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アジアのクリエイティブビジネスが熱い!クリス・リー氏×太刀川英輔氏のトークイベントレポート(2014/1/24)

公開日: : ビジネスモデル ,

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商品にとってデザインは不可欠なファクターです。今の時代、ハイエンド(高機能)な商品よりローエンド(最低限の機能)でかっこういいデザインのほうが売れるわけです。なぜならユーザーが求めているものを適正なコストで提供できればいいからです。しかしそこにオシャレ感がないと話題にならないというのも事実でしょう。

そんなデザインシーンで今世界一熱いのがアジアです。欧米からぞくぞくとデザイナーがアジアに進出してきています。さらにそのデザイナーたちがつながりを持ちはじめイノベーションを起こそうとしています。そういったアジアで活躍するデザイナーたちを特集した本「アジアンクリエイティブス」が新刊されました。

そこでアジアで生まれるいろいろなクリエイティブ(点と点)をつなぎ、アジアの中で新たなカルチャーが生まれるプロジェクトを発信していきたいという想いで開催されたトークイベント@TSUTAYA代官山に行ってきました。スピーカーは、シンガポールを代表するデザイナー・Chris Lee クリス・リー 氏/ Asylum、日本の若手デザイナー・太刀川英輔 氏/ NOSIGNER、聞き手は、矢部幹治 氏/ubies(ウビエス)です。

※以下、トーク内容です。一部抜けがありますがご了承ください。

自己紹介とフリートーク

クリス・リー氏 Asylum

・1999年にAsylumを立ち上げ。意味は「精神病院」。ネーミングの由来はクライアントが秀でた人になってほしいという想いから。2009年にシンガポールでビジネス開始。当時は2名のみ。コンピュータは4台。音楽とデザインと酒を完備^^。 

・なぜ起業したかというと、中小企業や個人事業主のようなスモールビジネスに携わりたかったから。シンガポールではアーティスティックなクライアントはいるが資金がない。でもそういうクライアントを支援している。収益源は大手企業とのこと。

・古い家具をリノベーションしている。例えば古い椅子と体重計を組み合わせたダイエットチェアを考案。 

・パッケージ、ショップ、カップ、Tシャツ、ウェブサイトなどもデザイン。ウェブサイトの作品としては、読んでるうちに文字が解けてくるデザインを考案して話題になった。

・クライアントの比率は、60%が海外、40%がシンガポール。60%のうちほとんどはアジアだけど、一部欧米もある。業務割合の40%はインテリアスペース。

・インテリアデザインはストーリーを表現するもの。たとえば、ワインレストランのインテリアでは、ワインセラーをデザインし、レストランの通りから見えるようにしてある。また日本の懐石料理「よしゆき」のウィスキーバーのデザインとして、寺院の瓦を活用。

・上海には工事中の建物が沢山ある。だからオフィスを工事中の建物をモチーフにしてデザイン。つまり未完成のオフィスを考案。配管などもペーパーで一部追加。ペイントも半分しかしない。 

・ジョニーウォーカーのコンセプトショップ@ソウル3件目をプロデュース。ウィスキーをイメージしたオブジェあり。1Fはウィスキーショップ、2Fは博物館。カスタマイズしたボトルをプレゼントできるサービスもあり。4Fがバー。夜の建物の外観はジョニーウォーカーのパッケージをイメージした。

・シンガポールは若い国なので、デザインを記録に残す活動をしている。そして自分たちが蓄積した知識や経験を次世代につなげたい。実際、1年に1回、600人が参加するカンファレンスを開催。またミニ会合も開いて情報交換を実施。100の有名なアイコンが見られるバーをオープン。デザインバーにより、80%は誰がつくったかわかるようにした。それまでは誰がつくったかわからない垂れ流し状態だった。 

太刀川英輔氏 NOSIGNER

・領域を設けないデザイン会社を設立。社会に貢献するデザインしか不必要と思ってがんばっている。日本には研究者が沢山いるけど、デザインがないからどうやって使っていいかわからない。だから例えば産総研の特許にデザインを施して使うイメージをユーザーに発信した。

・Local is the Ege. 地方が熱いけど状況は危機的にやばい。職人があと10年でやめると、その文化が終わってしまう。どうするかといえば、後継者をつくらないといけない。後継者をつくるには、マーケットをつくらないといけない。だから伝統工芸にデザインを施し、新たな買い手を発掘している。 

