半導体業界を応援!セミコンジャパン2013視察レポートと動向のまとめ
「半導体」って言葉をよく聞くと思いますが、わかりやすい例だと、スマホの中に入っているチップです。英語でいうと、「semiconductor(セミコンダクター)」で、“semi(半分)”と “conductor(導体)”という意味です。略して「セミコン」。
なにがすごいかって、金属など電気を通す「導体」と、ガラスなど電気を通さない「絶縁体」の中間(半導体)ってところです(これ以上説明しても混乱するので省略しますね)。ようは、ぼくらの生活を豊かにしてくれた画期的な技術なわけです。
そもそも米国の「シリコンバレー」は、半導体メーカーがたくさん集まっていたことが由来しています。半導体の原料「シリコン」とカリフォルニアの地形「バレー(渓谷)」を組み合わせたものです。今ではIT企業のメッカとなっています。
そこで12月4日から6日まで幕張メッセで行われたセミコンジャパン2013の視察レポートをまとめました。
前年より縮小規模だが景気は上向き傾向
幕張メッセには、イベント会場(国際展示場)が1-8ホールと9-11ホールあります。以前は全ホール使っていたという話も聞きましたが、今年は前年よりも縮小して行われました。イベントスペースの規模そのものが業界の景気を物語っているとも言えるようです(画像=上:セミコンジャパン2013出展案内、下:セミコンジャパン2012レビュー(Tech On))
しかしWSTS(WORLD SEMICONDUCTOR TRADE STATISTICS:世界半導体市場統計)が12月3日に発表した2013年秋季半導体市場予測では、景気は上向きつつあります。
半導体メーカーでつくるWSTS(世界半導体市場統計)は3日、2013年の世界の半導体市場規模が前年比4・4%増の3043億ドル(約31兆円)で、初めて3000億ドルを超え、過去最高になる見通しだと発表した。スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末向けなどが牽引した。(引用:2013/12/3産経ニュース「今年の世界半導体市場 過去最高に スマホなど牽引」)
オフィスで半導体が作れる時代はすぐそこ
そんな時代背景の中でも日本流のきめ細かい“盆栽的な”モノづくりが進んでいます。今回のイベント会場で一番にぎやかだったのは、産業技術総合研究所(産総研)が研究開発している「ミニマルファブ(Minimal Fab)」のブースでした。
「ミニマルファブ(Minimal Fab)」は、半導体の少量生産のニーズに答えるために、各工程を小さな装置にしてしまった画期的なシステムです。どれくらい画期的かというと、今までの半導体製造工場(メガファブ)では約200m規模のスペースと5000億円の投資が必要でしたが、「ミニマルファブ(Minimal Fab)」では約10m規模のスペースと約5億円の投資でいいのです。
また「ミニマルファブ(Minimal Fab)」は、0.5インチのシリコンウェハを製造でき、さらに各装置内が密閉されているためクリーンルームが不要です。とにかく省スペース化を実現しています。製造過程のウェハは「ミニマルシャトル」というクリーンなケースに入れて持ち運べ、かつ仕掛状態でもクリーンな状態を維持できます。
進化するウェアラブルデバイス
またイベント内で開催されたセミナーでとても興味深い発表がありました。それは装着感がなく、ヒトが違和感を持つことの少ない極薄のセンサーで実現する医療・福祉システムの研究発表です。
最近では曲げたり体に巻きつけたりできるフレキシブルデバイス(例えば、ペーパータブ)が登場しました。発売日がいつか話題になっているアップルの「iWatch」なんかもそうです。このようなデバイスが実現するのも、半導体装置自体がやわらかいからです。
しかしそれらを上回る研究が東京大学で既に行われています。薄さを追求することにより、ヒトが装着したことに気づかないくらいに負担をなくす有機トランジスタです。従来から有機トランジスタの研究開発は行われていますが、これは厚さ1.2マイクロメートルで極薄・超軽量です(画像=東京大学関谷毅氏「ウルトラ・フレキシブルTFTアレイ・シート」)
≪まとめ≫
半導体業界といっても、半導体メーカー、半導体製造装置メーカー、半導体検査会社などいろいろな企業で成り立っています。しかしその業界の景気を大きく左右するのは、ぼくらエンドユーザーが日々使うテレビやスマホなどデバイスの進化です。デバイスの進化が半導体業界を牽引すると言っていいのではないでしょうか。したがって半導体業界では、以前よりもマーケットの視点を意識した事業戦略がモノを言う時代になると想定しています。
2013年12月9日
著者 ゆうすけ
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