地銀から資金調達できる時代がきた!特許は技術を客観的に評価するためもの
特許を担保にした資金調達が盛んになってきました。
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特許の価値を評価して融資を検討
千葉銀行は7日、企業が保有する特許の市場価値を基に融資する「ちばぎん知財活用融資」を始めた。財務諸表に載っていない企業の技術力や商品開発能力を、民間調査会社の報告書や独自調査で判断し、原則無担保で融資する。不動産担保などによらない、新たな資金需要を掘り起こすのが狙い。
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対象は売上高が1億円以上、営業利益と経常利益がプラスで債務超過のない企業。報告書で特許の市場価値が1千万円以上とされた企業に、1~5年間で1千万円以上の運転資金を融資する。今後、需要に応じて1千万円以下の小口融資や、設備資金など他用途への対象拡大も検討する。
<引用:2014/5/8 千葉日報 「融資基準は“特許” 技術力など調査し判断 千葉銀、県内地銀で初」>
千葉銀のニュースリリースによれば、㈱三菱総合研究所の「企業特許レポート」を利用するようです。しかも作成費用は千葉銀の負担。これは条件さえあえばトライする価値があるんじゃないでしょうか。
特許に限らず、価値って相手ありきですよね。普通に生活している人にとって水は水道の蛇口をひねれば出てくるんで価値が低い。でも砂漠でのどがカラカラの人にとって水はたったコップ一杯でも大金をつぎ込むかもしれない。それくらい価値というのは相手次第で、欲しい人には価値があり、欲しくない人には価値がないわけです。
でもここになら欲しい人がいるだろう、こうすれば欲しくなるだろう、そうやって価値観を探ったり高めたりすることはできるはずです。それってマーケティングですよね。だから特許の場合も同じで、簡単にいえば似た特許を持っている会社にとってキラーパスになる特許なら価値が高いと評価されるはずです。
また実際に売れてるモノの特許だったらマーケットでの実績が出ているので価値が上がるでしょうけど、特許の網の目がスカスカだと模倣品を取り締まれないんで価値が下がるでしょう。そんなときは複数の特許をセットにすれば網の目を埋められるので価値を高められます。関連する特許はできるだけとったほうがいいというのはこういう理由です。特許のオークションやパテントトロールも特許マーケティングしてるから高額の取引が行われているわけです。
特許庁も資金調達支援の動きあり
つい最近では特許庁も資金調達に関する支援をはじめたようです。
経済産業省・特許庁は5月にも、中小企業が持つ特許や実用新案といった知的財産権をベースに、信用金庫や地方銀行が研究開発や事業化の資金調達で担保などに設定できるように差別化技術の評価支援に乗り出す。民間調査会社に委託して中小にヒアリングを実施。技術の競争力や事業化の優位性を客観的に評価する。モデルケースとして調査費用は経産省・特許庁が負担し、2014年度に数十件に適用する。
<引用:2014/3/25 日刊工業新聞「特許庁、差別化技術の評価支援へ-知財担保の中小資金調達で“目利き”代行」>
信用金庫や地銀からの資金調達が狙いの支援ということは、地域での技術開発活動を後押しするということでしょう。金融機関にとって特許評価の費用負担がなくなれば融資を検討しやすくなるし、会社としては経産省や特許庁の後ろ盾があると心強いんじゃないで、このモデルケースは注目したいです。
≪まとめ≫
特許の目的は、独占権を振りかざすだけじゃなく、客観的に技術を評価してらもうことにもあります。だからただ特許をとればいいだけじゃなく、広く網をはれる特許や競合他社の隙間をねらった特許をとるべきです。そういう特許ってどうやってとれるかというと、商品の企画段階から他社の特許事情を研究分析して自社に活かすべきでしょう。
2014年5月9日
著者 ゆうすけ
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