・デザインの面白さは、スモールプロジェクトに携われること。栃木のおじさんが考えたパッケージが世界的に有名になった事例もある。だからローカルとグローバルが結びつく可能性が絶対あるはず。日本の文化があるのに活かせていないのが残念すぎる。デザインソサエティに携わりたい。 

・クリエイションは本能なはず。3Dプリンターなどプロのデザインツールを使えるようになった。それを活用すべき。

・ファイアフォックスはオープンソースをつくっているため、オープンソースのデザインをつくろうという案がでた。たとえば2000円のOAフロアとか。そういったいいアイデアはシェアすべき。だからワークショップも開催している。 

・デザイナーでよかったことは、世の中のほとんどのものがまだまだ手を加える余地があるから。モノをつくれる力はみんなもっているし、最大限応援したい。 

ubies(ウビエス)

・クリエイターをサポートする裏方の立場。いろんな人と知り合っていろんなことをやって価値感を共有し合えたら面白いのでは?というところから、アジアのクリエイターを紹介するサイトを構築。さらに伝わる方法を考え、「アジアンクリエイティブス」を新刊した。 

・新刊にあたりアジア各国を飛び回りクリエイターに飛び込みインタビューを決行。フィリピンはまだまだデザインが未発達。30~50しかデザイン会社がない。デザインソサエティをつくろか検討中だという。またインドネシアで最初にデザイン会社をつくったクリエイターにもインタビューも決行。 

・ubiesのミッションは、プロジェクトをパズルとしたら、足りないピースを提案すること。たとえば日本とタイのアーティストをお互いの国で紹介し合うプロジェクトを実施。そんなお互いの価値を高め合う活動をしている。またアジアのクリエイター(タレント)をウェブで紹介して活動エリア拡大中。  

フリートーク

太刀川氏:各国でクリエイティブが政策になっている。シンガポール、韓国など三カ国がアジアのデザインのハブになる争いをしている。韓国は2億円を投資し、デザインミュージアムをオープンした。それくらい国レベルで取り組んでいるテーマだからとても大切だし各国の動きに興味ある。 

クリス氏:シンガポールでは、会社がブランディングを変えたいといったら国から援助金がでる。だからクリエイターもフィーを得られる。今、UK、オランダなどのデザイナーがアジアに進出し、一緒に働いている。欧米諸国のデザイナーがその国でオフィスをオープン。だから競合も増えてきた。 

太刀川氏:クリス氏はシンガポールを代表するデザイナー。だけど43才とすごく若い。日本は人材の層が厚い。層が厚いとクオリティを担保できるけど、動きにくいデメリットもある。ムーブメントを起こすことについてクリス氏はどう考えてるか? 

クリス氏:シンガポール自体が48歳。つまり国として若い。だから何もない状態だったからむしろラッキーだった。シンガポールはすごく小さい国。だからシンガポールの外で仕事を成すことが大切。シンガポールのデザイナーはUKや日本などのデザインに価値を感じているため、ミックスされている。 

矢部氏:シンガポールのアジアのクリエイティブハブとしての特徴は?

クリス氏:クライアント自体がシンガポールに移っている。つまり外の力が影響してクリエイティブハブとなりつつある。たとえばジョニーウォーカーなど大手企業の本社がシンガポールに移ってきているのが要因。  

質疑応答

【質問】国を越えてつながるためには?ビジネスチャンスはどこにある?

矢部氏:どのように海外の仕事を得た?プレゼンしたか?中国とのビジネスの経験談を教えてほしい。

クリス氏:クライアント探しはとても大変。クライアントが自分を探しに来てくれることをしている。そのため手段の1つは、インターナショナルのメディアに取り上げられること。だからクライアントが探してくれる。自分のオフィスでは自分がプレスリリースを発信する立場である。

クリス氏:基本的にコンペは参加しない。ジョニーウォーカーの場合、上海でのコンセプトショップがウケたので、シンガポールでオープンすることになった。そこで3社とのコンペに参加した。また中国からはカラオケバーのデザインを依頼される。仕事にならないかもしれない引き合いにも積極参加している。

太刀川氏:建築専攻だったのでデザインは独学した。そして自分の作品をたくさんオーディションに投稿していた。そのうち当たってきたし、いろんなところに顔出してたら友達もできた。そうすると誰かに一緒に何かできそうだなって感じてもらうことができる。まずは友達になるレベルからスタート。 

太刀川氏:英語は独学。アニメで趣味的に勉強した。キープインタッチが重要。

クリス氏:太刀川氏の作品は、領域をまたいだ作品が多いと感じている。シンガポールでは領域(グラフィック、インテリアなど)を決めるパターンが多い。でもデザインの領域を決める必要はないと思う。

太刀川氏:グラフィックデザインで処方すべきと知ってるクライアントならグラフィックデザイナーに頼む。でも大半はその処方がわかっていない。だから領域を設けていない。クリスは相談があったらデザインの前の現状の課題から取り組むから仕事が来るんだと思う。どんな人かわかってもらうことが大切。

【質問】専門家のつながりは?自分でできないことはどうする?

