民話の朗読って著作権違反?盲点は民話のアレンジ版を朗読するパターン
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著作権
著作権の期限は、原則、著作権者の死後50年です(今のところ。TPPで70年になるかもしれませんが。。。)。だから民話そのものの著作権は消滅していると判断してもよさそうです。
では民話を近代の作家がアレンジしたものはどうでしょうか?この判断は簡単ではありません。なぜならそのアレンジしたものに創作性があるかないかの判断が必要だからです。創作性があれば著作権あり、なければ著作権なしで民話と同じくフリー。
じゃー、創作性の有無の判断ってどうやるか?それは民話の原文とアレンジ版とを見比べて改変されている部分の表現がありふれているかどうかを確認するんですけど、これはもはや裁判レベルでしょう。
そこで民話のアレンジ版を朗読するパターンで著作権違反にならないように検討すべきポイントをQ&A方式で整理しました。
Q.民話に著作権はあるか?
A.ないと考えてよさそう(著作権は著作者の死後50年)。
Q.民話に基づいて創作された作品に著作権はあるか?
A.あると考えられる(ただし創作性が認められる場合に限る)。
Q.作品の朗読音源を録音したCD-Rを配る行為は誰のどの権利に抵触するか?しないか?
A.著作権者の複製権に抵触(音源をネット配信する行為は公衆送信権に抵触)。
ちなみに、出版社の出版権には抵触しない(音源での複製は除外)。営利を目的としない複製は、著作権の制限規定には該当しない(私的使用の複製は除く)。視覚障害者のため複製等であれば、著作権の制限規定には該当しない(つまり一般者のための複製は該当せず)。
Q.朗読音源を録音したCD-Rを配る場合、どうすればいいか?
A.まずは著作権の帰属を明確にし、必要であれば著作権の利用許諾や著作権者の人格権を行使しない同意なども得たほうがよい。たとえば以下の流れが考えられる。
(1)作品の著作権者を明確にする。明確にする方法は、たとえば以下のやり方がある。
・出版社に問い合わせる(作者本人に帰属していることが多いものの、出版社に著作権譲渡していることもありえる)。
・作者本人に問い合わせる
・管理団体に問い合わせるか、管理団体サイトで著作権の帰属を調べる。
→青空文庫-著作権の消滅した作家名一覧
→日本文藝家協会-委託者一覧
→出版社著作権管理機構-JCOPY管理著作物リスト検索
(2)著作権者から著作物の利用許諾を受ける
利用許諾を口頭で受けたとしても、後々のトラブル回避のため書面を交わしたほうが無難。
(3)作者に著作者人格権を行使しない旨の同意を得る。
著作物には、著作権のみならず、作者(著作者)の人格権がある。そのため氏名を表示すること以外の人格権は行使しないとする同意などを書面でもらったほうが無難。
Q.その他注意事項は?
A.実演家(朗読者)の方々の権利もある。信頼関係があれば問題ないが、念のため留意すべき。また他の出版社等に企画を持ち込む際も、権利関係がクリアしていることを伝えたほうがいい。
≪まとめ≫
なにはともあれ著作権者に利用許諾を得るのが安心かと。あと出版社との関係もあるため、一先ず出版社に問い合わせるのがいいのではないかと思います。その後、著作権者と利用許諾を結ぶステップになります。
<参考サイト>
・文化庁-著作物を利用する場合の手順
公益社団法人著作権情報センター-民話、伝説などを「聞き書き」したものも著作物ですか?
2014年5月1日
著者 ゆうすけ
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