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KUMAのTシャツは今後どうなる?著名な商標だとパロディのブランド化は厳しい

公開日: : 最終更新日:2014/11/15 商標事例研究, 商標戦略

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以前、北海道に行ったときお土産屋で見かけて、オモシロいな~と思っていたんですが、やっぱりダメだったようです。どうやらプーマが、KUMAの商標は無効だ!という主張を特許庁にしたところ、これが認められたようです。一時は裁判にまでもつれこみましたが、KUMAの商標は認められませんでした。 

そこでどんな理由でパロディの商標登録が無効と認められたかを整理しました。 ちなみに本件商標はKUMA、引用商標はプーマのことです。

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全体的に似ているから(細かいところは別)

商標が似ているかどうかの判断は、一文字一文字、図形の形や向きまで、細かく行われます。商標が似ているから無効だという言い分なら、細かいところまで似ていないと認められません。でも今回の場合はそうではないので細かいところは別として、全体的に似ているという事実で十分だったようです。

・・・両者は、4個の欧文字が横書きで大きく顕著に表されている点、その右肩上方に、四つ足動物が該欧文字部分に跳びかかるか又は跳び上がる様子を側面からシルエット風に描かれた図形を配した点において共通するものである。そして、両者の4個の欧文字部分は、第1文字が「K」と「P」と相違するのみで、他の文字の配列構成を悉く共通にするものであり、しかも、各文字が縦線を太く、横線を細く、各文字の線を垂直に表すようにし、そして、角部分に丸みを持たせた縦長の書体で表されていることから、各文字の特徴が酷似していており、かつ、全体をもってあたかも横長の長方形の枠内にはめ込まれたような独特な印象を与えるものである。
・・・
そうすると、本件商標と引用商標1とは、それぞれを子細に観察した場合はともかく、全体として時と処を別にして観察した場合には、構成の軌を一にするものであって、外観上酷似した印象を看者に与えるものというべきである。

モラルに反するから

全体的に似ているという事実から、プーマに相乗りして商売しようとする狙いがあり、またプーマの価値が下がるおそれがあることから、モラルに反する(公序良俗違反)と判断されました。

・・・本件商標は、意図的に引用商標1と略同様の態様による4個の欧文字を用い、引用商標1のピューマの図形を熊の図形に置き換え、全体として引用商標1に酷似した構成態様にすることにより、本件商標に接する取引者、需要者に引用商標1を連想、想起せしめ、引用商標1に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受けたものといわざるを得ない。
・・・
・・・本件商標をその指定商品に使用する場合には、引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力、ひいては請求人の業務上の信用を毀損させるおそれがあるものというべきであるから、本件商標は、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法第1条)に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。

買う人が間違えそうだから

商標の最大の目的は、誰の商売かをわかりやすくすることです。だから誰の商売かわからない普通っぽい商標や誰かの商標に似ている商標ばかりでなく、グループ会社や子会社と思って買う人が間違えちゃうよねって誤解される商標も、無効の対象です。

・・・本件商標をその指定商品について使用する場合には、これに接する取引者、需要者は、顕著に表された独特な欧文字4字と熊のシルエット風図形との組合せ部分に着目し、周知著名となっている引用商標1ないしは請求人を連想、想起することは必定であって、該商品が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
・・・
・・・独特の書体による欧文字4字と跳躍するピューマのシルエット図形を該文字部分の右肩上方に配したものであって、その構成自体独創的なものというべきであり、スポーツシューズ、被服等に世界的に長年使用されているものであって、我が国においても請求人の業務に係る商品を表示する商標として周知著名になっているものである。

≪まとめ≫

結局、プーマは商標登録しているものの、商標が似ているからKUMAは無効、という結論ではないんです。あくまでも詳細は別として、全体的には似ているから、モラルに反するし、買う人が間違えちゃうかもしれないからダメ、という結論です。

逆に言うと、文字のロゴは著作権で抑えられるのは厳しいから、パロディ版を取り締まるのはけっこう難しいのかもしれないし、オリジナリティがあれば商標登録もできるということになります。パロディも文化の一つだし、元ネタは有効に活用しつつ、だれもが知っているロゴをパロディ化するときは気をつけたほうがいいでしょう。

ちなみにプーマとしてはブランドを守るためにKUMAの商標を無効にしたと考えられます。商標を無効にしてもKUMAの商標を使うなというわけではないので商売にはさしあたり問題ないでしょうが、KUMAのブランド化は阻止されたでしょう。

<参考>

平成24年(行ケ)第10454号 審決取消請求事件

無効2011-890089

2014年3月5日

著者 ゆうすけ

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