3Dプリンターを使うときに注意すべき著作権のポイントをザックリと解説!
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最終更新日:2014/01/03
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3Dプリンターによって個人がメーカーになれる時代がきた!なんてことを最近よく耳にします。なにがすごいかっていうと、簡単にプロトタイプ(試作品)がつくれることです。
新作のスマホケースやフィギアの試作品をつくるために、今までは何十万円もする金型を作らなければなりませんでした。つまりチューっと原料を流し込む金型がなければ、試作品をつくれなかったのです。しかもデザインを変更したら、その金型はパーになります。
しかし3Dプリンターはインクジェットプリンタのインクのように、ノズルの先っちょから原料をチュチュっと出しながら立体的な形状にしていきます。デザインを変更したら、設計データを修正するだけでOK。
そんな便利な3Dプリンターだからこそ、注意したいのが著作権です。ソフトウェアのオープン化につぐ、ハードウェアのオープン化が進んでいるからです。つまりみんなでアイデアを共有してモノづくりをしよう!という思想が広まりつつあります。
そこで、3Dプリンターを使うときに注意すべき著作権のポイントをザックリと解説します(細かい判断事例は省略しますのでご了承ください)。
・3DCGデータ(設計データ)
現状、3Dプリンター専用のソフトで3DCGデータを作成します。そしてオープン化により、3DCGデータが流出する可能性があります。
たとえばThingiverseでは、すでに多くの3DCGデータを無料配布しており、欲しいデータがあれば以下のような画面でダウンロードできます。
このとき3DCGデータの作成者は、ソースコードに著作者情報(氏名や作成年月日)を入れるのが無難です。プログラムは著作権で保護できるからです。さらにダウンロードページにも、著作者情報を表示すべきです(赤矢印部分)。
また3DCGデータをダウンロードした人は、横流しに注意しましょう。ダウンロードページに著作権に関する表示があったら、ちゃんと確認すべきです(青矢印)。
さらに横流しであつめられた歌手の音楽データ(海賊版)をダウンロードする行為が著作権の侵害になるように、横流しによる3DCGデータをダウンロードする行為も著作権の侵害になる可能性があります。
・3Dプリントした作品
作品で注意すべきなのは、主にキャラクターや有名人のフィギアです。なぜならキャラクターには著作権、有名人には肖像権やプライバシーに関する権利があるからです。
したがって作成したキャラクターや有名人のフィギアを売ったら、著作権侵害のリスクがあります。一方、自分の部屋に飾ったりするのは問題ないでしょう。
ちなみに3Dプリンターでつくったキャラクターのフィギアは、キャラクターの複製物、またはキャラクターを変形・翻案した二次的な著作物になると考えられます。
また海外では3Dプリンターの作品を著作権 で保護する動きが活発です。デンマークの玩具会社レゴの広報は以下のようにコメントしています。
レゴ広報は、これらの個人利用は問題ないが、販売するとなれば法を犯す可能性があると注意し、「違法行為が認められた場合はブランドを守り消費者の利益を守るため断固として追及する」構えだ。 (引用:2013年8月21日「3Dプリンター普及に著作権侵害の壁」)
ちなみに自動車やアクセサリーなどは、一般的に「工業デザイン」といわれているため、著作権の侵害にはならないと思います(むしろこの場合はデザインの権利(意匠権)や立体的な商標の権利に注意すべきです)。
・作品の写真
せっかくつくったんだから、写真にとってみんなに見せたい!ってか、画像として販売したい!という気持ちはわかります。
ですが、自分の部屋に飾るためにつくったキャラクターや人物のフィギアでも、写真にとって売る行為は著作権(肖像権)の侵害になると考えられます。
ちなみに自分のブログに写真をアップしても、ディズニーのように著作権に厳しいところからは文句を言われる可能性があるため注意しましょう。
≪ピッタリナまとめ≫
著作権にひっかかるかどうかはグレーな世界です。3Dプリンターのような新しい概念については、判例を置き換えて対策するしかありません。ネットによるソーシャルな動きや海外の事情を参考に、今後も情報を追っていきたいと思います。
<参考資料>
・Sankeibiz 「3Dプリンター普及に著作権侵害の壁」
・[時評][知財]ローランドDG「iModela」:3Dプリンタ著作権法上の問題
・文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」
<判例>
京都地裁平成9年7月17日「ファイブスター物語事件」
東京地裁昭和61年9月19日「キン肉マン事件」
大阪高裁平成17年7月28日「チョコエッグ事件」
2013年8月21日
著書 ゆうすけ
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