり前特許の脅威
先述の組合関係者によると、当時、アパレル各社は「今後はワイヤー入りのシャツは企画製造しない」という極めて現実的な対応策を取ったという。
・・・
組合関係者はこうも話していた。「いまだに道義的には釈然としないものの、この事件で一気にアパレル各社の知的所有権への関心が高まった。それだけは唯一の功績だったのではないか」。<引用:2013/3/5 「既に広まっている技法を特許申請した会社 ファッションと知的所有権の難しい関係」 by 日経ビジネス>
サブマリン特許って言葉は一昔前に流行りましたが、簡単にいうと、特許出願してからマーケットが育つ数年~10数年後に特許を成立させ、その特許で他人を攻撃する戦略のこと。
特許業界では悪の戦略のように言われたりしていますが、考え方によっては正攻法です。マーケットの状況を見ながら特許の成立時期をコントロールするわけですから。単純な思惑ではできません。
一方、当たり前特許は、特許になるかわからないけど試しに出してみて、特許になったらラッキー!というもの。こういう特許は大抵ブーイングです。
だけど、当たり前特許にも実はちゃんと戦略が隠れています。というのも、特許は技術を文章で表現したもの。その特許を表現した文章(思想)が世の中で知られていなければ、特許になるんです。
ありふれた技術と判断されるギリギリのところを、文章の表現を工夫して回避するんです。これ自体は特許戦略の王道。だから当たり前特許が存在するわけです。
そして当たり前特許を目の当たりにしたライバル会社がどうするかというと、開発した商品の設計を変更したり、泣く泣く開発を断念したり、当たり前特許を無効にできないか調べたりします。
ギリギリでも取られた当たり前特許は、ライバル会社にとってかなり脅威です。コンプライアンスを考えたら無視するわけにはいかないからというのも一つの理由です。
≪まとめ≫
ありふれた技術の再利用が活発化すれば、当たり前特許が増えるかもしれません。でも実は当たり前ではなく、緻密な戦略が隠されていることも忘れてはいけません。また、当たり前特許はライバル会社の追随を抑える効果が高いことも知っておくべきでしょう。
2015年3月31日
著者 ゆうすけ
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