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特許を出せない原因は本当に資金と人材不足?中小企業でもデキル知的財産活動

公開日: : 最終更新日:2014/11/15 特許, 特許戦略

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群馬経済研究所が行った「知的財産に関わる意識調査」のアンケート結果が興味深いです。群馬県内の製造企業で、従業員10人以下から300人以上の企業194社が回答しています。回答そのものは想定内ですが、だったらそれでいいの?と感じざるを得ませんでした。

photo credit: screenpunk via photopin cc

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知的財産への取り組みが「既に重要かつ不可欠」とした企業が24.9%、「今後重要度が増す」という企業も35.8%で、合わせて60.7%となった。 

一方で、知的財産を担当する部署や担当者に関しては、・・・「部署も担当者もいない」が64.1%に達し、実際の組織や人材育成が意識の高さに追いついていない現状が鮮明になった。 

取り組みへの障害では、「権利の取得などにかかる資金負担が大きい」(43.2%)、「知的財産に取り組める人材がいない」(35.3%)が“2大要因”となった。 

<引用:2014/3/29 産経ニュース「県内製造業、知的財産保護道半ば 6割超、担当部署など未設置 群馬」>

特許を取るのは資金負担になるのか? 

まず資金負担になるという認識が疑問です。特許の場合、一般的には特許になるまで70~80万円くらい登録を数年間維持するために数千~数十万円かかるため、“一括払い”だと決して安い買い物ではありません。しかし特許は“分割払い”で取れます。どういうことかというと、費用の発生するタイミングが大きく分けて4つということです。 

はじめは申請時(出願した後)です。この費用は主に弁理士の作業費で、ざっくり30万円くらいです。つまりイニシャルコスト(初期投資)が30万円ということです。では残りの40~50万円はいつかかるかというと、事業の成長度合いによって検討すればいいんです。特許出願したアイデアが売れたら、すぐに出願審査請求代(20万円~)審査官対応代(10万円~)が払えるからです。一方、特許出願したアイデアが売れなくても、申請した日から3年以内に出願審査請求すれば大丈夫です。 

つまりイニシャルコストで30万円の出資が厳しいということは、そのアイデアが売れると本気で想っていない、と思えてなりません。また申請したとしても、資金不足で出願審査請求できないというのは、3年以内にそのアイデアの粗利を含めた事業計画がたっていない、と思えてなりません。さらに特許を取ったとしても、維持費が払えないというのは、市場を獲得できていないためアイデアでの売上がない、と思えてなりません。 

特許のせいで経営が傾くくらいなら、とっくに会社はつぶれているのではないでしょうか。 特許を出すほどのアイデアがないと思ってもあきらめないでほしいです。守れるアイデアが眠っているかもしれないからです。もし特許を取るのは厳しくても、意匠登録できる商品のデザインや、商標登録できるネーミングやロゴを考え、ライバルと差別化するのも価値ある知的財産活動の一つなんです。

中小企業は知的財産活動をアウトソースすべき 

ぼくの経験上、中小企業で知的財産に取り組んでいるのは、会社の社長、専務、常務など取締役や事業部長が多いです。また管理職以外だと、総務部の担当者が兼務している会社が多いです。 

そのため聞かれたら法律や特許の調べ方を教えていますが、なかなか理解できないようで、同じ質問を何度もされることがあります。これはその方々に能力がないのではなく、そもそも理解しにくい内容だろうと想定しています。 

製造業に限らずIT企業や小売業にとって知的財産活動の取り組みは、会社の「守れるアイデア」(資産)を増やす他者に文句を言わさず事業を安全に継続する差別化したアイデアの存在を外部にアピールする、など様々な効果があります。だからこそ取り組む価値があるわけです。 

そのため、単に手が空いている・空いていないという観点ではなく、ちゃんと本腰を入れて会社の将来を考えられるかどうかという観点で“知的財産活動に取り組める人材”がいないなら、定期的に意見や提案をもらえるアウトソース先を確保すべきです。 

そしてアウトソースしてもいいかどうかは、自社の事業にかかわる知的財産(主に特許、商標、意匠、著作権)を総合的かつ客観的に判断できるか?どうすれば他社と差別化した「守れるアイデア」を創造できるか?どういう内容で特許や商標を申請すべきか?またそのタイミングは?など、事業ベースで考えられる思考があるかないかで判断すべきです。

≪まとめ≫

お金がないという前に、事業計画やアイデアを熟考してみてはどうでしょうか。また人材がいないという前に、アウトソース先を探すのはどうでしょうか。今後重要度が増すのは目に見えています。なにかご協力できることがあればこちらまでご連絡ください。

2014年3月31日

著者 ゆうすけ

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