知的資産経営はなぜわかりにくいのか?知的財産戦略と情報セキュリティ対策とナレッジマネジメントの違い
目に見えない会社の資産、例えば従業員のアイデアやノウハウを活用して経営に活かしましょうというのが知的資産経営の概念。ひたすらモノつくればいい時代は終わり、効率化、ブランド化、特許化を考えないと経営が難しくなってきました。
そのため経産省も知的資産経営を推し進めているわけで、これを実行できたら会社の業績は良くなると思うんですが、いかんせんわかりにくいというか、どのタイミングでどこから手をつけたらいいのか、判断がむずかしいのでは?と感じています。
それにちまたでは、知的財産戦略、情報セキュリティ対策、ナレッジマネジメントといった知的資産経営の方法論が飛び交ってます。それぞれはっきり区別できればいいんでしょうけど、この違いもわかりにくいのではないでしょうか。
知的資産経営は、業種とか、会社の業績や成長度合いや境遇とかによって、具体策は違うはず。でもそれをみんなガッチャンコしちゃうからわかりにくいんだと思うんです。取るべき特許もないのに無理に知的財産戦略やっても効果は薄いわけです。
そこで中小規模の製造業にフォーカスして、どんな会社がどんなタイミングで知的資産経営に取り組むといいのか?という目安を考えました。重要なのは、優先順位と力の入れ具合です。
photo credit: Brett Jordan via photopin cc
中小企業でもできる知的資産経営のパターン
上の図は、経産省が提供している概念図を引用しています。この図自体はいろんなところで見かけるくらい、活用されているし、すごくわかりやすいと思うんで、活用させてもらいます。
知的財産戦略(知財戦略)とは?
まずは一番小さいボックス(知的財産権)について。ここには特許、実用新案、著作権とかって書いてありますけど、できれば特許とりましょうね、っていう提案なわけです。会社の技術を守りましょう!という経営方針。
じゃーこの知的財産権の対策が必要な会社ってどんなところかっていうと、シンプルに言えば、売れるもの(商品)があって、それを特許にできる会社。そもそも売れるものがなければ(売る予定もなければ)、特許は二の次です。
このような知的資産経営の具体策の一つが、①知的財産戦略です。大会社が知的財産戦略を実施してるのは、売れるもの(売れてるもの)があるからです。しかもそれはオープン(開示)して問題ないため、特許をとってるわけです。
情報セキュリティ対策とは?
つぎに真ん中のボックス(知的財産)について。ここでは知的財産権とちがい、特許とかはとれないけど、会社の技術や情報は守りましょう、価値を高めましょう、という対策をするところ。この辺のちがいがわかりにくいんでしょうね。
じゃーどうやって特許とらないで会社の技術や情報を守り価値を上げるのよ?っていうと、それが➁情報セキュリティ対策です。具体的には、アイデアやノウハウにランクを付けて、これは金庫の中、これはパソコンでアクセス権限かけて管理、とか。
①知的財産戦略が攻めだとすると、②情報セキュリティ対策は守りです。特に会社のキーマンが辞めちゃった場合とか、その人しか知らない情報があったらやばくないですか?そういう意味で大切です。
ナレッジマネジメントとは?
最後に外側のボックス(知的資産)。もうここまでくると何のこっちゃって感じかもしれませんね。かっこよくいってるけど、ようは会社そのものです。ヒト・モノ・カネでいうなら、特にヒトの部分でしょう。
会社にとって従業員の知恵は、人の血のようなもの。血流が悪いと体調悪くなるのと一緒で、知恵が共有されなければ会社の経営状態は悪化するリスクがある。それをカイゼンしましょうねってことです。
それをひと言でいうと、③ナレッジマネジメント。特許とか情報セキュリティとかはひとまずやってるんで、もっと業績あげるために商品開発や人材育成を充実させたい、合併や事業承継もちかいな~とか、そういう会社が取るべき具体策です。
≪まとめ≫
このように会社の事情や体力や局面によって知的資産経営の取り組み方があるわけで、これをごっちゃに考えるからわかりにくいというのがぼくの分析です。たしかに全てをバランスよくやれたらいんでしょうけど、すごく大変じゃないですか?社内の反感とかもあるでしょうし。だからまずは会社の状況をちゃんと把握して、取り組む優先順位と力の入れ具合を検討することからはじめることをオススメします。
2015年1月16日
著者 ゆうすけ
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