立体商標登録は文房具業界でも流行るか?ジャポニカ学習帳がノート部門で初
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最終更新日:2014/11/15
商標事例研究
各企業で、商品の立体的形状を立体商標登録で守る方法がとられています。先日はショウワノート㈱の「ジャポニカ学習帳」について立体商標が認められました。
photo credit: DaveAustria.com via photopin cc
ジャポニカ学習帳の立体商標はこんな感じ
この商標登録は、ノートの表面及び裏面の写真、表面及び裏面を横方向斜めからみた写真を添付して出願されています。表面・裏面どちらにも、写真や文字はありません。そうすることで、商標登録として守る部分をひろげているわけです(ムダな写真や文字が入ってしまうと、商標登録の範囲を限定してしまうことになります)。
ノートとしては一般的に知られたデザインだったのか、登録が認められるまでかなり時間がかっています(平成23年7月末に拒絶理由通知を受け、その後この拒絶理由通知に対応するために特許庁と数回やり取りがあり、平成25年12月に登録が認められました)。
立体商標登録のメリット
以前に書いた記事で、立体商標登録のメリットをまとめました。
このように意匠権も商標権もないと、もし自分が最初に考えた立体的なモノを、パクリ品として他の業者に販売されてしまっては、本来自分のオリジナル品なのにその行為をやめさせるのが難しくなります。不正競争防止法や著作権を主張して止めさせる余地はありますが、意匠権や商標権と違い登録された権利ではないため、反論されるリスクが大いにあります。
そこでその商品を立体商標として登録すれば、商標法にもとづいてパクリ品の販売行為をやめさせることができるわけです。
モノのデザインは意匠登録で保護するのが基本です。それは文房具でも同じです。だけどタイミングが遅いと意匠登録できない場合があります。そんなときにモノのデザインを保護するなら、立体商標として登録するのも一つのテクニックです。
しかも商標登録なら存続期間を更新する限り、半永久的に独占権を維持できます。そのメリットを活かすために、ショウワノートは「ジャポニカ学習帳」を立体商標として登録したことが、以下のコメントから伺えます。
このたびの立体商標登録は、「ジャポニカ学習帳」が何世代にも渡って多くの人々に使われたことによる高い認知度、知名度により実現できたことです。当社では 今後も、「ジャポニカ学習帳」が学習帳の「トップブランド」※2 として、親から子へ、二代、三代と世代を超えて使われるよう取り組んでいきます。
<引用:当社学習帳の形状が立体商標登録-ショウワノート株式会社>
近年の立体商標登録の実例
有名どころで言えば、以下の商品が立体商標登録されています。
・運動靴(アディダス)
・あひるのおもちゃ(バスクリン)
・カーネルおじさんの置物(ケンタッキー)
・コーラの瓶(コカ・コーラ)
・スーパーカブ(本田技研)<引用:立体商標とは何ぞや?文字・ロゴ・図形以外に立体的なモノも商標登録OK>、<参考:【速報】ホンダ「スーパーカブ」が立体商標登録されるまでの道のりとその影響力>
立体的なモノが商標登録の対象になったのは、1996年からです。制度としては比較的あたらしく、その登録率はまだ低めです。
この一覧から近年の立体商標の登録率を割り出すと、2011年は27%、2010年は42%、2009年は47%です。これは、文字商標や図形商標の登録率(50~80%)と比べると低めです。
ちなみに年間数百件しか申請されていないことにちょっと驚きです。というのも、立体商標を登録できるようになったのは平成8年(1996年)からで、比較的新しい制度です。そのため立体商標についてまだあまり知られていないのかもしれません。
≪まとめ≫
文房具もデザインが売れ行きを左右します。ヒット商品のデザインを保護するなら、意匠登録のみならず、立体商標での登録も検討するのが今後のトレンドかもしれません。
2014年8月24日
著者 ゆうすけ
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