日本の商品名や地名が海外で商標登録を先取りされてめちゃ痛い事例のまとめ
最近よくニュースになってる話題です。勝手に使われているだけじゃなく、勝手に商標登録を先取りされる、というなんとも信じがたいことが実際に起こっています。
なぜかといえば、それだけジャパンブランドが海外でも売れるからではないでしょうか。また海外に進出する日本企業が増えているため、商標登録を悪用する業者も増えているかもしれません。
そこで、日本の商品名や地名なのに海外で商標登録を先取りされた事例をまとめました。
・今治タオル
「今治タオル」は、日本有数のタオル生産地、愛媛県今治市のブランドです。海外でも通用する日本の産品ですが、商標登録の問題で中国国内でもめています。
・・・「今治タオル」に類似したロゴマークと「今治」の2文字が中国で商標登録申請された問題で、今治市などの異議申し立てを中国商標局が退けたことが10日、分かった。今治市と四国タオル工業組合(同市)は名称について再審査を請求し、今月3日、受理された。(2013/7/10)
市と組合によると、タオルなどで「今治」という名称を使う商標登録申請について申し立てをする方針。理由は「行政府の名前であり、地域ブランドである『今治タオル』の原産地として中国で広く知られた外国地名」としている。(2011/2/17)
「地域名+商品」のネーミングを商標登録できれば、そのエリアの名産としてアピールできるため効果的です。
・東京スカイツリー
国内では商標登録してしっかり保護していますが、海外へのケアが行き届いていなかったようです。
商標権をめぐっては、中国で苦い経験もある。数年前から中国メディアがスカイツリーを中国語で「東京天空樹」と表記しており、東武側がこの名称を商標登録しようと中国当局に問い合わせたところ、すでに登録されていた。そこで同社は漢字表記を「東京晴空塔」と決め、昨年12月に日本で商標登録したほか、中国でも申請中だ。
「(商標ビジネスは)ブランド価値を高める手段として有効」(城山氏)なのは間違いなく、東武は海外を含めたビジネスモデルの確立を急ぐ。
漢字で表現する場合、どの字を使うかとても重要です。字が違えば、読み方が一緒でもちがう商標になる場合があるからです。
また漢字によって印象もかわります。そのため商品のコンセプトにあった字を選択するのがベターです。
・クレヨンしんちゃん
海外で日本のアニメは人気です。クレヨンしんちゃんもそのうちの一つ。解決するのにだいぶ時間がかかりました。
その日、双葉社がクレヨンしんちゃんのデザインされたグッズを上海市内のデパートで販売していたところ、別のアパレル会社が同じデパートでクレヨンしんちゃんの靴を販売していることが発覚。慌ててその会社に問いただすと、デザインなどについて中国内で商標権を取得していると主張し、双葉社側の商品こそ「偽物」だと訴えてきた。
(中略)
当時、模倣品や海賊版で中国での知名度は高かったものの、クレヨンしんちゃんの本格的な市場はまだ立ち上がっていなかった。このため、双葉社は中国で商標権を登録しておらず、その“すき間”を狙われたのだ。相手会社の商標権の登録取り消しなどを求める訴訟を約8年間繰り返し、今年3月までにようやく商標権と著作権が認められた。(2012/5/26)
中国において争われていた『クレヨンしんちゃん』著作権侵害民事訴訟及び行政訴訟問題について、弊社の主張がようやく支持されましたので、それぞれの勝訴判決及び経過をご報告申し上げます。(2012/4/17)
日本で人気のキャラクターやブランドの商標登録は、海外で人気が出る前にしておくのが無難です。
・森伊蔵
和食が世界的に注目されているため、酒や焼酎のブランド名は海外でも保護する必要がありそうです。
人気が高い鹿児島県の芋焼酎「森伊蔵」「伊佐美」「村尾」の3銘柄が、中国での商標登録を無断で申請されていた問題で、中国商標局が3銘柄をつくる酒造会社からの異議申し立てを認めなかったことが18日、分かった。(2012/4/18)
鹿児島県垂水市。桜島から約10キロメートルの海沿いにある酒造会社「森伊蔵酒造」。国内のみで販売される人気芋焼酎「森伊蔵」の名称が平成19年11月、福岡県の企業によって中国の商標局に商標権を申請された。
海外の企業だけでなく、国内の企業が海外で商標登録を先取りすることもあります。
・高島屋
デパートやコンビニなど小売業の店舗名は、海外展開する上で欠かさせません。
