日本未上陸の商品を開発する前に外国企業の特許に注意したほうがいい理由
久しぶりに連絡をくれた中小企業の社長さんからこんな相談がありました。
「まだ日本ではあまり知られていないアイデアだけど、他の会社が特許を出しているので、侵害していないか調べて欲しい」
なかなかザックリしたご相談でしたが、よくあることです(笑)。
photo credit: HMS Ark Royal – Final sea trials – 13th April 1985 via photopin (license)
取引先にとって特許侵害はNG
その社長さんの会社(A社)のあるモノをつくって取引先のお客様(B社)に納品するというビジネスをしています。今回の相談の切っ掛けは、B社からの要求だそうです。
なぜなら、B社としては、他社の特許を侵害しているモノを使うわけにはいかないからです。大きい会社ほどコンプライアンスが厳しいため、他社の特許を侵害しないよう注意しています。
ところがよく聞くと、侵害していないかどうか調べる対象は、A社のメイン商品ではなく、メイン商品を売るための“道具”なんです。どんな道具かは当然言えませんが、例えるなら、メイン商品が家電だとすると、その“道具”は家電の箱のような位置付けです。
時代によってモノの価値がかわる
どうやら、今まではそんな“道具”は必要なかったらしいんですが、B社の方針がかわり、ある生産工程がカットされたため、A社がその“道具”の使用に迫られているというわけです。
そこで、A社はその“道具”の開発をスタートしました。生産はできないので業者に依頼するにしても、設計までは自社でやることに。こんな風に時代が変わるとはね~と、A社の社長さんも言っていました。
実は、その“道具”に似た製品は、業界内でも昔から使われていました。ところが、今回の“道具”は、その似た製品を改良し、まるで別物としての価値が生まれたのです。コロンブスの卵のようなもので、見れば大したものではありません。
海外の企業が日本で特許取得のリスク
冒頭にもどりますが、まだ日本ではめずらしい“道具”で、ほとんど使われていないらしいです。でも、A社の営業部の課長さんが調べたところ、それに関連する特許が見つかったというのです。
たしかに、特許公報の図面を見る限り、ちょっと気をつけたほうがよさそうな感じです。そこで、誰が特許を出しているか見たところ、海外の企業でした。しかも、まだ特許を出して間もないのです。
でも、業界内では無名な企業らしいんです。ひょっとしたら、日本の大手企業と提携するために、日本でも特許を取っておこうという狙いだったのかもしれません。現に、国際特許出願にて多数の国をしていしていました。
≪まとめ≫
A社の場合、商品の製造前に他社の特許侵害のリスクを察して調査することになりました。特許調査もタイミングが重要です。大したアイデアじゃないから特許なんて取られてないだろ~って油断してると、後々まずいことになるかもしれません。
2016年1月27日
著者 ゆうすけ
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