味の素ギョーザから学ぶヒット商品にする特許活動と新商品開発との関係とは?
消費者の立場になっていえば、たとえヒット商品でも、変化がなければいずれはあきますよね。だから商品は進化し続けなければなりません。
そして、進化した商品は、消費者のみならずライバル会社にも注目されます。ライバル会社としては、開発コストをおさえるため、できれば売れてる商品をパクりたいところです。
特許を活かすには消費者ニーズの把握が不可欠
ここからは推察になるのですが、おそらく同社では調査をする前から、膨大な特許データを取得していたものの、具体的な商品開発には結びつけられていなかった。しかし、目分量でギョーザに水を入れる主婦の行動を発見し、技術と消費者ニーズが結びついた、画期的な商品につながったのではないでしょうか。
蓄積していた特許技術を、行動観察によって有用な情報まで絞り込むことができた事例ではないでしょうか。
<引用:2015/8/7 「味の素ギョーザをヒットさせた「主婦の発想」」 by 東洋経済オンライン>
特許を出してから特許になるまで、平均4~5年です(この期間を短くするテクニックはありますが、ここでは省略)。そしてこの間を利用して、一般的には新商品開発が行われます。
特許はアイデア(企画)段階でOKです。実物(試作品含む)がなくてもいいんです。そして、特許を出したからには、それを活かせるように消費者ニーズをつかんで商品開発すべきです。
では、特許と新商品開発は、どういう順序で何に注意すればいいのでしょうか?そこで、味の素ギョーザを例に考えてみました。
特許+非公開ノウハウでライバル会社と寄せ付けず
まず、味の素が特許を出したのが2006年。その後、特許になったのが2011年です。この5年間で、冷凍ギョーザの新商品を開発していたと推測できます。
味の素ギョーザの歴史は長いので、新たな商品を生み出すには時間がかかるのかもしれません。しかし、食品業界も商品開発スピードは速く、他社に先を越されるリスクがあります。
そのため、商品開発に先だって特許を出しておくのがベターです。このタイミングによっては、将来の事業展開に大きく影響します。サントリーvsアサヒのノンアルビール特許紛争はその典型例といえます。
そして、商品開発の切り口として、課題の掘り下げが行われたようです。おそらく、冷凍ギョーザを調理する主婦の行動パターンに合わせるには、既存品をどう改良すればいいか検討されたのではないでしょうか。
改良の際には、素材の配分量、配合のタイミング、冷凍時間など試行錯誤されているはずです。これらはすべて新商品開発の過程で発見した非公開ノウハウになります。
非公開ノウハウは特許で公開していいない部分であり、ライバル会社が喉から手が出るほど欲しい情報です。つまり、商品によっては特許を出した(アイデアを公開した)からといって、全てパクられるわけではないわけです。
特許が認められた後に新商品開発をリリースするのは、タイミングとして理想的です。特許庁の審査を通過したアイデアであり、基本的には安全と言えるからです(その後、無効にされるリスクはあります)
特許と非公開ノウハウで守られている新商品なら、ライバル会社にパクられるリスクは相当低くなります。そもそも非公開ノウハウを解読するには時間がかかる上、解読しても特許の壁が立ちふさがっているからです。
つまり、商品自体の良さのみならず、特許+非公開ノウハウによってライバル会社を参入させなかったために、その分の売上ものっかって、前年同期の155%を達成できたと考えられます。
≪まとめ≫
この事例から、特許を出すタイミング、特許と新商品開発の進み具合のタイミング、新商品開発のための考え方、新商品開発で発見した非公開ノウハウの価値、特許及び非公開ノウハウによる防衛策、がイメージできるのではないでしょうか。技術分野によってはもっと新商品開発のスパンが短かったり非公開ノウハウがそもそもなかったりしますので、利益を守るためには適した特許活動と新商品開発が必要になります。
2015年8月9日
著者 ゆうすけ
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