大手百貨店、高島屋が、中国の業者に地元で勝手に「高島屋」の商標を登録されたとして、中国当局に異議を申し立てたことが23日、分かった。日本の経済産業省も事態を重視、中国側に対処を求めた。同社幹部などが共同通信に明らかにした。
(中略)
高島屋幹部らによると、商標は中国の3業者が登録。高島屋は審査のやり直しを当局に求め、うち1件は解決した。登録業者に事業の実態はほとんどないとみられる。(2012/3/23)
このため店舗名が使えないということは、その国で店舗展開ができなくなるため、事業戦略にとって致命的です。
・さぬきうどん
海外進出する場合、その国で同じネーミングが商標登録されていないかどうか事前にチェックしたほうが安心です。
ある中国人が06年に商標登録を出願した「讃岐うどん(讃岐烏冬)」について登録を拒否するという内容の通知文だった。通知文には「讃岐は日本の昔の地名、烏冬は小麦粉を原料とする日本の麺であり、したがって讃岐地域(今の香川県)がこれを地域特産品だと指摘する内容は妥当だ。飲食店などの商号として登録する場合、誤解を誘発するおそれがある」と書かれていた。
(中略)
06年ごろ、台湾で「讃岐うどん」看板を掲げて商売をしていた日本人男性が、台湾企業から商号使用中止に関する内容証明を受けたのが発端だ。この台湾企業は1999年、「讃岐」「さぬき」「サヌキ」「SANUKI」などの各種表記で自国で商標登録を終えた状態だった。日本伝統商品を台湾人が先に商標登録をし、日本人が現地で使用できなくなったのだ。 (2011/7/12)
また飲食物は輸出もできます。そのため商標登録を先取りされると、その国に輸出できなくなります。
・有田焼
商標登録にひっかからないようにする手段はありますが、なるべく使いたくないものです。
「有田焼」と表記できない? 佐賀県が9月30日から上海万博関連イベントとして上海市の百貨店で開く「佐賀県産品展」でこんな問題が浮上、出展企業など関係者を悩ませている。中国で「有田焼」が商標登録されているためで、今回は「日本有田産」「ARITA JAPAN」と表記する苦肉の策でしのぐ考え。今後の中国市場開拓の支障になるのは間違いなく、根本的な解決策が必要になっている。(2010/8/30)
ちなみに、海外進出に先駆けた展示会などでブローカーに目をつけられ、商標登録を先取りさせるケースもあるようです。
・青森
一度は先取りされましたが、他国で認知されている地名を商標登録できないルールがあることを理由に文句をいったところ、認められました。
地名に関する異議申立てが認められたケース ~「青森」の商標の異議申立て~
(前略)
2007 年 12 月 29 日、商標局は、「青森」が公衆に知られた地名であるとし、「青森」を商標として登録することは、公衆に広く知られた外国の地理的名称を商標としてはならないという商標法第 10 条に反するという裁定を下した。これにより、すでに登録されていた、肉や乳製品、水産物、果実、野菜、林業製品について、青森側の主張が認められた。(一部の品目については現在係争中。)
県名ではなく、市名や地域名だと認められない可能性があるので注意です。
・無印良品
ロゴも要注意です。
この問題は、香港企業である盛能投資有限公司(Jet Best Investment Limited 以下J.B.I.)が中国で商標25類(被服、履物)における「無印良品」および「MUJI」の商標を不正に先行登録していたものです。 当社は2000年5月、中国国家工商行政管理総局商標評審委員会に対してJ.B.I.の商標登録の無効取消を求めておりましたが、今般、同委員会はその取消を命じる審決を下しました。(2005/12/12)
良品計画は平成12年に「無印良品」と「MUJI」の不正登録の取り消し裁定請求を中国に申し立てたが、商標取り消しまで7年。(2012/7/2)
数年間の争いを続けるコストと、先に登録したり事前に調査したりするコスト、どちらがお得でしょうか。
≪まとめ≫
グローバル化がすすめば、このような問題はますます起ると予想されます。
海外に進出する場合、まずその国で先に商標登録されていないかを確認し、されていなければ早めに商標登録することをオススメします。
2013年7月17日
著書 ゆうすけ
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