特許の代替技術とは?似て非なる定義と判断例
特許を取ったにもかかわらず、新商品を研究開発しているうちに、特許の範囲から外れちゃうことって意外にあります。なんでこういうことが起こるかというと、エンジニアにとって特許の範囲を気にしながらモノづくりするのは厳しいからです。早く完成させたいのに、仕様変更があったりバグがあったりとてんてこ舞い。
しかし会社としては新商品の評価をしなければなりません。ましてや社員が考えた職務発明だとしたら、その特許がもたらす利益のみならず、社員の報酬も算定する必要があります。でも新商品が特許の範囲かどうか?商品特性は同じでも構造が違う代替技術なのでは?など、その判断は簡単ではありません。
そこで代替技術の定義とその判断例をご紹介します。
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代替技術の定義
判例では、以下の定義が示されています。簡単にいうと、特許の範囲に入っているかどうかだけじゃなく、技術面や経費面で同じかイケてないと、代替技術ではないということです。
被告は,代替技術であるか否かの判断で重要なのは,当該特許を回避して同一の目的を達成できるか否かであり,技術面での性能・機能及び費用の高低は,当該技術の代替性を論じる場合,相対的な問題で,重要な問題ではないと主張する。
しかしながら,ある技術が当該発明の代替技術となるか否かについては,その技術の方が,当該発明よりも,技術的な側面や経費的な側面等において優れているか,少なくとも同等であるなどといった事情があるときにはじめて,かかる技術は当該発明の代替技術となるというべきである。・・・(大阪地裁平成17年7月21日判決(平成16年(ワ)第10514号事件)及び大阪地裁平成18年3月23日判決(平成16年(ワ)第9373号事件)参照 。
代替技術かどうかの判断ステップ例
判例では判断ステップが書かれていなかったので、考えてみました。
<ステップ1>
特許発明と商品とを対比して、商品が特許発明の本質的部分を回避しているか否か?
<ステップ2>
ステップ1にて、回避している場合→商品が特許発明と同一の効果を発揮するか否か?
ステップ1にて、回避していない場合→特許発明と同一
<ステップ3>
ステップ2にて、同一の効果を発揮する場合→代替技術の候補
ステップ2にて、回避していない場合→異なる技術
<ステップ4>
ステップ3にて、商品が技術的な側面及び経費的な側面で同等又は優れている→代替技術と判断
ステップ3にて、商品が技術的な側面及び経費的な側面で劣っている→代替技術とはいえない
ステップ1と2は、特許権の侵害か否かの判断になります。ここでのポイントは、本質的部分を回避しているか?と、効果が同じかどうか?です。つまり本質的部分を回避してるけど、同じ効果を発揮すれば、ステップ3にて、代替技術と言えるのでは?という仮説を設定します。
そしてステップ4で、技術面や経費面での評価になります。ここでは、会社やエンジニアへのヒアリング、開発費の比較などを踏まえて、理論付けしていくことになります。そしてこれらの面でも優れているといえれば、代替技術に認定するというものです。
≪まとめ≫
代替技術かどうかは判例でけっこう議論されています。その判断手法は様々で、画一的なものはありません。ただこのような判断ステップがあれば、会社の意思決定にも役立つのではと考えています。
2014年9月9日
著者 ゆうすけ
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