太刀川氏:突き抜けたスキルは必要。クエスチョンをシェアすることを心掛けている。あと立場がフラットな関係が大切。上司、部下はない。スキルで尊敬されることが必要。

クリス氏:グラフィックやインテリアなどアイデアをミックスすると面白い。

【質問】デザインソサエティにくるジャンル(メンバー)は?

クリス氏:デザインソサエティはデザイナーである必要はない。興味やリスペクトなどがあれば誰でも入れる。

矢部氏:クリス氏は、今後のデザインソサエティのメンバーになにを期待している?

クリス氏:古い人たちはやめ、新しい人たちが再生するのが大切。前回のカンファレンスではほとんどが年下。そんなニューエイジとコネクトするのは難しいけど^^;

【質問】シンガポール・日本で仕掛けるなら何をしたい?

太刀川氏:シンガポールがアジアのハブになるから、日本とシンガポールのクリエイターがコラボできるはず。またシンガポールのデザイナーにとって日本のカルチャーは難しい(言語の壁など)。そんなとき日本側がヘルプできる。そんな相互関係がオモシロいと思う。

クリス氏:日本のブランドがシンガポールにブランチングするときにシンガポールのデザイナーが支援できる。TSUTAYAのシンガポール版をつくろ!※すでに矢部氏が企画書作成する予定とのこと

リス氏:シンガポールでは日本のことをもっと知りたがっている。ラーメンや寿司やウィスキーショップなど日本にあるものを持っていけばなんでも売れる。

【質問】(なんでもいいので)ドリームプロジェクトってありますか?

矢部氏:太刀川氏のオリーブやオープンイノベーションサイトのようなことを世界中でやりたい。

太刀川氏:矢部氏に賛同(笑)。世界中で災害が増えているから。たとえばこんな感じ 

クリス氏:学校をつくりたい。世界のクリエイターやデザイナーが短期滞在して価値を学んだり友達をつくる空間にしたい。

クリス氏:シンガポールではデザインイノベーションについて70%、ITイノベーションについて50%、国が補助金を出している。なぜなら国力を付けたいから。15年前はそんなことなかったけど、今はすごく国としてタフになった。海外で勉強してきた人がシンガポールに戻って起業している。

【質問】海外に発信すべき日本の魅力ってなんですか?

太刀川氏:クールジャパン戦略の間違いは、神社やアニメなど雑多にして発信していること。神社とアニメはわけてブランディングしたほうがいい。つまりフォーカスを絞る。魅力があるものは沢山ある。

クリス氏:日本は手でつくられた工芸品がすばらしい。クラフトに価値があるけど、デザインはモダンにして今のユーザーに受け入れられるようにすべき。

【質問】何を強みにしていますか?

太刀川氏:ジャンルを限定していない。クライアントはユーザーがハッピーになることを考えおり、その立場で語れるのが強みかも。デザイン依頼を受けたら〇〇円、なども決めていない。成功報酬、月額、株式などその人によって変えているのが強み。全部が利益になっているわけではない。顧客と寄り添うこと。

クリス氏:ユーザーはその商品がどこから来たのかを知りたい。だから変にグローバルを意識しないほうがいい。アップルの場合、カリフォルニア製のプロダクトを中国で受け入れられるかチェックしたけど、自国のデザインを提供した。またその商品がその国でどういう位置付け(贈り物?消耗費?)かが大切。

≪まとめ≫

かっこよく見える仕事ほど裏では泥臭いことをいやってほどやってます。クリエイターやデザイナーという職業もそれは同じってことを知りました。しかし地道に、何でも、楽しくやることが大切で、それが王道だともあらためて感じました。そしてデザインのかっこよさってそんなクリエイターやデザイナーの人の想いであり、泥臭さや苦労話もサラッと笑い話にかえるスタイルがかっこいいクリエイターやデザイナーなのかなって想います。

2014年1月26日

著者 ゆうすけ

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  • 弁理士/監査役/ブロガー。中堅企業、中小・ベンチャー企業、スタートアップに適した知的財産活動を提案。 「地域発 ヒット商品のデザイン」でネーミングと商標登録のコラムを掲載。
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